• 相続税対策
  • 2021/10/26 (更新日:)

相続税を節税する方法と路線価の計算法を解説

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相続した土地の評価額を決める「路線価」

国税庁のホームページでも路線価図を確認することはできますが、どのように見ていいものかと戸惑った方も多いのではないでしょうか。

そこで、

路線価図の見方、路線価方式と倍率方式の違いについて、一発で理解できるようにわかりやすくまとめました。

相続税の計算は意外と簡単? 相続税の計算方法について








1、路線価とは?4種類ある土地の時価のひとつ

(1)相続税の計算に用いられる路線価

路線価(路線価格)とは土地の時価のこと。土地の評価額を調べる際に参考にするものの一つで、相続税の計算に用いられます。相続税の計算方法については「7、土地の相続税の計算方法」にて後述します。

ちなみに、土地の時価は路線価含めて4種類あります。ちょっとややこしいのですが、「土地の時価を調べる理由」によって、4つの時価の中から必要なものが用いられます。

(2)4種類ある土地の時価

①路線価格(相続税評価額)

路線価です。主要道路に面した土地の評価額で、毎年8月頃に国税庁から公表されます。

おおよそ「③公示価格」の約80%といわれています。相続税の計算に用いられます。

②取引価格(実勢価格)

実際の不動産売買で取引された価格をいいます。近隣の土地が過去いくらぐらいで売買されたか知ることは、土地の値段を決める参考になります。国土交通省の「土地総合情報システム」から、過去の取引価格を確認できます。

③公示価格

11日現在の標準地の価格。毎年3月末に国土交通省から公表されます。

おおよそ「②取引価格」の約90%といわれています。取引価格を決める際の指標となります。

④固定資産税評価額

市町村が固定資産税を課税するための時価。3年毎に見直しされます

おおよそ「③公示価格」の約70%といわれています。

2、2パターンある土地の評価方式

相続税の計算に用いられるのは路線価格ですが、路線価格で計算できる場合とそうでない場合の2パターンがあります。

土地を評価する際は、以下どちらかの方法で計算します。他に特別な事情がある場合には、不動産鑑定士に評価を依頼する方法もあります。

(1)路線価方式

路線価が設定されている土地(市街地)の評価に使われるのがこちら。路線価方式の場合、土地の形状や道路との接し方で補正がかかります。

詳しい計算方法は「4、路線価方式での土地の評価額の計算方法」の計算で解説します。

(2)倍率方式

市街地以外、路線価が定められていない道路に面している土地の評価に使われるのが倍率方式です。倍率方式については「3—(3)路線価図に何も書いていないときは」ご確認ください。

3、路線価の調べ方

路線価を地図に記したものを「路線価図」といい、路線価を調べる際はこの路線価図を活用します。

(1)路線価図はネットで閲覧可能

国税庁の路線価のページには、最新の路線価図が掲載されています。

都道府県一覧から→市区町村→町字とたどっていくと、知りたい地域の地図が閲覧できます。

地域によっては市区町村名自体掲載されていない場合がありますので、その場合は、倍率方式で計算することになります。「3—(3)路線価図に何も書いていないときは」ご確認ください。

(2)路線価図のどこを見ればいいのか

出典:財産評価基準書路線価図・評価倍率表

数字の見方、記号の見方について説明します。

例:「165D」と書いてある場合

  • 数字は1平方メートルあたりの価額を1,000円単位で表示しているため、この場合1平方メートルあたりの路線価が165千円であることを示しています。
  • アルファベットは借地権割合を示しています。詳しくは「5—(2)借地権」で説明します。

(3)路線価図に何も書いていないときは

調べたい土地の路線価図を確認したものの、土地の周りに数字が設定されていなかった場合や、調べたい土地の町村名が索引になかった場合、路線価方式ではなく倍率方式で計算をすることになります。倍率方式の計算式は以下の通りです。

固定資産税評価額×倍率

固定資産税評価額は、固定資産税の課税明細書で確認できます。

手元にない場合は管轄の市町村役場(東京都は都税事務所)に申請すれば、固定資産評価証明書を取り寄せることができます。

また、倍率は路線価同様ネットで閲覧可能です。先ほど同様、国税庁の路線価のページにアクセスし、都道府県を選ぶと「評価倍率表」という項目がありますので、そちらをご覧ください。

4、路線価方式での土地の評価額の計算方法

地図から路線価を読み取ったら、土地の評価額を概算してみましょう。

(1)計算式

土地の評価額=1平方メートルあたりの評価額×宅地面積

1平方メートルあたりの評価額=路線価×奥行価格補正率

(2)奥行価格補正率とは

道路に1面しか面していない土地だと、奥行が極端に長い場合や短い場合があります。そのような土地は活用しにくいため、評価額が下がります。その調整を果たすのが奥行価格補正率です。

奥行距離(m)奥行価格補正率
4未満0.90
4~6未満0.92
6~8未満0.95
8~10未満0.97
10~24未満1
24~28未満0.99
28~32未満0.98

(3)計算例

例えば、「350C」のエリアで奥行20メートル、宅地面積200平方メートルの土地を持っていた場合を考えてみましょう。

これを(1)の計算式に当てはめると、

35万円(1平方メートル当たりの評価額)×1.0(奥行20メートルの奥行価格補正率)×200(宅地面積)=7,000万円」が評価額となります。

5、土地の利用状況によって計算方法が変わる

自分の土地か、借りた土地かなどによっても評価額が補正されます。

(1)自用地の場合

自用地とは、土地に他の権利や制限がなく、所有者だけで自由に使える土地のことです。自宅の敷地や更地などがこれに当てはまります。

自用地の場合は「4−(3)計算例」の計算結果がそのまま評価額になります。

(2)借地権

借地権とは、借りた土地に家を建てて居住することができる権利のことをいいます。借地権を持つ人から土地を相続する場合、その土地の評価額に借地権割合を掛けます。

借地権割合は路線価図のAGで割合が決まっています。

A90%B80%C70%D60%E50%F40%G30%

4−(3)計算例で出てきた「350C」の場合、C70%)が借地権割合となります。

そのため、350Cのエリアに200平方メートルの土地(奥行価格補正率1.0)を借地権所有者から相続した場合は、

35万円×1.0×200平方メートル×70%=4,900万円」が評価額になります。

(3)貸宅地

借地権が設定されている宅地(貸している相手の家屋が建っている敷地)を貸宅地(かしたくち)といいます。

貸宅地の評価額は、自用地評価額から借地権相当額を引いたものになります。

先ほど同様、路線価350Cのエリアで200平方メートルの土地(奥行価格補正率1.0)で考えると、

自用地評価額(7,000万円)―借地権相当額(4,900万円)2,100万円」が評価額になります。

6、土地の形状でも計算方法が変わる

利用状況の他、土地と道路の接し方でも計算方法が変わってきます。

(1)角地の場合

正面と側面が道路に面している土地を角地といいます。十字路や丁字路に接している土地といってもいいでしょう。

角地の場合、2つの道路に面しているため、1平方メートルあたりの評価額を単純に路線価だけで決めることができません。

1平方メートルあたりの評価額は

(正面路線価×奥行価格補正率)+(側面路線価×奥行価格補正率×側方路線影響加算率)」という式で求めます。

これに宅地面積を乗じたものが、角地の場合の評価額になります。 

ここで、「側方路線影響加算率」という新しい言葉が出てきました。

1面だけが道路に面しているよりも利便性が高いことから、「側方路線影響加算率」を加味します。

角地の場合準角地の場合
0.030.02

計算にあたっては、まず2つの面のどちらが正面か決める必要があります。

路線価×奥行価格補正率」が大きい方が正面路線小さいほうが側面路線となります。

上記の図の場合でどちらが正面路線になるかを求めてみましょう。

350C側:35万円(路線価)×1.0(奥行20mの奥行価格補正率)=35万円

300C側:30万円(路線価)×1.0(奥行10mの奥行価格補正率)=30万円

350Cの道路が正面路線、300Cの道路が側面路線だとわかります。

1平方メートルあたりの評価額は、

「35万円(正面路線価)×1.0(奥行価格補正率)+30万円(側面路線価)×1.0(奥行価格補正率)×0.03(側方路線影響加算率)1万3千円

土地全体の評価額は、

「359千円×200平方メートル260万円」となります。

(2)準角地の場合

交差点や丁字路ではない、L字型の道路に面している土地を準角地といいます。計算方法は角地と一緒ですが、角地より利便性に欠けるため、側方路線影響加算率が異なります。

1平方メートルあたりの評価額は、

「35万円(正面路線価)×1.0(奥行価格補正率)+30万円(側面路線価)×1.0(奥行価格補正率)×0.02(側方路線影響加算率)35万6千円」

土地全体の評価額は、

「356千円×200平方メートル7,120万円」となります。

(3)二方路線の場合

上図のように正面と裏面が道路に面している場合、1平方メートルあたりの評価額は

(正面路線価×奥行価格補正率)+(裏面路線価×奥行価格補正率×二方路線影響加算率)」という式で求められます。これに宅地面積を乗じて評価額を出します。

側面路線価が裏面路線価という名前に変わり、先ほど側方路線影響加算率が入った部分が、「二方路線影響加算率」に変わっただけなので、計算方法はほぼ同じです。

普通住宅地区の場合の二方路線影響加算率は0.02です。

また、正面路線価、裏面路線価の区別も「路線価×奥行価格補正率」の大小で決まります。

今回の場合は350C300Cいずれも奥行は20mですので、正面路線価が350C、裏面路線価が300Cとなります。

1平方メートルあたりの評価額を求めると、

「35万円(正面路線価)×1.0(奥行価格補正率)+30万円(裏面路線価)×1.0(奥行価格補正率)×0.02(二方路線影響加算率)36万6千円」

土地全体の評価額は、

「366千円×200平方メートル7,320万円」となります。 

7、土地の相続税の計算方法

土地の相続税は「(土地の評価額-基礎控除額)×相続税率」で求めることができます。

基礎控除額は法定相続人の数によって変わってきます。詳しくは「土地の相続で注意すべき点とは?損をしないための対策について」にまとめました。また、相続税率については国税庁のHP財産を相続したとき」に詳しい説明がありますので参考にしてみて下さい。

8、土地の相続税を節税する方法

先ほど説明した計算式から、土地の評価額を下げることができれば相続税を抑えることが可能だとわかります。

しかし評価額を下げるといっても、立地や地形は変えられるものではありません。

そこで節税手段として考えられるが、賃貸不動産として活用することです。更地にアパートを建てる、空き家を借家にするなど、人に貸すことで「5ー(2)借地権」「5−(3)貸宅地」に当てはまります。結果として、相続税が2~3割程度抑えられます。

活用できていない土地や住宅があれば、検討してみるのもよいかと思います。

まとめ

路線価図の読み取り方や、利用状況、形状に応じた計算方法、さらに応用として土地の相続税の計算方法などを紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。

路線価図上にはさまざまな数字や記号が載っており、パッと見では情報が読み取りづらいもの。しかし必要な数字さえ拾い出せれば、評価額の計算自体はシンプルですので、意外と簡単に評価額を出すことが可能です。

これを機に、ご自宅や実家の路線価や土地の評価額をご自身で計算してみてはいかがでしょうか。

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皆様からのコメント

「相続税を節税する方法と路線価の計算法を解説」に対する2件のコメント

  1. ETSUKO

    土地の評価額の計算式、大変参考になりました。
    どうもありがとうございました。

    一つだけ、”(3)二方路線の場合” 
    の計算式の合計が違っているように思われますが、
    ご確認をお願いします。

    1. ETSUKO様

      ご指摘頂き誠にありがとうございます。
      ご指摘の通り、計算が間違っておりましたので、
      訂正いたしました。ご確認のほどお願いいたします。

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