アパート経営は節税になるの……?
アパート経営をご検討中の方の中には、アパート経営が節税になるのかどうか気になっている方も少なくないのではないでしょうか。
実際、節税になるのであればアパート経営をしようと考えている方もいらっしゃるでしょう。
この記事を読むことで、
- アパート経営とは
- アパート経営で節税できる3つの税金
- アパート経営をする場合の節税例
- 不動産管理会社設立による節税
について知ることができます。
アパート経営を始めようか迷っている方は、アパート経営の節税についてこの記事を参考にしていただければ幸いです。(監修:税理士・鈴木まゆ子)
目次
1、節税効果について知る前に!そもそもアパート経営とは
そもそもアパート経営とは、アパートの所有者として各部屋を入居者に貸すことによって、毎月賃料収入を得るという不動産投資の一種です。
ワンルームマンション投資との比較したアパート経営のメリット・デメリットなど、詳しくは「アパート経営とは?アパート経営を成功させるために知っておきたい11のこと」をご参照ください。
2、アパート経営で節税できる3つの税金(1)所得税
アパート経営で節税できる3つの税金のうち、まずは所得税について説明します。
1:所得税について
所得税は、所得金額に応じて課税されます。
所得税は累進課税であり、所得金額が多ければ多いほど税率が上がるため、納める税金が多くなるのです。
不動産所得は、他の所得と「損益通算」できます。
不動産所得で赤字となった場合に、ほかに給与所得や一時所得、雑所得などの所得がある場合は損益通算を行い、不動産所得の赤字と他の所得の黒字を相殺すると、合計所得が少なくなります。
その結果、納める税金が少なくなるわけです。
給与所得者や年金所得者のように、既に源泉徴収で納めた所得税がある場合には、確定申告をすることで「所得税の還付」を受けられることがあるでしょう。
2:不動産所得の計算方法
アパート経営で得られた不動産所得は、下記の計算式によって算出できます。
不動産所得=年間の総収入金額-年間の必要経費の総額
節税で大事なのは「必要諸経費を漏れなく計上すること」です。
必要経費をきちんと計上すれば、不動産所得の金額を抑えて節税することが可能でしょう。
具体的に、以下のような費用が不動産所得計算上の必要経費になります。
- 税金(固定資産税、都市計画税など)(※)
- 損害保険料(火災保険、地震保険など)
- 修繕費(入居者が退去時のクリーニング費用など)
- 賃貸管理会社管理費
- 建物の減価償却費
- マンション管理会社管理費(管理費、修繕積立金など)
- 税理士・弁護士などへの報酬
- その他経費(交通費、ガソリン費用、交際費など)(※)
- 賃貸開始後に支払った借入金の利息(融資を受けた場合)
(※)不動産賃貸事業に直接必要と認められる部分に限ります。
経費として申請する際には、レシートもしくは領収書を提出する必要がありますので、日頃からレシートなどを取っておく習慣をつけるとよいでしょう。
アパート経営で認められている経費について、詳しくは「確定申告時に知っておくと得する不動産所得の12個の経費とは」をご参照下さい。
3、アパート経営で節税できる3つの税金(2)住民税
アパート経営で節税できる3つの税金のうち、2つめは住民税です。
住民税は所得税の所得額を元に算出されます。
所得税の基礎となる所得額を低く抑えれば住民税も節税することが可能なのです。
4、アパート経営で節税できる3つの税金(3)相続税
アパート経営で節税できる3つの税金の最後は、相続税です。
相続税の課税は、相続財産の評価額が基準になるので現金や有価証券は「時価」、つまりその時の取引金額が評価額となります。
一方で、不動産は「路線価評価額」「倍率方式による評価額」「固定資産税評価額」が評価額です。
通常、不動産の評価額は実際の取引金額よりも低くなることが多いでしょう。
- 具体的には、土地:路線価の80%程度
- 建物:建築費用の50〜50%前後
- 賃貸の場合、建物の評価額は更に30%控除
- 小規模宅地の特例により、土地の評価額が50~80%減額
上記のような不動産の評価方法や特例の適用が、不動産の評価額を低く抑える仕組みとして働いています。
不動産で相続した場合の相続税評価額の計算方法について、詳しくは「不動産は相続税対策として有効?不動産の相続税の仕組みについて」をご参照ください。
5、アパート経営をする場合の具体的な節税例
実際にどのくらい節税になるかをイメージするため、具体的な例を見ていきましょう。
下記は、年収700万円の独身のサラリーマンの方がアパート経営をした場合の例です。
年末調整をした後、翌年3月15日までに自ら不動産所得もあわせて確定申告しています。
一見、還付税額が少ないので節税効果がないように見えますが、「適切に経費を計上したことから不動産所得は赤字となり、結果として納税額が増えずに済んだ」ことで節税効果が出ています。
不動産情報 | ||
物件価格 | 100,000,000 | |
家賃(年) | 6,000,000 | |
管理費などの経費(年) | 2,500,000 | |
借入条件(※) | ||
借入金額 | 100,000,000 | |
借入金利(変動) | 3.00% | |
ローン返済額(年) | 5,059,248 (内、元本2,087,806円、金利2,971,442円) | |
ローン年数 | 30 | |
年間収入額 | ||
不動産所得の金額 | ① | -528,558 |
給与所得の金額 | ② | 7,000,800 |
※給与所得の金額=収入金額(源泉徴収される前の金額) | ||
額)-給与所得控除額 | ||
所得合計額(①+②) | ③ | 6,472,242 |
所得税計算 | ||
社会保険料控除額及び基礎控除額 | ④ | 1,430,000 |
課税対象となる所得額 | ⑤ | 5,042,000※千円未満切捨 |
所得税額 | ⑥ | 580,900※百円未満切捨て |
復興特別所得税(⑥×2.1%) | ⑦ | 12,198 |
源泉徴収額 | ⑧ | 596,500 |
還付される所得税額(⑧-(⑥+⑦)) | ⑧ | 3,402 |
※ローンはすべて賃貸用建物の取得に充てたものとします。借入金金利のうち、土地取得のために充てられた部分の金額は、不動産所得が赤字のとき、損益通算することができません。
6、もっと節税になる?「不動産管理会社設立」による節税
アパート経営に際して、不動産管理会社を設立して節税を考えている方も少なくないではないでしょうか。
不動産管理会社設立にはメリットとデメリットがあります。
ご自身の所得状況などに合わせて設立するかどうかを判断しましょう。
(1)不動産管理会社を設立するメリット
不動産管理会社を設立することには、次の5つのメリットがあります。
- 家族を役員や従業員とすることで所得の分散化を図れる
- 経費の項目が増え節税対策の選択肢が広がる
- 青色申告の損失繰越控除期間が9年間になる
- 相続税対策として有効
- 法人にすることにより適用税率が下がる可能性がある
(2)不動産管理会社を設立するデメリット
一方、不動産管理会社を設立することには、次のようなデメリットがあります。
- 税理士の報酬など維持・運営費用が発生する
- 赤字の年でも最低限年間7万円の税金(住民税均等割)がかかる
- 法人設立時に諸費用がかかる
- 社会保険に加入する義務が発生する
- 個人より税務調査が入りやすくなる
不動産管理会社設立の詳しい内容については「法人設立で節税になる?不動産管理会社設立のメリットと手順」をご参照下さい。
まとめ
いかがでしょうか。
今回はアパート経営の節税について説明しました。
毎月賃料収入を得られるという魅力的なアパート経営ですが、所得税や住民税、相続税において節税効果を期待できます。
また、不動産管理会社を設立することでも節税効果を期待できますが、不動産管理会社設立にはデメリットもありますので、よく確認しましょう。
アパート経営を始めるためのご参考になれば幸いです。
イエカレ(1棟物件不動産管理)