画像が勝手に使われている!著作権や肖像権が侵害されている際の対処方法

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ネットを利用していると自分の姿が映っている画像や自分が撮影した写真などが勝手に使われていることがよくあります。

また、ネット上ではなくチラシや看板などに自分が描いたイラストなどが使われる可能性もあります。

このように、画像が勝手に使われている場合、著作権侵害や肖像権侵害が起こっているのでやめさせる必要があります。

今回は、ネットや実生活の中で画像やイラストなどが勝手に使われている場合の対処方法を解説します。

1.ネット上でありがちな権利侵害


ネットを使っていると、画像の盗用が非常に頻繁に発生します。
ネット上では、他人がアップロードしている写真を簡単にコピーしたりダウンロードしたりすることができるからです。

たとえば、ネット上のSNSにアップしていた画像が、勝手に他人のブログに転載されることもありますし、知らない間にまとめサイトに使われる例もあります。

このような場合、自分の管理が届かなくなるため、放っておくとどのような方法で悪用されるかがわかりません。
特に、自分や家族の姿が映っている写真などが拡散されると非常に心配ですから、早く食い止める必要があります。

2.画像が勝手に使われる場合の権利侵害


自分が移っている写真や撮影した画像などが他人に勝手に使われている場合、どのような権利侵害があると言えるのでしょうか?
この場合、問題になるのは著作権と肖像権という2種類の権利です。

(1)著作権とは

著作権とは「著作物を独占的に利用できる、排他的な支配権」です。

そして、著作物とは「人の思想や感情を創造的に表現したものであり、文芸や学術、美術や音楽の範囲に属するもの」(著作権法2条1項)とされています。

具体的には、以下に記載するようなものが著作物として保護されます。

  • 小説や脚本、論文など
  • 音楽
  • ダンスや無言劇
  • 絵画や版画、彫刻などの美術
  • 建築
  • 地図や図表、模型など
  • 映画
  • 写真
  • プログラム

上記のように「写真」も著作物として保護されるため、写真の撮影者には著作権があります。

そこで、自分が撮影した写真が勝手に使われた場合、著作権侵害となります。
著作権に関しては、自分が写っているかどうかは関係ありません。

人ではなくものや風景などの写真であっても思想や感情の創造的な表現である限り、著作権による保護が及びます。

ただし、著作物に関しては「引用」することが認められています。
そこで、ネット上に投稿した画像が「引用」されているだけの場合には、著作権法違反を問うことができない可能性があります。

(2)肖像権とは

次に、肖像権を確認しましょう。
肖像権とは、自分の姿を無断で描かれたり撮影されたり、公開されたりしない権利です。

著作権とは異なり、法律上明確に規定されているものではなく、判例上認められている権利です。

写真の中でも「自分が写っている写真」のみに肖像権が及びます。
そこで、「自分が撮影した写真」であっても、自分が写っていないものは肖像権によって保護されません。

たとえば、家族と一緒に撮影した写真をネット上にアップしているときに、誰かが勝手に写真を転載していたら自分や家族に対する肖像権侵害が起こっていると言えます。

また、肖像権は、撮影や公開のたびに必要です。
たとえば「写真を撮影しても良いよ」と友人に言って写真撮影を許可したとしても、ネット上へのアップロードを許していない場合があります。

このとき、友人が「写真撮影は許してもらったから、ネットへのアップもOKだろう」と考えてアップすると肖像権侵害になります。

3.著作権と肖像権の違い


それでは、著作権と肖像権はどこが違うのでしょうか?
異なる点を確認していきましょう。

(1)明文上の権利かどうか

まず、明文上の権利かどうかが違います。
著作権は、著作権法という法律によって明文上規定されています。

そこで、権利内容も比較的明確です。
これに対し、肖像権は明文上の規定のない権利です。

そこで、権利内容が不明確になりやすく、侵害されたときにとりうる対処方法も著作権侵害の場合よりも少ないです。

(2)対象が本人かどうか

次に、画像の対象が本人かどうかという違いがあります。
著作権の場合、撮影した写真そのものが著作物として保護されるので、撮影対象が撮影者本人である必要はありません。

動物や風景、第三者を写した写真であっても、著作物として保護される可能性があります。
写真ではなくイラストやロゴでも、個性的なものであれば著作物として保護されます。

これに対し、肖像権が保護する対象は権利者本人の容貌です。
そこで、肖像権侵害が起こるのは対象写本人が写っている画像のみです。

自分が写っていない風景写真や動物の写真、家族や友人の写真には肖像権は及びません(ただし、写っている家族や友人に対する肖像権侵害の問題はあります)。

単なるイラストや絵には肖像権は及びません。

(3)創造性の必要性

創造性の要否についても、異なります。
著作物と言えるためには、創造的に表現されていることが必要です。

撮影した写真や画像に創造性がない場合には、著作物性は否定されてしまいます。

これに対し、肖像権の場合には創造性は関係ありません。
自分の姿が勝手に写されていたら、どのようなものでも肖像権による保護が及びます。

(4)引用の可否

著作物の場合、「引用」の要件を満たしていたら、他サイトに転載することが許されます。
この場合、著作権侵害による主張は不可能です。

これに対し、肖像権は「引用」によっても無断利用が認められません。

そこで、自分が写っている写真が勝手に使われている場合には、相手が引用のために引用元を記載したり引用部分を明確にしたりなど工夫をしていても、肖像権違反となります。

(5)損害賠償請求の容易さ

著作権や肖像権を侵害されたときには、相手に対して損害賠償請求できますが、その容易さについては2つの権利に違いがあります。

著作権の場合、損害額については推定規定がおかれているので、比較的楽に損害賠償を行うことができます。

これに対し、肖像権の場合、そういった救済措置がないため民法の原則通り、請求者がすべての立証をしなければならず負担が重いです。

(6)刑事罰があるかどうか

著作権は、明文上の権利であり、罰則が規定されています。
そこで、著作権を侵害すると罰則が適用される可能性があります(著作権法119条)。

これに対し、肖像権は明文上の権利ではないため侵害が起こっても刑事罰の適用はありません。
民事的な差し止めと損害賠償請求しか認められないこととなります。

4.権利侵害されないための予防方法


ネット上などで著作権や肖像権などの権利侵害を受けないためには、どのような予防措置をとれば良いのでしょうか?

(1)画像を安易にアップロードしない

まずは、自分のブログやSNSであっても盗用されたくない画像は載せないことです。
特に、自分や家族の姿が写り込んでいる画像が盗用されると、拡散を止めることが難しくなるので注意が必要です。

(2)友人・知人に撮影を認めない、アップロードをさせない

また、友人や知人に写真やビデオの撮影を認めないことも予防策となります。
親しい友人などで、写真撮影を認めるときには「ネットにはアップしないこと」を約束してもらいましょう。

(3)交際相手との性的な写真は撮らない

交際している人がいる場合にも注意が必要です。
一緒に撮影した写真や性的な写真を別れた後に悪用される被害が相次いでいるためです。

交際中はどうしても気を許してしまいがちですが、性的な写真などは撮らないことが身を守ることにつながります。

5.著作権侵害が行われた場合にできること


著作権侵害が行われた場合、どのようなことができるのかを確認しましょう。

まずは、差し止め請求ができます。
相手が勝手にネット上に画像を転載している場合に、それを辞めさせることができるということです。

次に、損害賠償請求をすることができます。
著作権侵害が起こったら、被侵害者には損害が発生すると考えられるためです。

著作権法に、損害額の推定規定があるので比較的簡単に損害額の計算をすることができます。

また、刑事告訴をすることも可能です。
著作権の侵害行為に対しては、著作権法によって罰則が適用されるためです。

ただし、著作権法違反は親告罪ですから刑事告訴をしない限り、相手に刑罰が適用されることはありません。

そこで、相手を処罰してほしい場合には、刑事告訴をすることで処罰意思を明らかにしなければなりません。

6.肖像権侵害が行われた場合にできること


肖像権侵害が行われた場合にも、著作権侵害の場合と同様、差し止め請求と損害賠償請求ができます。
ただ、損害賠償請求をするとき、損害額は自分で立証する必要があります。

また、肖像権侵害に対しては、刑事罰が制定されていないため刑事告訴することはできません。

7.ネット上で権利侵害された場合の対処方法


SNSやブログ、掲示板など、ネット上に画像が転載されて著作権や肖像権の侵害を受けた場合には、まずは、盗用した犯人を特定しなければなりません。

こういったサイトでは、匿名で投稿が行われることも多いためです。

そこで、まずは投稿が行われているサイトの管理者へと連絡して発信者情報開示を受け、判明したプロバイダに対し改めて犯人の情報開示を請求するという、2重の手間をかける必要があります。

そのために、裁判所で仮処分や訴訟等の手続きが必要になることも多いです。
こうして犯人が特定されたらようやく相手に対し、差し止めや損害賠償、刑事告訴などの手続きをとることができます。

また、サイト管理者に対し画像の削除請求をする必要もあります。

8.チラシや看板などで権利侵害された場合との比較


これに対し、ネット上ではなく実生活におけるチラシや看板などによって画像の盗用をされた場合には、チラシや看板を作成した人や頒布・掲示している人に対し、差し止めや損害賠償、刑事告訴などを行います。

これらのケースでは、ネット上での権利侵害よりも侵害者を特定しやすいです。
実社会では、匿名でチラシ配布や看板の掲示をしていることが少ないためです。

そこで、犯人特定のために裁判をする必要はなく、請求する手続きは楽であることが多いです。

また、チラシや看板を目にする人は限られているので、ネット上ほど広く拡散するものでもありません。
侵害が起こっていることに気づいたら、早めに必要な手続きをとると良いでしょう。

まとめ

今回は(主に)ネット上において、画像が盗用された場合の著作権侵害や肖像権侵害について解説しました。

現代のネット社会においては避けがたい問題です。
今後、ネットを利用するときの参考にしてみてください。

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