住宅ローンの年齢制限について、「いったい何歳まで申し込めるのだろう?」という疑問をお持ちですか?仮に申し込めたとしても、年齢による制限や住宅ローン審査との関係についても気になることは多いのではないでしょうか。
住宅ローンは個人が利用する借入としては最も規模の大きなものだけに、金融機関の審査もそれだけ厳格になります。それゆえに申し込みをする人の年齢も深く関わっているおり、年齢制限や審査とのかかわりは避けられません。
そこでこの記事では、
- 年齢に対する金融機関の考え方
- 住宅ローンと年齢の関係
- 住宅ローン借り換えと年齢の関係
- 年齢が高い人のための攻略ポイント
など、さまざまな角度から解説したいと思います。
1、住宅ローンと年齢の関係
(1)年齢に対する金融機関の考え方
①金融機関は住宅ローン審査で年齢を重視している
住宅ローンの審査をする当事者である金融機関は、申込者の年齢についてどう考えているのでしょうか。
そのことがよくわかる国土交通省のデータがあります。「民間住宅ローンの実態に関する調査」というデータで、国土交通省が民間金融機関に対しておこなった住宅ローン動向についての調査結果を集計・発表しているものです。
この調査結果には「融資を行う際に考慮する項目」というページがあり、その内容は以下の通りです。
ランキング1位、つまり金融機関が最も重視しているのが「健康状態」。続いて2位、3位に「借入時年齢」「完済時年齢」となっています。年齢が高くなるにしたがい健康状態は万全とはいかなくなるものなので、上位3つが年齢に関わる要素ということになります。
そのほかにも「勤続年数」「年収」など、申込者の年齢に関わりの深いものが軒並み上位に入っています。
この調査は国内の銀行や信用金庫、生命保険会社など住宅ローン貸し付けを行っている金融機関のうち1,200社以上から回答を得ているので、調査結果の信憑性はとても高く、金融機関が住宅ローン審査をする際に「どこを見ているか」がよくわかります。
②年齢が高くなると審査は厳しくなる
金融機関が年齢を非常に重視しているのは、「年齢が高いとリスクが高くなる」からです。
人間は年齢が高くなると健康リスクが高まり、返済期間中に病気などで働けなくなったり、死亡するリスクが高くなります。
また、近年では役職定年などがあり、年齢が高くなることで収入が減るというリスクもあります。
金融機関は、健康状態と収入面の懸念から年齢が高いことをリスクとみなしますが、逆にこれらを払拭できれば住宅ローンの審査に通るということになります。
(2)住宅ローンの年齢制限 完済年齢80歳までの根拠とは?
①住宅ローンの完済年齢と最長期間
住宅ローンは個人が長期にわたって返済をすることが前提のローンなので、その審査は慎重に行われます。
自動車ローンや学費ローンなどであれば金額は数百万円規模ですが、不動産を購入するための住宅ローンとなると少なくとも桁がもう1つ多くなるので、その分だけ審査が厳格になると考えて良いでしょう。
そのため住宅ローンには、申し込みができる年齢に一定の制限が設けられています。
未成年者は申し込みができないので20歳以上であることは当然なのですが、その一方で上限も設けられています。目安は「ローン完済時の年齢が80歳」です。
完済時の年齢上限については、金融機関のホームページで公開されているローン商品概要から確認ができ「完済時年齢80歳」などの表示があります。
また、ローンの借入期間についても最長期間が決まっていて、一般的に「35年」です。
35年以内の期間で、完済時年齢上限から借入時の年齢を引いた期間がローンを借りられる最長期間ということになります。
完済時年齢 ー 借入時年齢 = 自分が借りられる最長期間(35年以内)
②完済年齢80歳までの根拠
多くの金融機関では、住宅ローンを利用するにあたり、団体信用生命保険(団信)への加入が必須となっています。
団体信用生命保険とは、住宅ローンのために設けられた生命保険のことで、返済当事者が万が一亡くなったり、高度障害になった場合に、生命保険でローンの残債が完済されるという仕組みです。
団体信用生命保険の保険料は金融機関が負担します。ローンの金利に含まれているとお考えください。
団体信用生命保険に加入できないと民間金融機関の住宅ローンは利用できないということになります。
そしてこの団体信用生命保険の保障期間が「80歳まで」を条件としているため、ローンを払い終える年齢=完済年齢が「80歳まで」とされているのです。
一般的な住宅ローンは返済期間が最長で35年と設定されています。
仮に45歳で住宅ローンを借り入れたとすると完済が35年後の80歳となります。
さすがに80歳まで住宅ローンの返済を続けるというのは自営業者など定年のない職業であっても現実味に乏しいと感じるのではないでしょうか。
その点から、すでに45歳は住宅ローンを借り入れる年齢としては「高め」と判断されることがお分かりかと思います。
(3)住宅ローンと団体信用生命保険
前述のとおり、民間の金融機関で住宅ローンを利用するにあたり、団体信用生命保険に加入することは必須になります。
そのため、金融機関が住宅ローンを審査する際に考慮する項目のトップが「健康状態」なのです。
団体信用生命保険は通常の生命保険と同様に、加入にあたり持病や既往歴がないことを確認する「告知書」を提出します。告知書は心身の健康状態を確認するものなので、十二指腸潰瘍など体の病気だけではなく、うつ病などの心の病も告知事項にあたります。
この告知書は住宅ローンを申し込む際に、収入証明などほかの必要書類と一緒に金融機関に提出します。持病など告知事項がある場合は、医師の診断書などをあとから求められることもあります。意外と審査に時間がかかることもあるので、注意が必要です。
このように、住宅ローンは他のローンに比べかなり低金利であるというだけでなく、自分に万が一のことがあった場合でも、ローンが返済され家族に住む家を残せるという一種の生命保険に加入できるということになります。
(4)住宅ローンに通りやすい年齢とは?
住宅ローン申し込み時の年齢制限について解説しましたが、それでは「審査に通りやすい年齢」というものはあるのでしょうか。
これについては金融機関も審査内容を明らかにしていないため、明確なデータはありません。
一般的な認識として、住宅ローンの審査で通りやすい人というのは以下のような人物像です。
- 一定の年数以上継続して定職に就いており、安定した収入がある
- 完済時の年齢がそれほど高齢にならない
- 心身ともに健康である
- 過去に借金問題を起こしたことがない(あってもかなり昔である)
- クレジットカードや携帯電話料金の支払いを延滞したことがない(あってもかなり昔である)
一言で言い換えると、「完済までの返済能力がちゃんと見込める人」であるということです。
あとはその優先順位ですが、それについてはやはり「健康状態」「年齢」「勤続年数」などが重視されているようです。
こうした事情を考慮すると、一定以上の勤続年数を持っている人が多く、年齢的にそれほど高齢ではなく、なおかつ健康状態が良好な人が多い年齢層となると「30代前半」というのが最も審査に通りやすいと見込まれるボリュームゾーンとなります。
ただしこれはあくまでも一般論であり、申込者それぞれの収入や購入する住宅の担保価値なども総合的に審査されるので、あくまでも目安としてお考え下さい。
①若い人にとっての住宅ローン
若い人にとっての住宅ローンは、まだ収入がそれほど高くなくてもマイホームを購入する手段として有効です。
20代で住宅ローンを借り入れた人の35年後を考えると、25歳で借り入れたとしても完済が60歳なので現役世代のうちに完済できる見通しも立ちやすくなります。
また若い人は健康であることが多く、告知事項なしであれば団体信用生命保険にスムーズに加入できます。
そのメリットをいかすために若いうちから住宅ローンの利用を検討する人も多いのですが、おおむねどの金融機関も住宅ローン審査において年齢の下限を20歳としています。そのため実際は20歳を超えてから具体的に検討するということになるでしょう。
②年齢が高い人にとっての住宅ローン
前項の若い人よりも、むしろ年齢が高い人の方が住宅ローンと年齢との関係に敏感にならざるを得ないでしょう。
理由は健康状態だけではなく、住宅ローン完済見込みとなる年齢があまり高いと、その時期まで安定した収入があるかどうかが読みづらくなるため完済への不安が残るからです。
そのことは審査にも影響するので、年齢が高くなるほど住宅ローン審査に通るのが難しくなっていきます。
具体的には、審査の際に繰り上げ返済の予定や60歳以降の返済プランなど、今後の見通しを聞かれることもあります。
前述の通り、団体信用生命保険の保障期間は「80歳まで」とされているため、金融機関も80歳までに完済できることを年齢制限としているところがほとんどです。
たとえば、完済時年齢80歳としている銀行で、住宅ローン最長返済年数である35年をさかのぼると45歳が上限ということになります。
しかしこれは、ローンの返済年数を少なくすることでさらに高い年齢でも住宅ローン借り入れが可能になるので、「45歳を超えたら年齢制限オーバーでアウト」というわけではありません。
ローンの返済年数を短くすることは、月々の返済額が増えるというデメリットはありますが、金利負担が減り総返済額が少なくなるというメリットもあります。
大まかなものでも「無理のない範囲で完済できる」というプランをたて、銀行に説明することが重要になります。
2、住宅ローンの借り換えにも年齢制限がある
(1)住宅ローン借り換えと年齢の関係
住宅ローン借り換えを検討している人にとって、必ず共通しているのは「すでに住宅ローンを借り入れており、返済途中の人」という点です。住宅ローンの借り入れをしたばかりの人ではない限り、総じて借り換えを検討する人は住宅ローンを初めて借り入れる人よりも年齢が若干高めになるでしょう。
そのため最初の住宅ローン借り入れ時よりも上限年齢に対して敏感になり、いったい何歳までなら借り換えが可能なのかということに関心を持っている方は多いと思います。全体的に最初の住宅ローンよりも検討をする人の年齢層が高いため、その分だけ審査は厳しくなることをまずは押さえておいてください。
(2)住宅ローンの借り換え、50代の壁とは?
住宅ローン借り換えには、「50代の壁」があると言われています。40代では比較的審査に通りやすかったものが、50代になると急に審査に通りにくくなる傾向が見られることから言われているものですが、この場合審査基準を変化させた要素が年齢であると考えるのが妥当でしょう。
実際に住宅ローンを借り換えて金利コストを安くしたいと考える人というのは、ある程度住宅ローンの返済を続けてきた人です。その当時の金利条件が高いので、その後の金利低下のメリットを享受するために借り換えを検討する人がほとんどです。こうした事情を考えると金利条件がまだ現在より高かった時期に住宅ローンを組んだ人が多く、必然的に年齢は40代以上、50代などの人が中心になります。
この年代の人たちがボリュームゾーンになることから、「50代の壁」が強く意識されているのです。
3、年齢が高い人の住宅ローン審査攻略ポイント3つ
(1)攻略ポイント① 担保評価の高い物件を選ぶ
国土交通省「民間住宅ローンの実態に関する調査」のデータでは住宅ローン審査における金融機関の本音が如実に表れていますが、この中で重視するポイントとして上位に挙がっている「担保評価」については攻略の余地があります。
金融機関の住宅ローン審査は、年齢・健康状態や年収など「人」についてだけではなく、購入する「物」(住宅)に対してもおこなわれます。その住宅が中古物件として売りに出された時に高値で売れるかどうかによって担保評価が高くなるので、担保としての価値が高い住宅であれば金融機関にとってのリスクが低くなり審査に通りやすくなります。
年齢や勤務年数、収入など申込者本人の属性とは別の部分で攻略できるポイントなので、以下の点を考慮して物件を選びたいものです。
- 人気エリア、人気の学区にある
- 駅から近い
- スーパーやコンビニなどが近くにある
- 公園や公共施設が周辺にあり環境が良い
- 治安の良い地域である
- 建物の耐震性能が優れている
- 接道状況が良い(特に一戸建ての場合)
他にもさまざまなポイントがありますが、その物件を自分が中古で購入する時にどれだけ「買いたい」と思えるかという視点を持つことが重要です。
(2)攻略ポイント② 完済時の年齢が低くなるように調整する
借入時年齢は変えることはできませんが、完済時年齢は工夫によって変えることができます。その方法は大きく分けて、以下の3つです。
- 月々の返済額を多くして返済期間を短くする
- 物件価格を低めに抑えてローン総額を低めに抑え、返済期間を短くする
- 自己資金を多くして住宅ローン借入額を減らす
勤務先や収入、健康状態などは外部的な要因ですが、年齢だけはその人固有のもので変えることはできません。
しかもその年齢が住宅ローン審査で重視されているとなると、一番の攻略ポイントは「少しでも早く申し込む」ことに尽きます。
特に30代から40代、40代から50代など節目の年齢に差し掛かっている方は、初めての住宅ローン・借り換えのどちらであってもその大台を超える前に申し込むことをオススメします。
(3)攻略ポイント③ あらかじめ無理のない返済プランをたてておく
住宅ローンは、それぞれの金融機関が独自のデータや基準を元に審査をおこない、貸し付けの可否は総合的に判断されます。
ローン審査の際には自分の勤務先・職種について申告しますが、金融機関は会社の規模、業種や職種について昇給や退職金などの大まかなデータを持っています。これを元にまずは機械的に判断し、難しそうな場合は個別の事情を細かく見ていきます。
- 年齢と年収のバランス:将来的な昇給の見込みを判断するポイントになります。
- 年齢と自己資金:物件価格のうち何割を自己資金でまかなえるかという資金計画も重要な判断ポイントになり、自己資金が購入価格の「2割以上」であれば審査の基準が緩和されます。
反対に、年齢は高いが手持ちの現金があまりなく100%ローンが組みたいというような場合は「なぜ現金がないのか」ということまで踏み込んで聞かれます。
理由次第では審査が厳しいものになるので、明確な理由が必要です。物件価格に対して多くのローンを借りたい場合、理由と今後の返済プランもあわせて考えておきましょう。
たとえば、保険や社債など現金以外の資産が多く、手持ちの現金が少ないためローンを利用したいが、満期になればそのお金で繰り上げ返済するつもりでいる、というようなことです。
「退職金で繰り上げ返済をする予定」という場合は、金融機関は退職金の額についての大まかなデータを持っているので、ローン金額との整合性や老後資金との兼ね合いについても無理のない返済プランを準備しておきましょう。
もちろん属性によって借入れできる金額は異なりますので、年齢と属性と合せて融資額を決められること認識しておきましょう。
これらの方法で、仮に50代や60代であっても完済できる人であるとみなされれば住宅ローンの審査に通ります。
金融機関が年齢を重視しているのは返済能力の有無を判断するためなのであって、返済能力があると判断できれば問題なく、住宅ローンを組むことができます。
まとめ
住宅ローンと年齢の関係について、特に年齢の上限を気にされている方に必要な情報を中心に解説をしてきましたが、現在お持ちの不安は解消されましたでしょうか?
年齢が高くなるごとに住宅ローン審査が厳しくなるのは事実ですが、金融機関は返済能力を知るための判断基準にしているだけで「年齢が高い=不可」というルールを設けているわけではありません。
年齢制限が気になる方は、この記事で解説している攻略ポイントを参考に、少しでも有利な条件を整えて住宅ローン審査に臨んでください。