残業代を退職後請求できる!その方法や注意点は?

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退職後だけどまだ残業代請求できるのだろうか・・・

この記事をお読みの方にはそのようにお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか?

会社で勤務して残業をしても、残業代を出してもらえないケースがあります。

このようにサービス残業を繰り返している場合には、たまった残業代を会社に請求することができます。

しかし、会社をすでに退職してしまった場合には、後に会社に対して残業代の請求をすることができるのでしょうか。

また、退職後に会社に残業代を請求する場合、在職中に請求する場合とで違いはあるのでしょうか。

その注意点などもあれば知っておく必要があります。

さらに、具体的に会社に対して残業代を請求する場合に、必要となる資料や請求方法はどうなっているのでしょうか。

今回は、会社に対し、退職後に残業代を請求する方法について解説します。

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1.退職後も残業代を請求出来る

会社の在職中にサービス残業をしていても、そのときにはなかなか勤務先の会社に対して未払いの残業代の請求ができないことが多いです。

この場合、退職後に会社に対して残業代を請求することができるのでしょうか。

退職後に会社に残業代を請求することはできます。
退職後の残業代請求について、特に制限や規制はありません。

多くの人が実際に退職後に未払い残業代の請求をしています。

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2.在職中の請求と退職後の請求の違い

在職中に会社に対して残業代を請求する場合と、退職後に請求する場合とでは、どのような違いがあるのでしょうか。
以下で、具体的に見てみましょう。

(1)立場を気にしなくて良いので請求しやすい

会社の退職後に残業代を請求する場合には、会社に対して配慮が要らなくなります。

残業代を請求する場合、会社を相手取って請求書を送ったり、交渉したり、場合によっては裁判手続きを利用することなどもありますが、在職中に会社に対してこのような行動をとることは非常に難しいです。

このようにして会社と対立関係が生じてしまうと、その後の会社での勤務継続が困難になってしまうこともあります。
また、周囲にその噂が広まって、大変居心地が悪くなることもあるでしょう。

このように、在職中に残業代を請求することは、実際にはかなり難しい面がありますが、退職後に請求するなら、このようなことを気にする必要はありません。

以上のように、退職後に残業代を請求する場合には、立場を気にする必要がなく会社への配慮も不要になるので、残業代請求がしやすいという点に在職中請求との違いがあります。

このような理由があるので、実際に会社退職後に残業代請求する人が多いのです。

(2)退職後請求の場合には時効に注意!

会社の退職後に残業代を請求する場合には、残業代の時効に注意が必要です。
残業代の請求権は、2年で時効にかかってしまいます。それぞれの残業第が発生したときから、2年のカウントが始まります。

よって、退職後に残業代を請求する場合には、残業したときから2年が経過すると、その残業代は請求できなくなってしまいます。

もちろん時効は在職中でも進行しますが、退職後は、手続きを後回しにしている間に2年はすぐに経過してしまうので、特に注意が必要です。

退職後に残業代を請求する場合で、2年の時効期間が過ぎてしまいそうな場合には、とりあえず内容証明郵便で会社に対して残業代の請求をすると、時効の完成を6ヶ月延ばすことができます。

そして、その間に労働審判や労働訴訟を起こせば、時効を中断することができて、時効が完成することを防ぐことができます。

労働審判や労働訴訟を起こして、その手続きの中で残業代の支払いが決まると、たとえ残業代発生から2年が過ぎていても、決まった内容に従った支払を受けることができます。

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3.残業代の計算方法

退職後に会社に残業代を請求すると言っても、具体的に残業代をどのようにして計算すれば良いのでしょうか。
以下で残業代の計算方法を説明します。

(1)残業代の種類

残業代の基本的な計算方法は、その残業代の種類によって異なります。
残業代には、法内残業と時間外労働があります。

法内残業とは、労働基準法で定める範囲内の労働のことで、具体的には1日8時間、1週間に40時間以内の労働です。
これについては、割増賃金はありません。

時間外労働とは、上記の労働基準法に定める労働時間を超える労働のことです。
この場合には、割増賃金が適用されます。

また、深夜労働の場合にも、割増賃金が適用されます。
深夜労働とは、22時から午前5時までの時間の労働のことです。

割増賃金の具体的な割増率は、以下の表のとおりです。

深夜以外の労働 深夜労働
法定時間内の労働 割り増しなし 25%
法定時間外の労働(1ヶ月あたりの労働時間) 45時間以下 25% 50%
45時間を超過して60時間以下 25% 50%
60時間を超える 50% 75%
法定休日の労働 35% 50%

(2)法内残業の計算方法

残業代の計算方法について、まず、法内残業については、以下の計算式で計算できます。

法内残業の時間×就業規則等で定める1時間あたりの単価

です。

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(3)時間外労働の計算方法

時間外労働の残業代の計算方法については、基本的に、労働時間に1時間あたりの賃金をかけて、それに割増賃金をかけ算する方法で算出します。

具体的な計算式は、

時間外労働の時間×1時間あたりの賃金(円)×割増賃金率

となります。

1時間あたりの賃金は、月給の金額を1ヶ月あたりの労働時間で割り算して算出します。

具体的には、以下の計算式で計算します。

月給金額÷1か月あたりの平均所定労働時間

そして、1ヶ月あたりの平均所定労働時間は、1年間の働いた日数に一日の労働時間をかけて、それを12ヶ月で割り算する方法で計算します。計算式は、

(365日-年間所定休日数)×1日の所定労働時間÷12ヶ月

となります。
閏年の場合には366日で計算します。

よって、残業代の計算式をまとめると

時間外労働の時間×(月給金額÷(365日-年間所定休日数)×1日の所定労働時間数÷12ヶ月)×割増賃金率

となります。
閏年の場合には366日です。

少しややこしいですが、上記のステップに順番にあてはめて計算してきましょう。

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4.会社から予想される反論と対応方法

退職後に会社に対して残業代請求をする場合、会社から予想される反論があります。
以下では、それらの内容と対処方法を確認します。

(1)残業手当を支払っている

会社からの予想される反論として、まず、「残業代に代わって残業手当を支払っている」と言われるケースがあります。
「残業代は、基本給に組み込んでいるので支払い済みである」、などと言われることもあります。

この主張ように、残業代がすでに支払われているかどうかについては、その手当や基本給の計算が、本当に残業代の支払に対応しているかどうかが問題になります。

たとえば、基本給に組み込んでいるというのであれば、基本給に該当する支払と、残業代に該当する支払がはっきりと区別されているかなどが問題になります。

このような判断基準によって判断して、会社の言い分が通らない場合には全額残業代を請求出来ますし、会社の言い分にも一定の根拠がある場合でも、きちんと上記の計算式で計算した残業代の全額の支払いに足りない部分については、会社に支払い請求をすることができます。

(2)管理監督者なので残業代が発生しない

会社に残業代を請求した場合、会社から、「その労働者は管理監督者なので、残業代が発生しない」と言われることがあります。

管理監督者とは、「経営の管理者的立場にある者や、経営者と一体となっている者」のことです。

管理監督者の判断に際しては、労働条件や労務管理などについて経営者と一体であるかどうかが問題になり、もし労働者が管理監督者に該当するのであれば、深夜労働をのぞいて残業代を支払う必要が無くなります。

実際に管理監督者に該当するかどうかについては、以下のような点から判断します。

  • その労働者が、会社経営についての決定に参加することがあったり、労務管理の指揮監督権があるかどうか
  • その労働者が、自分の出退勤などの労働時間の管理に関して裁量を認められているかどうか
  • その労働者が一般の従業員と比べて、賃金が優遇されているかどうか

また、裁判所は、これらの管理監督者については厳しく判断する傾向があります。

もし、本当にその労働者が管理監督者に該当するなら残業代は請求出来ませんが、いわゆる「名ばかり課長」などのように、名目だけが管理監督者のようであっても実際には管理監督者とは言えないような場合には、会社に対して残業代の請求ができます。

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5.残業代を請求する方法

退職後に会社に残業代を請求したい場合、具体的にはどのような手続き方法をとれば良いのでしょうか。
以下では、その手順を解説します。

(1)まずは証拠を集める

残業代を請求するためには、まずは証拠を集めておくことが重要です。
残業代の証拠については、退職後に集めるのは難しいため、在職中に集めておくと良いでしょう。

具体的には、以下のような資料が有用です。
残業したことの証明のためには、いつどのくらい労働をしていたかを証明する必要があります。

そのためには、シフト表やタイムカード、業務日報などが必要です。
会社IDカード等の記録や会社のパソコンへのログイン記録、通勤に利用している交通ICカードの利用明細書なども資料になります。

さらに、収入金額の証明のため、給与明細や源泉徴収票などの収入の資料も必要です。

できるだけ多くの証拠を集めておきましょう。

(2)内容証明郵便を送付して請求する

証拠が用意出来たら、残業代を計算して会社に未払いの残業代を請求します。
このとき、内容証明郵便という郵便を利用して請求書を送りましょう。

内容証明郵便とは、郵便局と差し出し人の手元に、相手方に送付したものと同じ内容の控えが残るタイプの郵便です。

内容証明郵便を利用すると、相手方会社が後になって「そんな請求書は受け取っていない」と行ってごまかすことを防止することができます。

また、内容証明郵便には確定日付が入るので、いつ請求をしたかが問題になる場合にも有効です。

内容証明郵便で請求書を送ると、「2ー(2)退職後請求の場合には時効に注意!」で説明した通り、残業代の時効の完成を6ヶ月間延ばすこともできます。

会社に対して内容証明郵便で残業代の請求書を送ったら、その後は会社との間で具体的に残業代の支払いについての交渉を開始します。

このとき、残業代の計算に必要なタイムカードなどで未開示の証拠があれば、会社に対して開示を求めることも可能です。
そして、交渉の席では、会社から3に記載したような反論があったり、減額を主張されることが考えられます。

こちらとしては、なるべく多くの支払が受けられるように、証拠などの開示を受けながら、交渉を続けていくことになります。

両者の主張に折り合いがついたら、その金額で残業代の支払いが受けられることになります。

(3)労働審判を利用する

残業代の請求をして会社と交渉をしても、両者の意見に隔たりがあって、交渉がまとまらないことがあります。
この場合には、裁判所の労働審判を利用して残業代の請求をすることが可能です。

労働審判とは、裁判所で労働審判員や裁判官の関与のもとに、労働関係の事件を解決するための専門的な手続きのことです。

労働審判を申し立てると、労働審判員が選任されて、申立人の主張内容や相手方会社の反論内容を審理したり、申立人と会社との間で調停による話し合いでの解決ができないかを模索します。

労働審判は3回まで開催されますが、それでも話し合いができない場合には、裁判官が審判を出して、残業代の支払の有無や金額について判断してくれます。

労働審判は、弁護士に依頼しなくても、比較的労働者が自分で取り組みやすいですし、かかる期間も短くて済む(だいたい70日程度)ので、利用しやすい制度です。

ただし、審判に不服がある場合には異議申し立てをすることができ、その場合には通常訴訟に移行してしまうので、争いが終局的に解決できない可能性があります。

(4)労働訴訟を利用する

会社に残業代を請求する方法として、労働訴訟を起こす方法もあります。
労働審判で異議が出た場合にも労働訴訟になります。

労働訴訟は通常の裁判手続きです。
証拠と主張に照らして、裁判官が最終的に判決で判断を下してくれます。

よって、労働訴訟を利用する場合には、証拠をしっかり揃えておくことが重要になります。

また、労働訴訟を利用すると、かなりの期間がかかります。
半年~10ヶ月くらいかかることもあります。

さらに、訴訟を利用する場合には、素人が自分ですすめることが難しいので、弁護士に依頼する必要性が高まります。
すると、弁護士費用もかかってしまいます。

ただし、訴訟で決まったことに対しては、会社は従わざるを得ません。
会社が判決に従わない場合には、会社の財産を差し押さえることも可能になります。

よって、残業第請求の最終的な解決方法として、最終的には労働訴訟を利用することが効果的です。

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退職後の残業代請求まとめ

今回は、退職後に残業代を請求する方法や、その場合の注意点を解説しました。
退職後に会社に残業代を請求することはできます。

実際に、在職中とは異なり会社での立場を気にする必要がなくなるので、退職後の方が残業代の請求がしやすいです。

ただし、退職後に残業代の請求をする場合には、残業代の時効(2年)に特に注意する必要があります。

会社に残業代を請求する場合には、残業代を計算する必要があります。
残業第には法内残業と時間外労働があり、それぞれ計算方法が異なるので押さえておきましょう。

会社から予想される反論として「すでに手当や基本給で支払っている」とか「管理監督者だから残業代が発生しない」と言われることがありますが、これらに対してはそれぞれ反論が可能です。

残業代を請求する場合には、まずは証拠を集めて内容証明郵便で会社に残業代の請求書を送りましょう。
交渉で解決ができなければ、労働審判や労働訴訟で解決します。

今回の記事を参考にして、退職後でも賢く未払い残業代の請求をしましょう。

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