今回は、高年収で節税対策をしたいという、30代男性の事例を紹介します。不動産投資には大きく(1)増やす(2)節税(3)安定収入という3つの目的があります。このうち、高年収の人の多くが(2)を検討します。事例も節税と安定収入を目的に不動産投資を始めたケースです。不動産投資を始めたきっかけ、今までの運用にどんな不満があったのかなどの詳細に、FPの分析も加えて解説していきます。(伊藤亮太・ファイナンシャルプランナー)
目次
・【投資家の横顔】預貯金だけでは満足できず
Bさんは30代の独身男性です。年収は800万円ほど。これまで財形でコツコツと貯蓄を行ってきました。しかし、非課税の恩恵はほとんど受けていないようなものでした。そして、資産がなかなか増えない点に不満を持っていました。そこで、「どのような資産運用があるのか」「預貯金でよい商品はないものか」を知るために、私のセミナーに参加しました。
・【投資の背景】最初は預貯金を選択したが……
Bさんはセミナーを受講し、安全性の高い預貯金で運用することを選択しました。ただ、そうはいってもそれほど資産が増えるものでもありません。そこで、「節税」と「安定収入を得る」という目的から不動産を検討することにしたのです。減価償却費の計上ができる点、不動産投資の勉強のための書籍などが費用に計上できる点に興味を持ったといいます。
・【物件選び】迷った結果、新築マンション一戸に投資
Bさんは、新築のマンションのほか、アパート一棟にも興味を持っていました。アパート一棟は、コスト面や利回り面で優位性がある一方で、地域分散を図るという点ではデメリットがあります。いろいろと考慮した結果、新築マンション一戸を購入し、融資枠を残し次への投資を行うことに決めました。
Bさんが購入したのは、江東区の新築マンション一戸。価格は2700万円でした。月額家賃は9万円。表面利回りは4%です。「月次収支でマイナスにはしたくない」という考えもあったため、頭金で500万円を用意しました。投資内容は、金利が年1.6%の変動金利、借入金額2200万円、借入期間35年、年間の手取り額は9.6万円になりました。
・【FPの分析・アドバイス】節税になる部分を徹底確認する
Bさんの購入されたマンションは新築のため、ある程度の期間は空室の心配はする必要もないと考えられます。また、空室になっても利便性の高い場所のため、すぐに埋まると想定されます。
一方で、実質的な投資利回りが2%ほどのため、「投資妙味という観点からはどうなのだろうか」と思う面もあります。Bさんの場合、借入枠にはまだ余裕があります。次は中古マンションに投資をして利回りを確保していくのもよいかもしれません。
また、投資したマンションは、立地がよく、ある程度の資産価値が保てそうです。値上がり益が見込める場合には、売却も検討するべきでしょう。家賃の引き上げも今後は検討材料になるかもしれません。
Bさんは、節税ニーズから金額の高い物件を選択したと思われます。そうであれば、「何が費用計上できるのか」「節税額はいくらぐらいになりそうなのか」といった点は、税理士と密に相談して確認をするとよいでしょう。
・不動産投資を増やす戦略を考えよう
株式投資は値動きが激しいため、最近では不動産投資を検討する人も多くいます。ただ、不動産価格も変動する時は変動します。「ミドルリスク・ミドルリターン」といわれる不動産投資ですが、買い方、買う場所を間違えて失敗する人がいるのも事実です。
Bさんは「増やす」「節税する」「安定収入を得る」という側面から、今後も不動産投資を活用していきたいといいます。仮に不動産投資を増やしていくのであれば、立地と利回り両面から運用を検討する必要があります。そして、場合によっては今後も人口維持か増加が見込める都市を中心に地方の物件を組み込むことも念頭に置いて、収入を着実に増やす戦略を検討するとよいでしょう。
【30代から始める不動産投資】事例シリーズ
・【事例編 1】貯蓄をやめ運用にかじを切る
・【事例編 3】不動産で独立と不労所得を目指す
【年代別の極意】シリーズ
・30代から始める不動産投資
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