離婚後の親権者の決め方と親権を確実に得る方法

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離婚する夫婦に未成年の子どもがいる場合、大きな問題になるのが親権をどちらが持つかということではないでしょうか。

子どもの親権を持つ「親権者」が誰になるかは、夫婦が離婚する前に決めておかなければいけない事項です。

夫婦間に争いがなく協議離婚した場合でも親権者を決めて記入していなければ、役所は離婚届を受理してくれないので離婚は成立しません。

今回は、離婚の際に親権者を決める方法と親権を得るための方法についてご説明いたします。

1.まずは親権について知っておく

(1)親権とはなにか

親権とは、未成年者の子どもの監護・養育や財産の管理を子どもの代理として法律行為をする権利や義務を指します。

未成年の子どもは親の親権のもとにあり、親が結婚している場合は父親と母親が共同して親権を行使するのが原則です(民法818条3項)。

両親が離婚する場合は、共同して親権を行使できないため離婚する際には父親か母親のどちらか一方を親権者として決めなければいけないのです。

夫婦が協議離婚をするケースでは協議の中で親権者を決めますが、裁判所で裁判離婚をするケースでは裁判所が親権者を決定することになります(民法819条2項)。

また、一度親権者が決まった場合でも親権者を変える必要性が認められる場合は、家庭裁判所の審判によって親権者の変更が認められる場合があります。

(2)親権の種類と内容とは?

親権は、その内容に応じて子どもの世話をしたり教育を行う権利と責任がある「身上監護権」と子どもの財産を管理し代理人として法律行為をする「財産管理権」の2つに分けられます。

具体的には、次のような行為が親権に含まれます。

①身上監護権

  • 監護、教育権(子どもを見守ったり教育する親の権利)
  • 身分行為の代理権(氏の変更や未成年者の婚姻の同意など、子どもが身分法上の行為をする際に親が同意したり代理する権利)
  • 居所指定権(子どもがどこに住むかを指定する親の権利)
  • 懲戒権(子どもをしつけする親の権利)
  • 職業許可権(子どもが職業に就く際に親が許可する権利)

②財産管理権

  • 包括的な財産の管理権(子ども名義の財産の管理や、手当てを受給する際の手続きなど)
  • 財産に関する法律行為の代理権、同意権(子どもが売買契約をした場合に親が同意する権利)

(3)親権と監護権を分けた場合の注意点とは

身上監督権と財産管理権は、分けて考えないのが通常ですが離婚の場合は「親権者」とは別に「監護者」を決めて身上監護権だけを監護権者が担当することも可能です。

つまり、親権者と監護権者を分けた場合、親権を取っても監護権がなければ子どもを引き取れないこともあるのです。

具体的には、親権者と監護権者を分けると過去の裁判例や先例では具体的な権利は次のように分けられることになります。

①親権者が持つ権利

  • 子どもの財産管理権
  • 15歳未満の子どもの養子縁組
  • 未成年の子どもの婚姻の同意
  • 監護権者への助言や指導

②監護権者が持つ権利

  • 監護、教育権
  • 居所指定権
  • 懲戒権
  • 職業許可権

上記の「居所指定権」が子どもを引き取る権利にあたるため親権を取っても子どもと同居できない可能性が生じます。

なお、氏の変更については親権者ができるという判例と監護権者ができるとする判例の双方があります。

親権者と監護権者を分けるメリット、デメリットについてはこちらで詳しく解説しています。

2.親権者を決める手続きの流れとは

(1)協議離婚の場合の親権の決め方

夫婦が離婚する場合、未成年の子どもがいるときは必ず親権者を決めなければいけません。

夫婦が協議離婚する場合は、父親と母親の話し合いによって親権者を決定します。
双方が親権を主張するなど話し合いでは決められない場合は、調停の申し立てを裁判所に行い親権者を指定してもらいます。

(2)話し合いで親権が決まらない場合は、調停で親権を決める

当事者の話し合いではどちらが親権者になるか決められない場合、離婚自体がもめているようなケースでは裁判所に調停を申したて離婚調停の中で行うことができます。

離婚のその他の内容については合意ができていて、親権だけ争っているような場合は「親権者指定の調停」といって親権に特化した調停を行うこともできます。

ただし、調停はあくまでも第三者の調停員を間に入れて話し合いを行い解決を目指すものなので、常に結果が決まるとは限りません。

親権者の指定について調停で合意に達することができなかった場合、自動的に審判手続きに移り家庭裁判所で親権者を決めてもらうことになります。

離婚調停で親権を獲得する方法についてはこちらで詳しく解説しています。

(3)調停で親権が決まらない場合は、家庭裁判所で親権を決める

裁判所が親権者を決めることになった場合、裁判所は調査官を派遣して自宅や子どもが通学する小学校などを訪れたり、子どもから話を聞くなどして親権者を決めるための調査を行うことがあります。

それに加えて、家庭裁判所では「子の利益」が親権者を決める際に考慮されます。
「子の利益」は、以下のような要素をもとに検討されます。

①父母の事情

  • 親の年齢や、心身の健康状態
  • 子ども監護する意欲
  • 現在、将来にわたり子どもを監護する能力
  • 時間的余裕
  • 収入、資産といった経済的事情や実家の援助の有無
  • 生活環境や住宅事情など

②子どもの事情

  • 子どもの意思(15歳以)
  • 子どもの年齢や性別
  • 子どもと父母との関係
  • 子どもの現在の生活環境や、環境の変化による影響
  • 兄弟姉妹との関係性

なお、離婚原因を作った有責配偶者側も親権を取れる可能性があります。
離婚原因と親権は別々に考えることになっているので、親権の獲得はどちらが親権を持つ方がよいかという観点から判断されるためです。

(4)「子の利益」を判断する際の4つの原則とは

親権者を決める際に考慮される「子の利益」は、上記のような父母の事情と子どもの事情をもとに検討されますがこれに加えて判断の基準となる4つの原則があります。

4つの原則は、過去の裁判例などが基準となっているので個別の事情によっては原則と異なる結論が出ることはもちろんあります。
ただ、「子の利益」を判断する際の代表的な基準なので参考にしてみてください。

①継続性の原則

これまで子どもを監護してきた人を優先し、現状維持を重視する原則です。
親の事情で、子どもの学校生活や友人関係などの環境を変えない方が子どものためになるという考え方に基づいています。

②兄弟姉妹不分離の原則

子どもが複数人いる場合、子ども一人一人に親権者を決めていきます。
ただ、兄弟姉妹がいる場合一緒に生活をした方が子どもの人格形成の面から望ましいという考え方に基づいて、一方の親に親権を統一した方がよいとする原則です。

③母親優先の基準

子どもの年齢が低い場合、母親が優先されるという考えですが近年は以前ほど重視されなくなっています。

④子どもの意思の尊重の原則

審判や訴訟においては、子どもが15歳以上の場合、子どもに意見を聞くことは義務です。
子どもの意見だけで親権者が決まるわけではありませんが、15歳以上の場合は子どもの意思が重視されるのが原則です。

3.親権者を目指す手続きの流れとは

(1)母親優先の原則でも父親が親権獲得を目指すためには

親権を決定する際の判断基準である「子の利益」には、母親優先の原則が適応されます。

近年は、男女平等の原則や育児に参加する父親の割合が増えたことに伴い、昔ほど重視されなくはなってきたとはいえ特に子どもの年齢が低い場合はまだ母親は有利と言えます。

具体的には、

①0歳から10歳

母親が親権者に指定される可能性が高い

②10歳から15歳

父親と母親のいずれかが親権者になるのに優劣が付けられない場合に、母親が優先される可能性が高い

③15歳以上

子どもの意思が重視され、審判等では意見を聞くことが義務とされる

④20歳以上

成人に達すると親権者の指定は不要

という分類を目安とすることが可能です。

なお、母親が妊娠中に離婚する場合は、原則として母親がそのまま親権者になりますが夫が事後的に裁判所に親権の獲得を申し立てることは可能です。

これは、親権には子育てが重視されるため、子の利益にとっては子育てに詳しい母親が優先されるのが自然とされるからです。

ただし、子どもが幼い場合の父親でも子育てについての計画と責任を明らかにして将来にわたって養育するプランを明確に示すことができれば、父親でも親権を獲得することは不可能ではありません。

また、子どもが一定の年齢に達すれば、裁判所も子どもの意見を尊重するので親子関係も親権の決定に影響すると言えるでしょう。

(2)収入が不安定でも親権獲得を目指すためには

親権を決める際に、考慮される父母側の事情のひとつに経済力があります。
しかし、収入がない・収入が不安定というだけで親権が認められないわけではありません。

親権の獲得には、親権者としての主張や子育ての計画性や子どもの意思など、様々な事情が考慮されます。

そこで、養育費や財産分与など離婚に伴う他の財産問題を解決し、実家や行政機関のサポートを受けることができる体制を整えることで親権獲得を目指しましょう。

とはいえ、無収入では子どもを育てることはできません。
現在無収入であっても将来に向けて収入を得る手段や一人親の支援制度のリサーチ、働きながら子育てを可能にする計画などを明確に示すことで親権の獲得を交渉していくことが大切です。

(3)離婚後の生活環境を整えて親権獲得を目指すには

親権の決定に重視される「子の利益」の判断基準のひとつに現状維持の原則、つまり子どもの生活環境の維持があります。

そのため、離婚したあとの住居の確保と子育て体制の確保は親権を獲得する上で重要な要素になります。

具体的には、まず離婚後の住所を確定させることは不可欠と言えます。

加えて、親権を獲得して働きながら子育てをする場合には託児所が利用できるかどうか、行政のサービスを利用できるかどうかといった支援体制をリサーチしておくことが重要です。

特に、子どもの年齢が12歳以下の場合は、働いている間の子育てを頼むことができる体制を整えておくことは特に大きな意味を持ってきます。

これらの内容を明確にして、子育てが継続的にできる計画性を示すことで親権の獲得を交渉していくことが重要です。

まとめ

今回は、親権を獲得する方法についてご説明いたしました。
子どもがいて離婚を考えている方や離婚することが決まっていてどうしても親権を取りたい方は、今回の記事を参考にしてください。

親権を獲得する交渉では、自身が親権者としてふさわしいことをしっかりと示していく必要があります。
親権の獲得でお悩みの場合は、経験豊富な弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

また、弊社では離婚問題に強い弁護士をご紹介しておりますので、是非ご活用ください。

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