雇用契約書とは?その意味と重要性、ひな形をご紹介!

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会社が従業員を雇い入れる場合などには雇用契約を締結しますが、その際「雇用契約書」という契約書を作成することがあります。

雇用契約書とはどのようなものなのでしょうか?

雇用契約書の作成にどのような意味があるのかも知っておくと役立ちます。

ときには面倒なのでいちいち雇用契約書を作成しないケースもありますが、雇用契約書を作成しないとどのような問題が起こりやすいのかも抑えておく必要があります。

また雇用契約書を作成することもありますが、その場合、自分で一から作るのは大変なのでひな形があると便利です。

今回は、雇用契約書の意味を説明し、雇用契約書のひな形と契約書の作り方のご紹介もしますので、是非とも参考にしてみてください。

この記事は2017710日に加筆・修正しました。

1.雇用契約書とは


会社が従業員を雇い入れる場合などには雇用契約書を作ることが多いですが、雇用契約書とは、雇用契約の内容を明らかにした契約書です。

そして、雇用契約とは、雇用者が従業員を雇い入れる場合に、雇用者と従業員が雇用の条件について定める契約のことです。
よって、雇用契約書には、会社と従業員との間での雇用条件が記載されていることになります。

雇用契約を締結する場合の当事者は「会社」と「個人」という関係である必要はありません。

個人事業者が雇用者となって労働者を雇い入れる場合もありますし、この場合にも雇用契約書は作成されます。

雇用契約書は、将来会社と従業員が賃金改定や解雇などの問題でトラブルになった際に解決方法を示してくれることもある大変重要な契約書です。

小さい会社などの場合には、面倒なのでいちいち雇用契約書を作成しないケースもありますが、将来のトラブル予防などのためには是非とも作成しておくべきです。

2.雇用契約書の必要性


雇用契約書は、具体的にどのような意味で必要になるのでしょうか?

以下では、雇用契約書の必要性についてポイントごとにご説明します。

(1)会社と従業員のトラブルを防止できる

会社と従業員との間では、雇用条件などを巡ってトラブルになることがよくあります。

たとえば、時給の金額や賃金の支払い条件、賞与の計算方法などについて、会社が以前と異なることを言い出した場合などに従業員が苦情を言って争いになることがあります。

また、会社が賃金を減額してきた場合に従業員が受け入れないとやはりトラブルが起こります。
従業員の態度に問題があると言って会社が従業員を解雇した場合にも、従業員が解雇の効力を争ったらやはりトラブルが起こります。

このように、会社と従業員の間でトラブルが起こった場合には、雇用契約書にその問題の解決方法が示されている場合があります。

たとえば、時給や賃金、賞与の計算方法を明示していればその内容に従って解決できますし、賃金を減額できる場合や解雇の条件についても定めがあれば問題は起こりません。

このように、雇用契約書があると従業員と会社との間のトラブル防止になりますし、実際にトラブルが起こった場合にも解決手段として利用できます。

(2)法律上明示が必要な項目を表示する

雇用契約書には、労働基準法によって労働者に対して明示すべきとされている内容を明示する役割もあります。

労働基準法によると労働契約の期間や更新について、労働者の就業場所や労働者が行う業務内容について、さらに始業時刻や終業時刻、休憩時間や休暇休日、賃金、退職、解雇などの条件についても会社は従業員に明確に示さなければならないとされています。

また、退職手当や賞与、勤続手当、最低賃金額や労働者の安全及び衛生、職業訓練や災害補償、休職などについても、定めがあれば明示が必要です。

そこで、雇用契約書にこのような内容を記載しておけば、会社はきちんと労働基準法を守っていることになります。

明示の方法は雇用契約書以外の方法でもかまいませんが、雇用契約書にはっきり記載しておけば、後で労働者から「そのようなことは聞かされていない」「労働条件や期間の明示を受けていない」などと言われるおそれがなくなります。

(3)雇用契約書で従業員の意識を高める

雇用契約書を作成する場合には、その内容を会社と従業員がしっかり読んだ後で納得して署名(記名)押印をします。

よって、両者ともに雇用条件や雇用におけるルールをしっかり認識できます。

たとえば、雇用契約書内に会社の独自のルールを定めておけば、その内容も従業員にしっかり理解してもらうことができます。

雇い入れる当初から社内のルールを理解してもらうことで、その後スムーズに業務に取りかかってもらうことが可能になります。

新入社員側にしてみても雇用契約書をきちんと作成し、その中に会社のルールがしっかり書かれていることで安心感がありますし、仕事への従業員の意識を高める効果もあります。

(4)雇用契約書の作成の必要性

以上のように、雇用契約書を作成するとさまざまな点で役立ちますしメリットが大きいです。

雇用契約書がないと会社と従業員のトラブル防止もできませんし、労働条件の明示をきちんとしたかなどが後から問題になることもあります。

そこで、従業員を雇い入れる場合には、雇用契約書を作成する必要性があります。

3.雇用契約書の作り方

(1)雇用契約書の作成過程

雇用契約書を作成する場合、原則的には会社と従業員が話し合ってその内容を決める必要があります。

このとき賃金や退職、解雇の条件や休日など、いろいろと決めなければなりません。
ただ、会社が従業員を雇い入れる場合、通常は個々の従業員とそれぞれ別々の内容の契約を結ぶことはありません。

全員について平等な条件で雇い入れることが普通です。

会社には就業規則やそれまでの従業員の前例などがあるので、通常はその内容に従って雇用条件を決めていくことになります。

また、雇用契約書も会社が用意していて従業員にその内容を説明し、納得してもらって双方が署名(記名)押印するという方法をとります。

このとき、従業員側が納得しなかったり疑問に感じる部分があれば、その点については再度話し合って修正することなどもあります。

(2)雇用契約書のひな形

雇用契約書を作成するとき、一から作るのは大変なのでひな形を利用すると便利です。

ひな形はそのまま使うのではなく、その会社の状況に応じて個別に修正する必要がありますが、たたき台にするには便利なので利用しましょう。

雇用契約書のひな形は以下のようなものになります。

4.雇用契約書の作り方の解説


雇用契約書のひな形があっても、これをそのまま使うのではなく個別の事情に応じて修正する必要があります。

そこで、雇用契約書の内容について理解しておく必要があります。
以下では、雇用契約書のひな形の内容を説明します。

(1)表題と前文

まず契約書の表題をつけます。
ここは「雇用契約書」としましょう。

次に契約書の前文を記載します。

ここには契約当事者の明記をします。
さらに、その後は契約当事者のことを甲乙と表記することも書いておきましょう。

前文の部分に契約の目的を記載してもかまいません。

(2)契約書の本文

表題と前文ができたら、契約書の本文を記載します。

① 目的、雇用期間、就業時間など

まずは契約の目的(雇用)を記載して、労働条件を書いていきます。
就業規則があれば、その内容に従って書き入れましょう。

そして、雇用期間や試用期間についての記載をします。
試用期間は必須ではありませんが、できれば入れておくと試用期間中に労働者の適正を見極められるので役立ちます。

次に、就業場所や業務内容も明記します。
業務内容についてはっきりしない場合には、決まっている範囲で書いておくと良いでしょう。

就業場所や業務内容が変わる可能性もあるので、必要がある場合には変更することができる旨も定めておく必要があります。

さらに、就業時間や休憩時間、休日、有給休暇についても記載します。

② 賃金と退職、解雇条件

賃金についての記載は重要です。

基本給と賞与、残業代の計算方法や給与の締め日と支払日、交通費支給の有無や金額などについて記載しておきましょう。

退職と解雇についても同じく非常に重要です。

従業員が自己都合退職したい場合の方法や、会社が従業員を解雇できる場合などについても定めておくと後でトラブルを避けやすくなります。

社員の自己都合退職の場合に何日前に会社に告知すべきかを記載します。

なお、法律上、会社が従業員を解雇する場合、従業員には30日以前に従業員に解雇の通知をする必要がありますし、もしそれをしない場合には解雇予告手当と言って、30日分以上の賃金を支給する必要があります。

また、解雇ができる場合も正当事由が認められるケースに限られ、極めて限定されるので注意が必要です。

③ 秘密保持義務

雇用契約書には、従業員の秘密保持義務も定めておく必要があります。
会社には社外に流出しては困る機密情報がありますし、大量の個人情報も管理しています。

そこで、従業員がこれらの情報を持ち出したり漏えいさせないことを約束してもらう必要があります。

そこで、労働者が業務上知った秘密を第三者に漏えいしないという秘密保持義務を負わせます。

ただし、はじめから知っていた事実や公知の事実などについては例外として、過度な負担にならないようにしましょう。

さらに、従業員の福利厚生や誠実に業務を行う義務についても記載し、最後に、契約に定めのない事項については会社と従業員の両者が協議して定めることを記載します。

これで、契約書の本文部分は完成します。

(3)契約書日付記入と署名(記名)押印

契約書の本文ができあがったら、契約書の作成日付を入れて両者が署名(記名)押印する必要があります。

契約書の日付については、契約書を作成した日付を書き入れます。
契約が開始する日付ではないので注意しましょう。

また、日付を書かないでいると、後々契約の効力にかかわってくることもあるので、必ず両者が署名(記名)押印した日程を正しく書き入れることが大切です。

また、契約書は契約を締結する両者が互いに納得をして署名(記名)押印することではじめて効力を持ちます。
片方でも署名(記名)押印していなければ契約書は無効です。

よって、契約書の読み合わせが終わったら、必ず会社と従業員が両方とも署名(記名)押印をします。

契約書が2枚以上にまたがる場合には、ページとページの間に契印をする必要があります。

契印は、会社と従業員が双方ともする必要があり、契約書に署名押印したときに使ったものと同じ印鑑で契印します。

雇用契約書は同じものを2通作成して、会社と従業員がそれぞれ1通ずつ持ち合うことになります。

これでようやく雇用契約書の作成は完了します。

まとめ

今回は、雇用契約書の意味と作り方を解説しました。

雇用契約書とは、会社や個人事業者などの雇用者が従業員を雇い入れる際に作る契約書のことで、両者の間の雇用契約の内容を明らかにするものです。

雇用契約書があると、会社と従業員との間で起こりがちな労働関係のトラブルを予防出来ますし、トラブルが起こった場合の解決手段にもなります。

雇用契約書を作成する場合、会社と労働者が話し合って合意した内容を記載しますが、通常は会社が就業規則や前例などに従って作成しておき、労働者に納得してもらって両者が署名(記名)押印することが多いです。

雇用契約書のひな形を利用する場合には、個別の事情に応じて修正することも必要になります。

雇用契約書の作成が面倒だからと言って作成せずに労働者を雇い入れると、後々トラブルが起こりやすくなります。

今回の記事を参考にして、今後従業員を雇用する場合には有用な雇用契約書を作成しましょう。

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