交通事故の示談書と書き方、示談の際の注意点は?

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交通事故に遭うと、相手方保険会社との間で示談交渉をします。

話し合いが決着して示談が成立したら、その時点で示談書を作成します。

そもそも示談書とは何のために作成するどのような書類なのでしょうか?

示談書を作成する場合、その書き方も気になります。

また示談書作成の際にはいくつか注意点がありますし、相手方保険会社から示談書の作成を急かされた場合の対処方法も知っておく必要もあります。

このことを正しく理解しておかないと不適切な内容で示談をしてしまい、不利益を被るおそれがあります。

示談交渉や示談書作成は、弁護士に依頼することもできますが、弁護士に依頼する方が良いのかどうかも抑えておくと役立ちます。

そこで今回は、交通事故の示談書の書き方や注意点について解説します。

※この記事は2017年5月16日に加筆・修正しました。

1.示談書とは


交通事故の示談書とは、交通事故の内容やそれにともなう損害賠償金の金額や支払方法について定めた契約書のことです。

交通事故が起こったら、いろいろな内容の損害が発生します。
車が破損することもありますし、怪我をして通院治療が必要になることもあります。

この場合、損害賠償金の支払いを受けるためには、相手方保険会社と示談交渉をして損害賠償金額と過失割合について話し合わなければなりません。

話し合いがついたら、示談書を作成します。

交通事故で作成される示談書は、このような示談の結果がまとめて記載されているものです。
損害賠償金が保険会社から支払われる場合、この示談書の内容に従って具体的な支払が行われます。

2.示談書の効果と目的


交通事故で示談書を作成すると、どのような効果があるのでしょうか。

また、示談書を何のために作成するのかも知っておく必要があります。
以下で見てみましょう。

(1)示談書の効果

示談書は、交通事故の損害賠償金とその支払方法を定めたものですが、これは1種の契約書です。
よって、法的な意味を持ちます。

示談書を作成してしまうと、その内容に反した行動はできなくなります。
たとえば、示談書の内容とは違う内容の請求をすることは認められなくなります。

示談書が作成されていると、その内容に反した内容の裁判を起こしても、示談書が裁判に提出されてしまうと負けてしまいます。

示談書を作成する場合、必ずしも専門家が作成したものであったり実印を押したものでなくても有効です。

たとえば、事故の現場で双方が合意をしてその場でメモ用紙などに示談内容を記載しても、双方が納得して署名押印していると、立派な示談書になってしまいます。

この場合、後から「やっぱりもっと請求出来るはずだ」と考えて相手に異なる請求をしようとしても、示談書によってそのような請求は封じられてしまうので注意が必要です。

(2)示談書の目的

示談書の目的は、紛争の蒸し返しを防ぐことです。

示談が成立して双方が納得をした上で損害賠償金の支払いをしても、当事者が後から「やっぱりこのような損害もあった」「この問題についても支払をしてほしい」などと言ってきたら、また示談のやり直しになってしまいます。

これでは、いつまでたっても損害賠償金の支払を終えることができません。
そこで、いったん話し合いがついたら、それ以上には紛争を蒸し返せないようにする必要があります。

そのために示談書が作成されます。

示談書を作成する場合には、「本件交通事故にもとづく損害内容は〇〇で、それについては〇〇の方法で支払うので、それによって本件がすべて解決する」という内容を記載します。

このことに納得して当事者双方が署名押印までするのですから、後から紛争を蒸し返すことは認められなくなります。

この点、せっかく示談が成立しても単なる口約束なら、後から「そんな約束はしていない」と言われてしまうおそれもありますが、示談書という書面にしておくことによって、そのような紛争の蒸し返しを防ぐことができます。

3.示談書は保険会社が作成してくれることが多い

交通事故で示談書を作成する場合には、誰が作成することが多いのかという問題があります。

被害者である自分が作成しなければならないとなると、正しく作ることができるのかが不安になります。

この点、被害者側が素人であり、自分で対応しているケースでは相手方保険会社が作成してくれることが多いです。

この場合には、相手方保険会社が提示してきた示談書を鵜呑みにすることなく、内容に問題がないかどうかをしっかりチェックしましょう。

時には間違いや自分に不利な内容が記載されていることもあります。
もし不安があれば、問題がないかを弁護士に相談して聞いてみても良いでしょう。

また、示談交渉を弁護士に依頼している場合、弁護士が示談書を作成してくれることが多いです。

弁護士がついている場合には、こちらに不利になる示談書を作成されるおそれはありませんし、相手方保険会社が示談書を作成する場合でも、きちんとその内容もチェックしてくれるので安心です。

4.示談書のひな形


示談書は相手型保険会社が作成してくれることも多いですが、その内容をチェックするためにも基本的な書き方や作り方を知っておくと便利です。

示談書を作成する場合には、示談書のひな形を利用すると便利です。
ひな形や文例はインターネット上にもたくさんありますが、たとえば以下のようなものがあります。

5.示談書の書き方

(1)表題

ひな形はあっても、具体的に利用するには内容を理解しておく必要があります。

そこで、以下では示談書の具体的な書き方をご説明します。
まずは、示談書の表題をつけます。

ここには「示談書」と表記すると良いでしょう。

(2) 事故内容を表示する

示談書においてまず記載しなければならない事項は、交通事故の内容です。

いかに示談の内容をきちんと記載しても、交通事故の特定ができていなければ何の意味もありません。

交通事故内容としては、事故発生日時、事故発生場所、事故の当事者の氏名と住所、事故車両の番号や事故当時の状況などを記載します。

これらを記載する場合には、交通事故証明書を取得して、これをもとに記載すると良いでしょう。

交通事故証明書とは、自動車安全運転センターが発行する、交通事故の内容が記載された書類のことです。

郵便局や自動車安全運転センターにて取り寄せることができます。

交通事故後警察を呼んで実況見分をしてもらった場合にのみ作成されるので、交通事故が起こった場合には、必ず現場に警察を呼ぶことが重要になります。

当事者それぞれの過失割合についても事故内容の項目に記載しておくと良いでしょう。

(3)示談金額を記載する

示談書には、示談金額を記載する必要があります。
示談金額としては、総額のみならず損害の内訳も記載しておくとわかりやすくなります。

内訳とは、たとえば治療費がいくらで入通院慰謝料がいくらなどの個別の損害金額です。

(4)支払方法を記載する

示談書には、示談金の支払方法も記載します。

通常は一括払いになりますが、いつまでに支払うのかという期限を記載する必要がありますし、振込送金であれば振込先の銀行口座なども記載する必要があります。

(5)精算条項を入れる

示談書を作成する場合、後からの紛争の蒸し返しを防ぐことが重要になります。

そこで、示談書内には、「本件以外には債権債務関係が残らない」ということを明らかにしておく必要があります。

これを精算条項と言います。

精算条項を入れることによって、事故の当事者間では示談書に定める以外の債権債務関係がないことが確認され、後から当事者が別の請求をすることを防ぐことができます。

(6)署名押印する

以上のように示談書の記載ができたら、交通事故の当事者それぞれが署名押印する必要があります。

いかに立派な内容の示談書を作成しても、当事者が署名押印していなければその示談書は無効です。

示談書を有効に成立させるためには、きちんと相手方に署名押印してもらうことが極めて重要で、双方が納得して署名押印をして日付を入れれば示談書は完成します。

後は、示談書の内容に基づいた支払を待つだけになります。

6.示談書作成の際の注意点

示談書を作成する場合、注意しなければいけない点がありますので、以下で重要な点をご紹介します。

(1)署名押印の前に内容をしっかりチェックする

示談書は、いったん作成してしまうと後から訂正することが困難です。

示談書の内容が間違っていたり、自分が勘違いして理解している場合でも、そのまま署名押印してしまうとその示談書の内容が有効になってしまいます。

すると、本来請求できるはずの損害賠償が封じられしまうおそれがあります。

そこで、示談書に署名押印する前には、しっかりとその内容をチェックする必要があります。

もし間違っていたり、表現の内容が理解できない部分がある場合には、必ずその箇所を正す必要があります。

署名押印前であれば、いくらでも訂正することは可能です。
内容に納得できなければ、示談書の作成をやめて示談交渉を再開することもできます。

よって、示談書に署名押印をする前には、慎重になる必要があります。

もし自分でチェックしただけでは不安がある場合には、弁護士のところへ相談に行って、示談書の内容が妥当な内容になっているかどうかを確認すると良いでしょう。

(2)保険会社から急かされても妥協しない

示談書を作成する場合、保険会社から示談を急かされるケースがあります。

交通事故後には通院治療を続けますが、通院期間が長引くと相手方保険会社の支払うべき損害賠償金額が上がるので、相手方保険会社としては早期に通院治療を打ち切って示談を成立させたがるケースもあります。

また、相手方本人が刑事裁判にかかっている場合には、示談書が相手の刑事裁判に有利に働きます。

相手方が危険運転をした場合などには、相手方が刑事裁判にかけられて有罪・無罪かや、刑の種類や程度について判決を受けることになります。

このとき、被害者との間で示談ができていると、相手の刑が軽くなるのです。

そこで、この場合にも相手方から早期に示談書を作成するように急かされることがあります。

しかし、そのような事情は相手方のものであり、こちらがそれによって不利益を受けるべきではありません。

こちらとしては、あくまで症状が完治するか症状固定するまで通院を継続すべきですし、示談をするとしてもきちんと自分の納得できる内容で示談することが大切です。

急いで深く考えないままに示談してしまうと、本来受け取れるはずの損害賠償金が受け取れなくなって後悔することがあります。

7.弁護士に依頼すべきか?

交通事故の示談交渉や示談書の作成を弁護士に依頼するべきなのでしょうか?
以下ではそのメリットや弁護士の利用方法をご紹介します。

(1)弁護士に依頼するメリット

示談交渉や示談書の作成を弁護士に依頼すると、いろいろなメリットがあります。

まず、示談交渉そのものを弁護士に依頼すると、受け取ることができる損害賠償金が上がることが多いです。

交通事故の損害賠償基準には自賠責基準任意保険基準弁護士基準がありますが、弁護士に示談交渉を依頼した場合、この中でも最も高い弁護士基準で計算してくれるからです。

また、弁護士に示談交渉を依頼すると自分が面倒な示談交渉手続きから解放されるので精神的に楽になります。

さらに、弁護士が対応することによって、適切な内容の解決ができます。
自分が対処する場合のように、相手方保険会社から不当な内容を押しつけられることはありません。

示談書作成の際にも弁護士に相談したり依頼するメリットがあります。

示談書を作成する際、自分ではどのように作成して良いかわからないことがありますし、相手方保険会社が作成してきたものが妥当かどうかわからないこともあります。

この場合、弁護士に示談書の作成を依頼したり、示談書内容のチェックをしてもらうと安心です。

示談交渉そのものではなく示談書作成やチェックだけなら、費用も安く済むので負担も軽いです。

(2)弁護士特約が便利

交通事故の示談交渉や示談書作成などを弁護士に依頼する場合には、交通事故保険の弁護士特約をつけていると役立ちます。

弁護士特約とは、交通事故によって弁護士が必要になった場合にかかる弁護士費用を保険から支払ってもらえる特約です。

通常300万円までの弁護士費用が補填されるタイプなどがよく利用されています。

このような弁護士特約をつけておくと、気軽に弁護士に示談書作成を相談したり依頼することができます。

今後損害保険に加入する際には、1度検討してみると良いでしょう。

まとめ

今回は交通事故の示談書の作り方を解説しました。

交通事故の示談書とは、交通事故による示談内容をまとめた書類です。
1種の契約書であり、示談書が作成された場合には、後から紛争を蒸し返すことができなくなります。

示談書を作る場合には、ひな形を利用すると便利ですが、内容に不安がある場合には弁護士にチェックしてもらうと良いでしょう。

示談書作成の際には、署名押印の前にしっかりチェックをすることと、保険会社や相手方から急かされても妥協しない姿勢が大切です。

今回の記事を参考にして、賢く示談書を作成して正当な損害賠償金額を受け取りましょう。

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