解雇予告手当の計算方法と確実にもらう方法を解説

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勤め先の会社から解雇された場合は、解雇予告手当てが支払われる仕組みとなっています。

これは、解雇されることによって生活費の調達が困難となってしまう労働者を保護するための制度です。

そのため、たとえ適法な解雇であっても解雇予告手当の支払いが義務づけられています。

ただ、労働者側から見ると人生でそう何度も解雇ということを経験するわけではありませんから、解雇予告手当についてわからないことも多いと思います。

そこでここでは、解雇の際に支払われる解雇予告手当について、支払金額の計算法や支払われないケース、確実に解雇予告手当を受け取る方法などについてわかりやすくご説明いたします。

1.解雇予告とは何でしょうか?


まず、解雇予告の意味を押さえておきましょう。

解雇予告とは、使用者(会社)が労働者(従業員)を解雇する場合は、最低でも解雇する日の30日前に解雇する旨を予告しなければならないという制度です。

労働基準法に定められています。

たとえば会社が従業員を7月末日で解雇しようと考えている場合は、その30日前までに7月末日で解雇する旨を伝えなければならないということになります。

※この記事は2017年10月16日に加筆・修正しました。

2.解雇予告手当について


労働者を解雇する場合には、原則として最低でも30日前に予告するか30日分以上の平均賃金(これを解雇予告手当といいます)を支払わなければならないとしています。

これは、労働基準法に定められています。

(1)予告日数の短縮と解雇予告手当について

解雇予告は、30日前にするように定められていますが、実は、平均賃金を支払った分の日数だけ期間を30日より短縮することができます。(平均賃金については後述します。)

なお、解雇予告期間を計算する場合の起算日は解雇予告を行った日の翌日となります。

例えば、解雇日が7月31日で解雇予告日が7月11日の場合を例にとると、この場合の起算日は7月12日となり、そうすると解雇日までの日数は20日となります。

したがって、解雇予告手当の額は、30日-20日=10日ということで、10日分の平均賃金となります。

このことは、言い換えると30日分の解雇予告手当を支払えば、即日解雇できることを意味します。

3.解雇予告手当の算出方法


前述したように、実際に、解雇予告手当として支払われるのは、解雇予告が30日より前に行われた場合において、30日に足りない日数分の「平均賃金」です。

(1)平均賃金とは

平均賃金とは何でしょうか。
これは、毎月の基本給のことではありません。

これは、解雇の通告がなされた日を基準として、その前の3か月間に実際に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で割った金額となります。
例えば、基準日を7月15日とするなら4,5,6月の賃金の総額を4,5,6月の総日数で割ることになります。

なお、実際に支払われた賃金の額の中に、ボーナスは含めませんのでご注意ください。

(2)平均賃金の例

ここで、会社が従業員Aを7月末で解雇しようと考えて7月11日に解雇予告しようとしている場合を例にとってみていきましょう。
この場合は、6月分・5月分・4月分の給料の総額をこの3カ月間の総日数で除した金額が解雇予告手当となります。

この3か月間の給料が合計で90万円だったとすると「90万÷(30日+31日+30日)」ということで、平均賃金は14754円となります。

(3)支払われる解雇予告手当の金額

上記の例で、10日分の解雇予告手当を支払わなければならない時は、14,754円×10日分ということで、147,540円の解雇予告手当の支給ということになります。

なお、即座に解雇する場合は、14,754円×30日分となりますので、解雇予告手当の額は、442,620円になります。

(4)日給や時給で働いている人の場合

但し、上記の計算式は、日給や時給で働いている人の場合には当てはめると、不都合が生じることがありますので、その場合は、「賃金の総額をその期間中に労働した日数で除した金額の60%」という下限が定められています。

例えば、日給20,000円で1ヶ月あたり10日、3ヶ月では30日働いている人の場合、
600,000円÷20日×60%=12,000円が平均賃金となります。

この場合、20日前に解雇予告を行うなら、会社側は、10日分の解雇予告手当として120,000円を支払うことになります。

4.解雇予告手当をもらえないケースがあります


解雇予告は、労働者であれば必ずもらえるわけではなく、除外される方もいらっしゃるので注意が必要です。
除外される方々は、次の通りです。

(1)日雇い労働者

ただし、1ヶ月を超えて継続して雇用されていたときは、解雇予告手続きが必要となります。

(2)2ヶ月以内の期間を定めて使用される者

ただし、所定の期間を超えて継続使用されたときは、解雇予告手続きが必要になります。

(3)季節的業務に4ヶ月以内の期間を定めて使用される者

ただし、所定の期間を超えて継続使用されたときは、解雇予告手続きが必要になります。

(4)試用期間中の者

ただし、試用期間が14日を超えた場合は、解雇予告手続きが必要になります。

(5)火事や地震といったやむを得ない事由のため、事業の継続が不可能な場合

天変地異(地震・火災・洪水などの自然災害)や、戦争などのため、会社としての事業の継続が不可能となり従業員を解雇する場合です。

(6)労働者の責に帰すべき理由がある場合で、労働基準監督署長の認定を受けた場合

いわゆる懲戒解雇にあたる場合は、会社側は、30日前の予告や解雇予告手当の支払をすることなく解雇することが可能です。

5.解雇予告手当を確実にもらうには


解雇予告手当をもらえないケースに該当しない限りは、解雇予告手当をもらえるということです。
例えば、正社員だからもらえる、パートだからもらえないということはないのです。

では、解雇予告手当を確実にもらう方法を確認していきましょう。

(1)解雇で退職したという証拠を確保する

解雇予告手当をもらうには、解雇という理由で退職したという証拠がなければなりません。
具体的には、会社側に対して解雇理由書や解雇通知書を発行してもらう方法をとるのがよいでしょう。

(2)早めに弁護士に相談する

お一人で交渉する場合、会社側となかなか話し合いが進まないことがあります。
そういう場合は、労働問題に強い弁護士に相談すればいろいろな有益なアドバイスを受けることができます。

解雇通知書を出してもらうにしても、解雇予告手当の話をしてからでは、出し渋る可能性があります。

また、こちら側の意思表示を伝えるにしても、口頭での申し入れよりも、内容証明郵便を利用するといった方法が必要になってくる場合もあります。
そういったことも教えてくれるでしょう。

(3)労働基準監督署を味方につける

解雇予告手当の不払いは、法律違反です。
事業所を監督する役所は労働基準監督署ですから、そちらから、会社に対してきちんと解雇予告手当を払うように指導してもらう方法も考えられます。

まとめ

なかなかなじみが薄い解雇予告手当ですが、事前にしっかりと知識を身に着けておくことで、万が一の解雇予告に対しても慌てることなく、適切な手が打てることでしょう。あなたのお役に立てれば幸いです。

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