中国はリーマン・ショックの直後である2009年から経済のV字回復を果たし、その後不動産バブルをもたらした事は記憶に新しいのではないでしょうか。
一時期は一般人には手の届かないところまで高騰していた中国不動産バブルですが、最近はどうなっているか直近のデータと合わせて見ていきましょう。(高野悠介・中国貿易コンサルタント)
・リーマン・ショック直後から急成長した中国不動産
中国の不動産価格は高度経済成長とともに上昇を続けていますが、特に変わったのはリーマン・ショック直後の2009年以降でしょう。
2009年は中国にとっては非常に重要な節目の年で、世界経済の機関車役を期待された中国は、4兆元(66兆円)の経済対策を打ちました。
その効果はてきめんに表れ、経済のV字回復とその副産物として不動産バブルをもたらします。
一平米1万元ほどだった上海のマンション価格は2万元と、1年で2倍に高騰して行きます。さらに現在は5万~10万元(日本円で80万円〜160万円程度)となり、一般人はとても買えなくなってしまいました。
・中国不動産バブルは全国に波及
国家統計局から毎月発表される「70大中都市商品住宅販売価格変動状況」(外部リンクに飛びます)にて、不動産市況を見る基本資料があり「新築と二手(中古)」が掲載されています。
最新の2019年3月のデータがどうだったか見てみましょう。
中国で「一線級都市」と呼ばれる北京、上海、深圳、広州を拠点にします。
新築/中古(前年比/2015年比)
北 京 103.2 / 139.1 99.90 / 146.0
上 海 101.2 / 146.9 98.40 / 137.9
深 圳 100.3 / 145.2 102.9 / 152.4
広 州 111.9 / 153.4 100.9 / 148.4
このデータから北京の新築は1年間で3.2%アップ、4年間では39.1%アップしたことが分かります。
またここ1年は広州市の新築を除いて小動きとなっていて、北京や上海の中古はわずかに下落していますが、4都市とも2015年に比べると4~5割上昇しています。
次は少し下の都市を見ていきましょう。
新築/中古(前年比/2015年比)
大 連 113.7 / 129.8 108.8 / 118.0
青 島 114.3 / 135.3 108.4 / 132.7
重 慶 112.1 / 134.4 109.4 / 127.2
成 都 114.7 / 142.0 106.8 / 117.7
このクラスの都市では、この1年2ケタ伸びています。ただし、ここ4年のトータルでは一線級都市に及びません。
また、新築の前年比で20%以上伸びた都市が5つあります。
(前年比/2015年比)
フフホト(内蒙古) 122.8 133.3
貴 陽(貴州省) 120.6 142.5
西 安(陝西省) 124.4 153.9
丹 東(遼寧省) 120.2 122.6
大 理(雲南省) 121.9 135.0
いずれも辺境の中心都市です。丹東市は北朝鮮貿易の窓となった2018年3月と5月の中朝首脳会談以来、急騰しました。
そして中国の70都市のうち、前年割れした都市は1つもありません。
一線級都市は頭打ちのように見えますが、二線級都市や辺境都市など中心から遠ざかるほど高い上昇率を示し、不動産バブルが全国に波及している様が見て取れるのではないでしょうか。
・中国不動産の「取引価格」の変遷
さて、実際の取引価格はいくらでしょうか。安居客という不動産サイトに価格の変遷が載っています。
一線級都市の価格を比べてみましょう。
(左から2019年/2015年/2010年 1元=15.87円)
北京 5万9968元 / 3万9437元 / 2万4733元
深圳 5万4342元 / 4万1494元 / 1万6645元
上海 4万9576元 / 3万5237元 / 2万2491元
広州 3万2065元 / 2万0016元 / 1万2944元
最初に紹介したとおり2009年1年で2倍に上昇していて、2008年は2010年の半額以下となっています。
「不動産バブルの勝ち組」とは2008年以前の購入者と言えるでしょう。
・中国不動産バブルは崩壊する?しない?
中国でも不動産バブル崩壊の危険性は常に指摘されています。
多くの投資家は10年以内に最高に達し、下降局面は必ず現れ不動産価格は必ず下落する、と予感していますが3~5年以内に大幅下落する可能性は極めて小さく、50%下落説などに惑わされる必要はないという情報もあります。
この10年、地方政府はあらゆる政策手段を駆使し必死にバブル崩壊を防いできました。
下落しても大暴落は防げるという自信もまた社会的コンセンサスとなっているようです。
しばらくは「崩壊する」とまでは言えない状況の中国不動産バブルではありますが、今後も慎重に見ていくことが大切でしょう。
【海外不動産のいま】