親の借金を相続放棄する方法を分かりやすく解説

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もし、親が借金を背負ったまま亡くなったら…

こうした心配をされたことのある方は多いのではないでしょうか。

ご安心ください、相続人だったとしても絶対にマイナスの財産(借金)を引き継ぐという義務はありません。

そこで今回は、相続で借金を背負わなくてすむ方法についてご説明いたします。

ご参考になれば幸いです。

※この記事は2017年5月29日に加筆・修正しました。

1.親の借金も相続する?相続財産の範囲について

そもそも、親が亡くなるなど相続が発生すると以下に述べるようなプラスの財産もマイナスの財産もすべて相続するのが原則です。

(1)プラスの財産

預貯金や不動産などです。
一般的に「相続」といって想起するのはこちらでしょう。

なお、生命保険に関しては受け取る人の個人の財産になります。
ですので、例えば子供が親の保険金を受け取り人として決められていれば、当然子供の権利なので受け取ることが可能です。

保険金を受け取る人が決められていなければ「受取人の指定のないときは、被保険者の相続人に支払う」という内容の約款がある場合は自己の権利として当然、生命保険金を受け取れます。

(2)マイナスの財産

個人的な借金やローン、経営していた会社の保証人になっていた場合の保証債務、税金の支払債務などです。

なお、保証債務については一部例外があり、企業に社労する労働者が不正な行為などで企業に損害を与えた場合に、その損害を補償する「身元保証契約」や企業が継続的な取引を行う際に、限度額と期間が決められていない不特定の債務に対する保証を行う「信用保証契約」ですが被相続人個人の信用により契約を結んだものだけなので、具体的にいくらという債務が生じていないから、そもそも相続すべき債務にはなりません(ただし、これらの契約に基づいて具体的な債務が発生していれば相続すべき債務になる)。

2.親の借金を相続しないための方法は?


以上で述べたように、マイナスの財産も相続の範囲に含まれるため、何もしないままでは親の借金を相続することになります。

そのため、親の借金がプラスの財産を超えているのであれば相続によって負債が増えてしまいます。
こうした状況を避けるための手続きを「相続放棄」と言います。

(1)相続放棄とは

遺産を受け取る権利のある人が相続開始による包括承継の効果を全面的に拒否する意思表示のことです。

意思表示をすることにより、法律上はじめから相続人でならなかったものとされるので、もちろん親の借金は引継がずに済みます。

相続放棄の手続き上注意する点として、相続の開始を認知した時点から3ヶ月以内です。
財産の調査には時間がかかりますので期間をしっかりと把握しましょう。

財産の調査を行った後でも、未だに財産を相続するか決められない場合には家庭裁判所に申し立てをして期間を延長することが可能です。

また、特例として期間が過ぎても裁判所が相続放棄を認めてくれる場合があります。
相続をする人が借金の存在を認知することができなかった場合です。

(2)限定承認という方法も

法律上、プラスの財産の範囲内でのみ借金を返済するという「限定承認」という手続きも存在します。

ですが、限定認証を行う場合は相続人全員の許可が必要になります。
ですので、全員の協力が得られないと申立てが困難になる可能性があります(他方、相続放棄は単独で可能)。

3.相続放棄をした方がよい場合とは?

(1)まずは財産調査

プラスの財産をマイナスの財産が上回るようであれば、相続放棄をした方が良いでしょう。
実際問題、親の財産を把握しておらず借金と財産がどのくらいあるのか知らない方がほとんどだと思います。

そこでまず、財産調査をする必要があります。
その主な調査方法は、以下のとおりです。

①プラスの財産

不動産(土地・建物)

固定資産税の通知書や登記等を見てみましょう。
また、どの程度あるか分からない場合には市区町村役場で「名寄せ」(固定資産税が払われている不動産一覧表のようなもの)を取得するのも手です。

借地権、借家権、賃借権、地上権、温泉権等

契約書や登記簿謄本を見てみましょう。
親が生前に取引していた不動産業者に問い合わせてみるのも手です。

現金、小切手、預貯金等

自宅や所有していた建物内を徹底的に調査しましょう。
通帳があれば記帳してみましょう。

カードだけ見つかった場合には、金融機関に問い合わせ残高証明書や名寄せを取得しましょう。
その他、預貯金等がありそうな金融機関もしらみつぶしに聞いてみると良いです。

株式、公社債、投資信託等の有価証券

口座の記録、通帳、株券があるか調べましょう。
配当のお知らせ等が届くこともあるので、郵便物に気を配っておくといいです。

宝石、貴金属、美術品、自動車等の動産

自宅や別荘、勤務先、入院先、貸金庫等を調べて回りましょう。

ゴルフ会員権

自宅や別荘、勤務先、貸金庫等を調べてみましょう。
会員証が見つかるかもしれないです。

②マイナスの財産

借金やローン

信販会社や消費者金融等から請求書を見てみましょう。
また、住宅ローン等については、担保を付けていることが多いので不動産登記の抵当権記載から調査するのも手です。

未払いの税金(固定資産税、所得税、住民税等)

税務署から督促状が来ているはずです。

入院費、治療費

入院先や通院先の病院に問い合わせてみましょう。

保証債務

郵便物に請求書がないか、確認してみましょう。

(2)相続人の調査・確定

相続放棄をすると、自分が相続しなかった分他の相続人の相続分が増えます。
この場合で、相続財産にマイナスの財産が多ければ、相続放棄をしなかった者が抱える負債が増えることになります。

そのため、相続放棄を1人で行うとその他の相続人と後々揉める可能性もあります(実際、相続放棄は相続人全員で行うことが多い)。

念のため相続人が誰なのか、調査しておいた方がいいでしょう(知らない兄弟がいるような事態は、ままあることである)。
相続人を調査する場合は、被相続人の戸籍を使用しますので準備しましょう。

(3)相続放棄のが良い場合

調査の結果、借金が優る場合です。
その場合、他の相続人とも話し合いを持った方が後々のもめ事を避ける意味でベターです。

4.相続放棄の手続きは?


それでは、実際に相続放棄をするための手続をご説明いたします。
しっかり、家庭裁判所に申し立てをする必要があります。

相続放棄を申立ててから、約1週間から10日程度で家庭裁判所から申し立てた人へ、相続放棄に関する照会書が送られてきます。

照会書に回答して送ってから、約7日〜10日ほどで家庭裁判所から回答者に相続放棄申述受理通知が届きます。
これで、相続放棄が完全に認められたこととなります。

相続放棄の手続に関しては「相続放棄とは? 相続のタイミングで借金を負わないために知っておくべきこと」で詳しく解説しています。

まとめ

相続で借金に苦しむことを避けるために今回の記事が参考になれば幸いです。

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