• 不動産コラム
  • 2019/3/18 (更新日:)

【自分でできる不動産価値の調べ方】第4回 真の市場価値が分かる取引事例比較法とは

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現地調査も行い、よさそうだと思った投資物件も高値で買ってしまうと投資としてはうまみがありません。そうならないためには物件の価格が市場価値と乖離(かいり)していないかをチェックする必要があります。その代表的な方法に「取引事例比較法」と「収益還元法」があります。今回は、そのうちの「取引事例比較法」を説明します。(田井能久・不動産鑑定士、ロングステイアドバイザー、タイ・バリュエーション・サービシーズ代表取締役)

・取引事例比較法とは

取引事例比較法とは、成約した取引事例や売り希望の事例と求めたい投資物件の立地条件や建物の状態などを比較して、その不動産の市場価値をチェックする方法です。

不動産の市場価値は「相場がこのくらいだから、不動産の価値はこのくらい」と判断されることが多いと思います。しかし、この方法を使って具体的な事例を調査し、比較すれば、より精度の高い価格を推定できます。

(1)適している物件は?

この手法は、比較しやすい事例が入手しやすく、比較内容がシンプルであることが需要です。そのため、建物の個性が強い商業ビルよりも戸建分譲の方が向いています。また、マンションであれば一棟よりも一戸の投資の方が価値判断がしやすくなります。

事例を収集しやすいという意味では、取引が活発な東京などの大都市が、事例が少ない地域よりも適用しやすいといえます。マンション一戸でも、200平方メートルを超えるような、めったに見ることのない特殊なマンションよりも、80平方メートルのファミリー向けや25平方メートルのワンルームなど市場に多く流通する物件の方が適していると考えられます。

(2)事例の集め方と選び方

不動産鑑定士や宅建業者は、実際の成約事例が収集できるため、それらを使って査定します。しかし、そうではない一般の人が査定する場合は、個人所有の仲介物件よりも業者が売主の物件に着目するとよいでしょう。

理由は、個人所有の場合、ローン残高との関係で売買価格が決定されていたり、家に対する思い入れが強いため、割安で売ることはなるべく避けていたりして、長い期間で市場に滞留している物件もあるからです。

一方、業者が売主であれば売れ残ってしまうことを避けて、妥当な値段で売ることを考えます。そのため、現在の市場性を反映した価格の可能性が高くなります。

収集方法は、基本的にはインターネットを使って物件の販売サイトなどで調べます。これ以外にも自分が買いたいエリアの新聞チラシをこまめに集めたり、フリーペーパーに目を通したりするなどのアナログな作業も並行して行います。そうすることで、物件を選別する目が養われます。

(3)比較の方法は?

投資マンションを例に挙げると、駅やスーパーといった施設からの距離、住環境、最寄り駅、建物の構造、築年数、部屋の設備や面積などを比較します。

この時の注意点として、例えば、駅なら徒歩5分と徒歩20分では、15分という「時間の差」というよりも、駅からかかる時間が徒歩なのか、バスなのか、自転車なのかといった「交通手段の差」に着目しましょう。

また、面積についても、20平方メートルと80平方メートルでは、入居者の需要が全く異なります。そこで、サラリーマンなのか、学生なのか、独身なのか、ファミリーなのかといった自分が想定している入居者が求める広さと差が少ないものを選ぶ必要があります。

さらに、比較する物件の選択は大事なのですが、少ない事例から判断するのでなく、例えば、同じ最寄り駅に事例がない場合でも、同じ路線で同じような乗降客数などの駅から事例を見つけるなどして、多くの事例を参照することが大切です。立地や設備に注意しながらも、多数の代替性の高いものを選んでいくと、比較すべきものが明確になり、価格を推定できます。

・物件比較の実践例

これまで説明してきた注意点を踏まえて、実際に取引事例比較法を実践してみましょう。

【査定例】
例えば、Aというワンルームマンションが、2019年に2500万円(25平方メートルなので100万円/平方メートル)で売買され、Bというワンルームマンションが2018年に2800万円(30平方メートルなので93万3333円/平方メートル)で売買された事例が入手できたとします。

投資したいマンションの面積が26平方メートルで、立地条件に差はないが、Aのマンションの方が5%(125万円分)ほど設備がよく、Bのマンションより2019年現在は3%ほど価格が上昇していると仮定します。これらの条件で査定すると、以下のような計算になります。

A:100万円/平方メートル×100/100(時点修正)×100/100(立地補正)×100/105(建物補正)=95万2381円/平方メートル

B:93万3333円/平方メートル×103/100(時点修正)×100/100(立地補正)×100/100(建物補正)=96万1333円/平方メートル

この2つの事例の平均値から投資したいマンションの単価は「95万6857円/平方メートル」と計算されます。ここから、総額は95万6857円/平方メートル×26平方メートル=2490万円と算出できます。

現実の査定では、このような条件がほぼ一致する物件の事例を収集するのが難しく、比較もこれほど単純ではありません。しかし、多くの事例を収集し、自分なりのポイントを設けながら一物件ずつ比較する作業は、何よりも不動産を選ぶ目を養い、自分にとって納得できる投資のモノサシを持つことにつながります。ぜひ挑戦してみてください。

・日頃からの情報収集意識が大切

今回は取引事例比較法を説明しました。この方法の大事なポイントは「参考になる事例をいかに集められるか」ということです。それには日頃の情報収集収がものをいいます。その意識を常に持ってもらえたらと思います。このシリーズも次回で最終回です。最後は「収益還元法」について解説します。

【自分でできる不動産価値の調べ方】シリーズ
第1回 まずは不動産の特徴を知ろう!

第2回 机上調査で所有者や規制を確かめる
第3回 現地調査で立地・建物を確かめよう
第5回 収益から価格を割り出す収益還元法

初心者が知っておくべき不動産投資のバイブル
初心者が知っておくべき
不動産投資のバイブル
  • 不動産投資に興味があるけど何から始めていいか分からない…
  • 営業マンのいうことを鵜呑みにして失敗したくない…
  • しっかりと基礎から学び、できる限りリスクを避けたい…
  • 今は不動産投資の始めどきなのか?
  • 安定収益を得るための不動産投資物件の選び方
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