不動産を競売で獲得することに興味はあるものの、実際どういう物件が競売にされているのか、一般の取引の不動産と比較した競売物件のメリットとデメリットなどが分からないという方は少なくないのではないでしょうか。
今回は、
- 不動産競売とは?
- 競売物件はおトク?一般の取引の不動産と比較した競売物件のメリットとデメリットについて
- 競売物件の取得にあたりかかる費用
- 競売物件購入の流れ
- 競売物件購入時の注意点
- 競売物件の入札業務代行
などについて書いていきますので、ご参考にして頂けると幸いです。
目次
1、不動産競売とは?
(1)不動産競売とは?
そもそも不動産競売とは、競売物件を裁判所が売却することをいいます。
競売物件とは、本来のマンション、一戸建て、土地などの不動産の所有者が支払の義務を果たせなくなったため、差し押さえされた不動産です。
競売物件を売って得られた金額が所有者の借金の返済に充てられることとなります。
(2)競売物件の種類
一般の取引で取り扱っている不動産の種類が全て競売物件の対象となります。
具体的には
- マンション
- 一戸建て
- 土地
- 店舗
- オフィスビル
- 地上権つき建物、土地
などが挙げられます。中には、一般の取引では流通していない物件も競売される場合があります。
(3)誰でも競売物件の入札に参加できる?資格などの制限は
基本的に不動産競売の入札に参加するには特別な資格はいりません。
しかし、以下のような方は入札への参加は制限されています。
- 債務者
- 過去に入札を参加し最終的に売却代金を支払わなかった人
2、競売物件はおトク?一般取引の不動産と比較した競売物件のメリットとデメリットについて
一般的には、競売物件は差し押さえになった物件なので、普通の不動産取引で購入する不動産価格より安く購入できるイメージがあるのではないでしょうか。
しかし、競売物件は本当にトクするのでしょうか。
一般の取引で不動産を購入する場合と競売物件を購入する場合のメリットとデメリットについてみてみましょう。
(1)一般の取引で購入する不動産と比較した競売物件を購入する場合のメリット
まず、競売物件のメリットについてみてみましょう。
具体的には以下の通りです。
- ① 競売市場修正により評価額が減額され安く購入することができる場合が多い
- ② 普通の不動産取引で流通していない物件を購入できる可能性がある
では、順番にみていきましょう。
① 競売市場修正により評価額が減額され安く購入することができる場合が多い
競売物件は個別の条件によって物件価格が評価されます。
競売市場修正と言われ、一般の不動産取引の価格より3割程安く評価されることが多いようです。
従って、競売物件は一般の取引で不動産を購入するより安く購入することができると言われています。
② 普通の不動産取引で流通していない物件を購入できる可能性がある
普通の不動産取引では、
- 店舗
- 事務所
- 極端に狭い土地
- 公道に接していない土地
- 市街化調整区域内の建物
- 農地
- ほとんど売りに出ないエリア
などなかなか流通していない物件も競売の対象になります。上記のような物件を探されている方にとってはいい機会と言えるでしょう。
(2)一般の取引で購入する不動産と比較した競売物件を購入する場合のデメリット
では、続いて競売物件のデメリットについてみてみましょう。
具体的には以下の通りです。
- ① 売主がいないことから、法律により売主に課されている義務が果たされないため、不備がある物件を購入してしまう可能性がある
- ② 入札しても購入できるとは限らない
- ③ 住宅ローンの利用が難しい
- ④ 事前に物件の中を見ることができない
では、順番にみていきましょう。
① 売主がいないことから法律により売主に課されている義務が果たされないため、不備がある物件を購入してしまう可能性がある
売主がいないことから、法律により売主に課されている義務が果たされないのは競売物件の最も大きなデメリットと言えるでしょう。
競売物件の場合、登記簿上で所有権が移転するだけで、普通の不動産取引で法律により売主に課されている、
- 瑕疵担保責任
- 売主や第三者の立退き
- カギの引渡し
- 付帯設備の点検と修理
- 隣家との境界の確定
- 売主や第三者の残置物の撤去
- 抵当権、賃借権などの権利の抹消
などの義務は全て果たされなくなります。
従って、不備がある物件を購入してしまう可能性があります。もし、購入した物件に不具合や瑕疵があった場合、全て買主が対応することになります。
② 入札しても購入できるとは限らない
競売物件の購入は、入札形式によって行われます。
つまり、自分の入札金額より高い金額の入札があれば、購入ができなくなってしまいます。普通の不動産取引安く評価されるとは言え、あまり高く入札すると逆に大きなリスクを負う可能性があるため、事前に普通の取引での評価額を調べた上で、入札する上限額を決めとく必要があると言えるでしょう。
③ 住宅ローンの利用が難しい
競売物件の場合、金融機関から融資を受けることがほとんどできないため、競売物件を購入する場合、現金で購入する必要があります。
④ 事前に物件の中を見ることができない
競売物件は普通の取引の物件と違って、物件の外観や周辺環境を確認することができますが、物件自体を見ることまではできません。
物件に関して確認ができるのは、裁判所の競売物件閲覧室に備え置いてある以下の3つの資料の写しのみとなります。
- 物件の権利関係、売却条件などを記載した「物件明細書」
- 物件の現在の状況や所有者の情報などを記載した「現況調査報告書」
- 不動産の評価額、周囲の環境、公法上の規制などを記載した「評価書」
原則、競売物件は申立がされた時の現状で売却されますので、買受けの申し出予定の物件があれば以下のことをやっておくとリスクを回避できる可能性があります。
- 現地にて周辺環境の確認
- 法務局にて権利関係の確認
- 区役所にて法的な規制などの確認
自分で確認するのが難しいな場合、宅地建物取引主任者や弁護士などの専門家に相談するといいでしょう。
3、競売物件の取得にあたり必要な費用
では、競売物件を取得する場合にはどんな費用がかかるでしょうか。
大きく以下のような費用が挙げられます。
- (1)物件の入札金額
- (2)登録免許税
- (3)不動産取得税
- (4)立退き費用など占有者との交渉で考えられる費用
- (5)(必要な場合のみ)リフォーム費用
では、順番にみていきましょう。
(1)物件の入札金額
入札時に物件の「買受申出保証金」を、落札後の物件の「残代金」を支払う必要があります。
上記「2—(2)一般の取引で購入する不動産と比較した競売物件を購入する場合のデメリット」にも書きましたが、競売物件は住宅ローンの利用はかなり厳しいので、現金で支払う前提で考えておきましょう。
(2)登録免許税
物件を落札後所有者の名義変更に登録免許税が発生します。
登録免許税は以下の表の通りにて計算することができます。
登記の内容 | 登録免許税の計算 |
売買による所有権移転 | 固定資産税評価額×1% |
抵当権の設定 | 債権額×0.4% |
例えば、売買価格が1,000万円のマンションを購入した場合の登録免許税は、大体「100,000円」前後になるでしょう。
登録免許税については、詳しく「不動産投資において知っておくべき8つの税金と節税方法」をご参考ください。
(3)不動産取得税
家屋や土地を購入、もしくは家屋を建築するなどして不動産を取得したときにかかる税金です。
税額の計算方法は下記の表をご参照ください。
取得対象 | 不動産取得税の計算 |
土 地 | 固定資産税評価額×1/2×3% |
建 物 | 固定資産税評価額×3% |
固定資産税評価額によって変わりますが、例えば、売買価格が1,500万円のマンションの場合、不動産取得税は「200,000円」前後になるでしょう。
競売物件も同じく、大体取得して6ヶ月後に、税金事務所から納税書が郵送で送られてきます。金融機関・郵便局などで納めます。
なお、不動産取得税は1回のみ納付する税金です。
(4)立退き費用など占有者との交渉で考えられる費用
占有者との交渉では大きく以下のような費用が考えられます。
- 占有者に立退いてもらう際に渡す「立退き費用」
- 対象不動産内にある残置物を処分するための「残置物処理費用」
- マンションの管理費が滞納していた場合の「滞納金・遅延損害金」
- 裁判所に強制執行を依頼した場合の「引渡命令・強制執行費用」
など。
(5)(必要な場合のみ)リフォーム費用
落札者の目的によって物件をリフォームされる場合があります。その際にリフォーム費用がかかります。
4、競売物件購入の流れ
では、実際に競売物件を購入する際の流れについてみてみましょう。
競売物件の購入は大きく以下のような流れになります。
- (1)物件の公示(〜2週間)
- (2)物件情報閲覧(2〜3週間)
- (3)物件の入札(1週間)
- (4)開札(9日間)
- (5)売却許可決定(1ヶ月以内)
- (6)代金納付(1〜2週間)
- (7)所有権移転登記(2〜3週間)
- (8)不動産の引渡し
では、順番にみていきましょう。
(1)物件の公示(〜2週間)
競売される物件の物件種別、事件番号、所在地、築年数、最低売却価格、入札期間、開札期日などの事項が公告されます。
競売物件は専門のサイトで検索することができます。
以下2サイトを挙げてみましたので、参考にしてみてください。
① 不動産競売物件情報サイト
② 一般社団法人不動産競売流協会
(2)物件情報閲覧(2〜3週間)
裁判所は公告した競売物件ごとに、「物件明細書」、「現況調査報告書」、「評価書」の写しを閲覧室に備え置きます。希望物件の詳細資料をコピーし、必要に応じて物件について調査を行うようにしましょう。
(3)物件の入札(1週間)
入札期間の1週間以内に入札の手続きを行います。
① 準備する書類
入札に伴い以下に書類を準備しましょう。
- 入札書用紙、白封筒、茶封筒、保証金振込証明書用紙(執行官室で交付されます)
- 買受申出の保証金として、最低売却価格の20%
- 印鑑
- (申出人が法人の場合)資格証明書
- (申出人が個人の場合)住民票
- 委任状
- (共同入札希望の場合)執行官の許可書
- (農地の場合)買受適格証明書
② 入札の方法
入札書は以下の方法で公告に記載された入札期間内に提出するようにしましょう。入札期間経過後の到着は無効となりますので、注意しましょう。
- 執行官に直接提出する
- 執行官宛に郵便などで送付する
(4)開札(9日間)
公告に記載された開札期日に裁判所売却場において出頭した入札人の立会いのもとで開札が行われます。「最高価買受申出人」が決定され、他の入札人の保証金は以下の方法により返還されます。
- 支払保証委託契約締結証明書の場合、直ちに申出があればその場で返還される
- 振込送金の場合、後日裁判所から入札保証金振込証明書に記入された希望内容に基づいて返還される
(5)売却許可決定(1ヶ月以内)
開札日の2日後に、裁判所は最高価買受申出人に対して以下の内容を調査します。
- 買受申出人に欠格事由があるか
- 売却手続きに誤りがあるか
- 執行抗告があるか
問題がなれば1週間後に売却許可決定となります。
(6)代金納付(1〜2週間)
売却許可が確定しましたら、買受人に残代金納付の通知が届きます。
① 納付期間は?
確定日から1ヶ月以内に納付する必要があります。
② 代金納付に必要な書類は?
代金納付には以下の書類が必要になります。
- 代金納付期限通知書
- 売却代金等納付書
- (裁判所提出用の)代金振込み書
- (個人の場合)住民票
- (法人の場合)資格証明書
- (直近の)登記簿謄本
- 評価証明書
- 登録免許税
- 郵便切手(500円☓4枚、20円☓4枚、10円☓5枚)
- 入札書に使用した印鑑
③ 注意点
代金納付について以下の点について注意しましょう。
- 代金の納付は一括の支払のみとなっている
- 定めされた期限までに、代金を納付しないと売却許可決定が失効となる
- 買受人のミスにより失効となった場合、保証金の返還請求もできなくなる
(7)所有権移転登記(2〜3週間)
代金が納付されると、裁判所の書記官は登記所に対して買受人が引き継ぐものとして記載された権利以外の抵当権等の権利の抹消登記を嘱託して(引き受けて)くれます。
1〜2週間で権利書が郵送で送られてきます。紛失すると再発行してもらえないので、大切に保管しましょう。
(8)不動産の引渡し
売却許可決定後直ちに対象物件の占有者に対して引渡し交渉をしていれば、通常代金納付日から1ヶ月前後で不動産の引渡しが完了します。
しかし、対象不動産に自分で引き継がなければならない賃借権があったり、執行官に申立て、強制的に立退かせることになった場合、大体代金納付日から2〜3ヶ月後の引渡しになります。
5、競売物件購入時の注意点
競売物件購入にあたって、以下の注意点について事前に認識しておきましょう。
- (1)債務者への立退料
- (2)空き家の家財の処分
- (3)マンションの滞納管理費など
では、順番にみていきましょう。
(1)債務者への立退料
競売物件の場合、債務者は引っ越ししたくても、引越し費用がなく出ていけず、なかなか物件の引渡しができないケースも少なくありません。
裁判所に強制執行の申立てはできますが、結果的に費用と時間がかかってばかりで、解決にならないことが多いです。
本来、強制執行の費用は債務者負担ですが、結果的に債務者に請求しても支払えず、買受人が負担することになってしまいます。従って、強制執行の費用の半分くらいの目安で引っ越し業者に依頼して債務者に立ち退いてもらう買受人が多いようです。
(2)空き家の家財の処分
空き家とはいえ、家の中にある荷物を勝手に処分してしまうと、所有者に損害賠償請求されることがあります。
その場合、勝手に処分せずに弁護士などの専門家に相談するようにしましょう。
(3)マンションの滞納管理費
マンションの前所有者の滞納管理費は買受人負担になります。
法律上では管理費の支払は所有者が支払うと定めており、そのため、競売物件を査定する際に、滞納管理費等は評価価格から控除されています。
6、競売物件の入札業務代行
競売物件を購入したいですが、入札方法がわからない、物件の調査ができないという場合、業者に入札業務代行を依頼することができます。
入札業務代行の業務範囲は以下の通りです。
- 入札から落札までの代行業務を依頼
- 物件の調査のみを依頼
- 落札後の代行業務を含めて依頼
インターネットにて「競売物件 入札代行業務」などのキーワードで業者を探すことができます。
物件の現地調査などもありますので、できれば落札したいエリアの業者に依頼するといいでしょう。
以下関東圏をメインに対応している3つの業者をピックアップしましたので、参考にしてみてください。
アットアス
多摩ハウジング(株)
桂不動産(株)
まとめ
今回は競売物件のメリット・デメリットや入札の流れについて書きましたがいかがでしたでしょうか。ご参考になれば幸いです。
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