離婚すると住民票や戸籍はどうなるの?変更方法や期日などを解説

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

役所に離婚届を提出すれば、離婚は成立します。
しかし、離婚自体が成立したとしても、それで一安心というわけにはいきません。

特に女性の場合、離婚によって婚姻前の苗字(法律上は「氏」といいます)に戻る場合や未成年の子どもの親権者となり、子どもを養育していく場合も多いことから、離婚後にも様々な手続をしなければならず、各種の手続には戸籍や住民票が必要になります。

それらの手続のために戸籍や住民票を取りに行って初めて必要な手続をしていなかったことに気付いたり、まだ新しい戸籍や住民票が発行できないと言われたりして、結果的に各種の手続に遅れが生じてしまうことも少なくありません。

そこで今回は、離婚後の戸籍、住民票についてご紹介したいと思います。

※この記事は2017年4月11日に加筆・修正しました。

1.離婚後の戸籍

(1)変更の手続が必要か?

離婚をすると、夫婦のうち戸籍筆頭者(婚姻時にその人の氏を名乗ることにした者。大半の夫婦の場合は夫)はそれまでの戸籍に残り、戸籍筆頭者ではない方(大半の夫婦は妻)が、婚姻時の戸籍から除籍されます。

離婚によって除籍される者は、婚姻前の親の戸籍に戻るか自身を筆頭者とする新しい戸籍を作るかのいずれかを選択することになります。

離婚届「婚姻前の氏に戻る者の本籍」を記載する欄がありますので、どちらを選ぶかをよく考えて記載するようにしましょう。

また、離婚後も婚姻時の氏の使用を続けたい場合には、離婚した日から3ヶ月以内に「離婚の際に称していた氏を称する届」を提出する必要があります。

この場合には、婚姻前の親とは氏が異なることになるため親と同じ戸籍には入れません。
ですから、必ず新しい戸籍を作る必要があります。

離婚にあたっての戸籍については以上のとおりで、それ以外に特別な手続は必要ありません。

(2)いつから戸籍をとれるのか?

離婚後に、離婚をした事実を反映した戸籍が必要になることがあります。

たとえば、離婚後に婚姻前の氏に戻った元妻が未成年の子どもの親権者である場合に、子どもの氏を元妻と同じ氏にするため、家庭裁判所に対して子どもの氏の変更許可を申し立てる場合や年金事務所で年金分割の手続をする場合などが考えられます。

離婚時に子どもの氏の変更や年金分割がすでに予定されている場合には、離婚届を提出した後、その場で離婚の事実を反映した新しい戸籍を取得することができれば、何度も役所に足を運ぶ時間と手間を省くことができると考える方もいらっしゃるでしょう。

しかしながら、自治体にもよりますが、離婚届を提出したその日のうちに新しい戸籍謄本を取得することはまずできないと考えた方がいいでしょう。

一般的には、離婚届を提出してから数日~1週間程度で離婚後の戸籍謄本を取得できる場合が多いようです。

2.離婚後の住民票

(1)移動の手続が必要か?

戸籍と住民票は別物ですが、離婚届を提出すると離婚届を受理した自治体が住民登録をしている自治体へ通知することになっており、住民票上の苗字が自動的に離婚後の苗字に変更されます。

ですから、離婚前に別居しており、その間に住民票を移していたような場合は、離婚届の提出以外に特別な手続きは必要ありません。

これに対し離婚成立までに住民票を移していなかった場合には、次のような手続が必要となります。

①離婚をして、妻(および子ども)がそれまでの家を出る場合

この場合、離婚届の提出以外に転居届(同一の市町村内で住居を移す場合)や転出届(他の市町村へ住居を移す場合)を提出する必要があります。

②離婚をして、夫だけがそれまでの家を出る場合

この場合、夫が転居届または転出届を提出する必要があります。
これによって、夫だけが住民票を移すことになります。

世帯主であった夫が住民票を移したことで、新たな世帯主を決める必要が生じます。
そのため、元妻が世帯主変更届を提出する必要があります。

なお、夫婦のみで子どもがいない場合は離婚により夫が住民票を移すと残るのは元妻1人になるため、当然に元妻を世帯主とする住民票になります。

そのため、この場合は特別な届出は必要ありません。

(2)いつから住民票をとれるのか?

離婚によりそれまでの家を出た場合、運転免許証や、金融機関、クレジットカードなどの住所変更の手続が必要となりますが、そのためには新しい住民票を取得しなければなりません。

住民票上の住所地のある市町村に離婚届を提出した場合には、離婚届のチェック等が終われば、その日のうちに離婚の事実を反映した新しい住民票を取得することが可能です(もっとも、窓口の受付時間終了間際に提出したような場合には難しいかもしれません)。

これに対し、住所地以外の役所(本籍地の役所など)に離婚届を提出した場合、離婚届を受理した役所から住所地の役所へ通知(郵送による)をすることになります。

ですから、本籍地の住所地に離婚届を提出し、その日のうちに住所地に役所に行っても新しい住民票を取得することはできません。

離婚届を受理した役所が郵送の手配をするのにかかる時間、郵送にかかる時間、住所地の役所が郵便を受け取ってから事務処理をする時間などがかかりますので、通常は離婚届の提出から数日~1週間程度かかると思われます。

このような理由により離婚届を提出する際は、急いで住民票をとる必要があるかなどといった事情を考慮してどこの役所に提出するかを決める必要があるといえます。

(3)住民票をいつまでに移さないといけないの?

戸籍の場合、離婚の際に離婚によって元の氏に戻る者が婚姻前の戸籍に戻るか、新しい戸籍を作るかを選ぶことになっているので戸籍をそのままにして離婚するということはありません。

これに対し、住民票の場合、離婚届の提出により苗字の変更はなされますが、何もしなければ住民票が自動的に移転するわけではありません。

したがって、離婚により転出、転居した場合には、転出届、転居届などの提出が必要になるのですが、これらの届出は転出または転居をした日から14日以内にしなければならないと定められています(住民基本台帳法22条、23条)。

(4)住民票を移さないとどうなるの?

正当な理由がなく転出または転居をした日から14日以内に届出をしないときは、5万円以下の過料に処すると定められています(住民基本台帳法52条2項)。

この規定は厳格には適用されておらず、多少の期間の徒過であれば実際に罰則が課されることは少ないようですが、法律違反にはかわりないので期間内に届出をするようにしてください。

また、法律上の罰則以外にも住民票を移さないことによるデメリットがいくつか考えられます。

たとえば離婚をして子どもとともに引っ越しをした場合、子どもの学校や保育園を転校・転園する必要が生じることがありますが、その際に住民票を移していないと転校先・転園先から受け入れてもらえないおそれがあります。

また、離婚後の母子家庭には児童扶養手当という公的扶助の制度がありますが、離婚後も住民票を移さないと、父と生計を同一にしているとみなされ児童扶養手当を受給することができないおそれもあります。

まとめ

今回は、離婚後の戸籍と住民票についてご紹介しました。
離婚をお考えの方は離婚届の提出後すみやかに必要な手続をとれるよう、ご自身にどの手続が必要かを事前によく確認しておいていただければ幸いです。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

Twitter・RSSでもご購読できます。