不動産投資は、融資の利用により少額の自己資金から始められることが、大きな魅力です。
不動産投資を始める際は、融資を受ける場合のメリットとデメリット、融資を受けやすい金融機関や金利などの詳しい内容を把握しておくことが必要です。
今回は、不動産投資の融資を受けたい方が知っておきたい、
- 不動産投資時の融資と自宅購入時の融資の違い
- 不動産投資で融資を受ける際の流れ
- 不動産投資で融資を利用する場合のメリットとデメリット
- 不動産投資の融資を受けやすい金融機関
- 資産価値の高い投資物件を選ぶ際のポイント
- フルローンで不動産投資は可能か
以上の6つについて解説します。
物件提案を受ける際には、投資判断に必要な情報をしっかり確認する必要があります。融資についても、知識を身につけておきましょう。
不動産投資で騙された事例を動画で紹介しています。ぜひご覧ください。
不動産投資ローンを有利に利用するために知っておくべき9つのことも併せてお読みください。
不動産投資のバイブル
- 不動産投資に興味があるけど何から始めていいか分からない…
- 営業マンのいうことを鵜呑みにして失敗したくない…
- しっかりと基礎から学び、できる限りリスクを避けたい…
- 今は不動産投資の始めどきなのか?
- 安定収益を得るための不動産投資物件の選び方
- 不動産投資の失敗例から学ぼう
不動産投資は、金融機関から融資を受けて始められる投資です。不動産投資ローンを住宅ローンと比較すると、借り入れの目的や返済原資、金利、融資の審査基準、融資限度額において違いがあります。
目次
1、不動産投資と自宅購入の融資の違い
マンションや一棟アパートなどの投資用不動産の購入には、マイホームを購入するときと同じように、金融機関からの融資が利用できます。
ただし、一般的な住宅ローンを利用することはできません。
不動産投資ローンと住宅ローンの違いは、おもに以下の5つです。
- 借り入れの目的
- 返済原資
- 金利
- 融資の審査基準
- 融資限度額
(1)借り入れの目的
不動産投資ローンと住宅ローンは、どちらも物件を購入するために借り入れます。
しかし、借り入れの目的に違いがあります。
住宅ローンは、住宅の購入者が「自身の居住用に家を購入または増改築すること」を目的とするものです。
一方で、不動産投資ローンの目的は「家賃収入を得るために、物件を第三者の賃貸用の住居として提供すること」です。
(2)返済原資
不動産投資ローンの場合、提供している物件の家賃収入を得る事ができます。
そのため、返済の原資は入居者から受け取った家賃となります。
一方、住宅ローンの返済原資は、一般的に居住者が労働により得た給与収入です。
(3)金利
不動産投資ローンと住宅ローンで金利が異なる理由は、不動産投資は「事業」であるのに対して、住宅ローンは「個人の居住用」という目的の違いです。
住宅ローンを滞納した場合、個人は住む家を失うことになるため、滞納する可能性は低いです。
しかし、不動産投資ローンでは投資家の家賃収入が減った場合、金融機関は滞納されるリスクが高くなります。
投資家の家賃収入が減るケースは、以下のようなものが挙げられます。
- 入居者に家賃を滞納される
- 空室が出たとき
金融機関にとってリスクが高いため、金利も高めに設定されています。
(4)融資の審査基準
金融機関が融資の審査を行う際の基準にも、違いがあります。
住宅ローンでは、個人の勤務先や年収を鑑みた返済能力、信用性はあるかといった「個人の属性」を元に判断します。
一方で、不動産投資用ローンでは、個人の属性に加えて「物件の条件」も判断材料となるのです。
「物件の条件」は資産価値や需要があり続けるエリアかどうか、築年数等を考慮して審査されます。
不動産投資を運営している他の物件がある場合は、その物件の収益性等も審査の基準となるでしょう。
(5)融資限度額
住宅ローンでの融資限度額は、年収の7倍程度(個人事業主の場合は5倍)が一般的です。
一方で、不動産投資の融資限度額は、個人の属性や物件の収益性、金融機関、これまでの投資物件の運用成果等により前後するでしょう。
2、不動産投資で融資を受ける際の流れ
前章では、不動産投資時の融資と自宅購入時の融資の違いについて解説しました。
不動産会社にはそれぞれ提携している金融機関があり、不動産会社を通して融資を申し込むケースが多いですが、個人的に金融機関と交渉することも可能です。
本章では、不動産投資で融資を受けるまでの流れを紹介します。
具体的な流れは、以下のとおりです。
- (1)各金融機関の融資条件等を調べてどこの金融機関を利用するか決める
- (2)融資を申し込む
- (3)必要書類を用意して金融機関に提出する
- (4)融資担当者と面談を行う
- (5)金融機関による審査が行われる
- (6)審査を通過したら融資を受ける
(1)融資条件等を調べてどこの金融機関を利用するか決める
より良い融資条件で融資をしてもらえるように、複数の金融機関の融資条件を調べ、比較してみましょう。
(2)融資を申し込む
不動産投資物件の売買契約を締結したら、銀行との接触を図りましょう。
銀行のHP等で、その銀行の融資条件を確認してから、 事前に電話でアポイントを取っておくとよいでしょう。
(3)必要書類を用意して金融機関に提出する
不動産投資で、融資を受けるために必要な書類は、主に以下のとおりです。
- 物件概要書
- レントロール
- 売買契約書
- 重要事項説明書
- 登記簿謄本
- 公図
- 建築確認済
- 証身分証明書/印鑑登録証明書/住民票/健康保険証
- 所得を証明するもの
- 履歴書
- 納税証明書
- 資格等の証明書
- 賃貸仮契約書/支払い通帳/ローンの返済予定表
金融機関によって、必要部数等異なる場合があります。各金融機関で確認しましょう。
(4)融資担当者と面談を行う
「必要書類」を提出したら、担当者と面談を行います。
融資を受ける物件と、自身について知ってもらいましょう。
(5)金融機関による審査が行われる
担当者との面談で、検討の土台が出来たら、次は融資審査です。
本審査が通るまでの期間は金融機関によって様々ですが、打診から約1週間~1か月程度となっています。
(6)審査を通過したら融資を受ける
以上で、融資を受ける手続きは完了です。
銀行内での手続きは時間がかかるため、余裕をもって進めることが大切です。
3、不動産投資で融資を利用する場合のメリットとデメリット
「融資を受ける = 借金をする」という一見ネガティブなイメージがありますが、不動産投資においては融資を利用することで、さまざまなメリットがあります。
一方、デメリットもあるため、融資を利用する場合は注意も必要です。
本章では、不動産投資で融資を利用する場合のメリットとデメリットについて、それぞれ詳しく説明します。
(1)不動産投資に融資を利用するメリット
不動産投資に融資を利用するメリットとして、以下のメリットが挙げられます。
- レバレッジ効果がある
- 家賃収入でローンを完済できる
- 生命保険の代わりになる
①レバレッジ効果がある
「レバレッジ」とは、小さな力で大きなものを動かす「テコの原理」を指しています。
投資の世界では、少ない資金で大きな利益を得ることを表します。
例えば、現金500万円で物件を購入するとしたら、選択肢はかなり限られるでしょう。
「築年数が古い」「駅から離れている」など、条件の悪い物件では入居者がつきにくく、肝心の家賃収入が得られないかもしれません。
反対に、融資を利用すれば手持ち資金以上の物件の購入が可能になり、選べる物件はぐっと増えます。
職業や年収などによっては、融資上限額の引き上げや低金利での借り入れも可能なため、より有利な条件で不動産投資を始められるでしょう。
②家賃収入でローンを返済できる
不動産投資では、家賃収入の中からローンを返済していきます。
毎月、ローンの返済をまかなえるだけの家賃が確実に得られれば、給与などの個人的なお金を使わずに済むのです。
「他人(入居者)がローンを返済してくれている」のと同じことになります。
投資用物件は、自分の資産になるので、売却することも可能です。購入時よりも高く売ることができれば、差益を得られるのも、不動産投資の魅力のひとつでしょう。
③万が一の時に家族に資産を残せる
不動産の購入に融資を利用する場合は、「団体信用生命保険」への加入が義務付けられています。
ローン返済が終わっていないのに契約者に万一のことがあった場合、残りのローンは保険で完済されるため、家族はローン返済の必要がない不動産を手に入れることができます。
ローン完済後の家賃収入は、家族の生活費に充てることができるでしょう。
以上のことから、融資を利用した不動産投資は生命保険の代わりになるといわれています。
団体信用生命保険(団信)に関して詳しくは、団信とは?不動産投資ローンでも利用できる団信の保障内容や注意点を解説で説明しています。ぜひお読みください。
(2)不動産投資に融資を利用するデメリット
前項では、不動産投資に融資を利用するメリットを紹介しました。
しかし、不動産投資に融資を利用する場合は、以下のようなデメリットも伴います。
- 家賃収入が無くなっても返済義務は続く
- 将来的に金利が上昇する可能性がある
- 金融機関との交渉が必要になる
①家賃収入が無くなっても返済義務は続く
不動産投資を行ううえで注意すべきリスクには、以下のようなものがあります。
- 空室リスク
- 家賃滞納リスク
- 火災・自然災害リスク
空室や家賃滞納が発生すれば、当然家賃は得られません。
家賃収入が無ければ、ご自身の貯金などからローンの返済を工面することになり、家賃無収入が長期間になるほど、オーナーの負担は大きくなります。
火災や自然災害で建物が住居として利用できなくなったとしても、ローンがなくなるわけではありません。
ローンの返済に加えて、修繕費が発生しますので、大きな負担になります。
以上のようなリスクの回避策については「不動産投資の14個のリスクと回避策を徹底解説」をご参照ください。
②将来的に金利が上昇する可能性がある
住宅ローンには、大きく分けて次の2つのタイプがあります。
- 「固定金利型」:契約時の金利が完済まで続く
- 「変動金利型」:市場の金利に連動して変動する
不動産投資ローンの場合、多くは「変動金利型」の商品です。
変動金利は半年に1回見直しされ、5年に1回返済額の見直しが行われます。
低金利が続く状況では有利ですが、金利が上昇すれば、返済額に影響するというリスクがあります。
金利が上昇すると、月々の返済額のうち、金利が占める割合が増加してしまい、当初の予定よりも返済総額が増えることが懸念点でしょう。
金利上昇リスクを回避するには、金利が低いうちに繰り上げ返済を行うことをおすすめします。
見直しのタイミングで、低金利の商品への借り換えを検討するのも良いでしょう。
不動産投資ローンの借り換えについては「不動産投資ローンの借り換え成功のために知っておきたい6つのこと」も併せてご参照ください。
③金融機関との交渉が必要になる
融資の条件や審査基準などは、金融機関によって異なります。
物件の担保価値や申込者の属性(職業・年収・資産状況など)で金利が決められるといわれていますが、交渉次第では、金利の引き下げに応じてもらえることもあります。
金融機関の融資条件を比較するほか、より良い条件で融資を受けるためには、自分で交渉することも必要です。
4、不動産投資の融資に積極的な金融機関は?
都市銀行や地方銀行など、数多くの金融機関がありますが、不動産投資の融資を申し込むにはどこを利用するのが良いのでしょうか。
本章では、各金融機関の特徴や融資の受けやすさなどについて説明します。
あわせて、「不動産投資の融資を積極的に行っている銀行」についても紹介します。
(1)都市銀行
金融機関の中で、最も金利が低いのは「都市銀行」ですが、融資を受けるための審査基準が最も厳しいという特徴があります。
物件の資産価値や申込者の属性ともに、高評価が得られなければ、融資を受けられません。
(2)地方銀行
「地方銀行」は、都市銀行と比べると、審査基準がやや緩めです。
地域密着型で地元の住民・物件は優遇される傾向がある反面、地元以外の住民・物件は、審査が厳しくなる可能性があります。
担保となる物件の資産価値や、申込者の属性も審査対象になりますが、それ以上に「事業性」を重視するというのも地方銀行の特徴です。
「事業収支計画書」を作成・提出すると、地方銀行で融資を受けられる可能性が高まります。
「事業収支計画書」には、下記のような項目を記載します。
- ローン返済額
- 諸費用を差し引いた実質利益
- 想定空室率 など
(3)信用金庫・信用組合
「信用金庫」や「信用組合」は、地元の経済活性を目標とする金融機関です。
地元の住民・物件は融資を受けられる可能性が高いでしょう。
融資審査では、特に「事業性」を重要視しているため、職業や年収などの属性に不安があっても、融資を受けられるケースは少なくありません。
ただし、信用金庫は「営業エリア内に居住または勤務」している人、信用組合は「組合員」でなければ利用できないことに注意してください。
5、不動産投資の融資をスムーズに受けるポイント
資産価値の高い物件を選ぶことは、融資をスムーズに受けるための大切な要素のひとつです。
次のような物件は、「資産価値が高い」と判断され、融資を受けられる可能性が高まります。
- 空室になりにくい物件
- 立地のいい物件
- 高利回りが期待できそうな物件 など
- 詳しい内容については「不動産投資物件の選び方のコツとは?不動産投資を成功に導くポイントを解説」をご参照ください。
不動産投資の融資に関するQ&A
(1)頭金なしで融資を受けられるケースはある?
頭金なしのフルローンを組むのは難しいですが、以下のケースでは融資を受けられる可能性があります。
- 物件価格より銀行の担保評価額が上回っている
- 投資家の属性が高水準である
- 物件の想定利回りが高い
詳しい内容については「初期費用なしで不動産投資をする際に知っておくべき4つのこと」をご参照ください。
(2)会社員はいくらまで融資を受けられる?
前項で述べた通り、 フルローンを組むことが可能なケースとして、「投資家の属性が高水準であること」を挙げました。
では、一般的な会社員の融資上限額は、どれくらいなのでしょうか?
明確な基準が公表されているわけではありませんが、一般的には、年収の「7~10倍程度」と言われています。
投資家の属性や物件、不動産投資会社によっても、大きく変動します。
(3)不動産投資会社が提携している金融機関を利用するメリットはなんですか?
不動産投資会社が業務提携している金融機関を利用するのも、ひとつの方法です。
業務提携をしていることから、
- 審査に通りやすい
- 金利を優遇してくれる
などのメリットが考えられます。ぜひ担当者と相談してみてください。
まとめ
今回は、不動産投資と融資について解説しました。
自己資金が少なくても、融資を受けて物件を購入すれば、不動産投資を始められることがおわかりいただけましたでしょうか。
株やFXに投資するための資金を融資で調達することはできませんが、不動産投資は融資を受けて始められるという特性があります。
この記事が、不動産投資への第一歩に役立ちましたら幸いです。