交通事故の頸椎捻挫とは?慰謝料の相場や後遺障害等級認定を受ける方法を解説!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

交通事故にあった場合には、頸椎捻挫という症状が出ることがあります。
頸椎捻挫は、いわゆるむちうちのことですが、ひと言で頸椎捻挫と言ってもいろいろな症状があります。

頸椎捻挫になると後遺障害が残ることが多いですが、その場合等級は何級になるのか、またそれぞれの場合にどのくらいの慰謝料を請求出来るのでしょうか?
後遺障害等級認定を受ける方法や工夫すべきポイントも知っておく必要があります。

そこで今回は、交通事故で頸椎捻挫になった場合の慰謝料の相場や後遺障害等級認定を受ける方法について解説します。

1.頸椎捻挫はむちうち症

頸椎捻挫とは、いわゆるむちうち症のことです。
交通事故に遭ったら、首や腰などに強い衝撃が加わり、頸椎を捻挫したり骨折してしまったりすることがあります。
このことが原因で首や頭、上肢に痛みやしびれが出たり、吐き気を催したりなどの症状が出ますが、このことを頸椎捻挫と言います。
頸椎捻挫は外傷性頸部症候群とも呼ばれます。

交通事故で通院しているときに、診断書に頸椎捻挫や腰椎捻挫、外傷性頸部症候群などと記載されていたら、それはむち打ち症になっているということです。

2.頸椎捻挫の5つの症状

頸椎捻挫には、主に5種類の症状がありますので、以下でご説明します。

(1)頚椎捻挫型

頸椎捻挫型は、むちうち症の約7割を占める症状であり頚椎の筋肉や靭帯が損傷を受けるケースです。
首を伸ばした際に肩や首の後ろに痛みを感じることが多く、痛みが強いケースでは首や肩を自由に動かせなくなることがあります。
このことを可動域の制限と言います。

代表的な症状:首や肩の痛み、頭痛、首や肩の可動域制限

(2)神経根損傷型

神経根損傷型は、頚椎に歪みが起こって神経を圧迫するケースです。
首や後頭部に痛みが発生したり、手や腕にだるさやしびれが起こったり、顔面麻痺などの症状があらわれます。
くしゃみをした場合などに首に痛みを感じることもありますし、首や肩を回転させると強い痛みを感じることもあります。

代表的な症状:首や後頭部の痛み、しびれ、知覚障害、脱力状態

(3)脊髄損傷型

脊髄損傷型は、脊髄や神経が損傷を受けることによって、全身のしびれや痛みなどが発生するケースです。
症状が重い場合には、歩行障害が起こったり尿や便を出しにくくなったりする膀胱障害や排泄障害も起こることがあります。

代表的な症状:腕や足のシビレや痛み、排泄障害など

(4)脳脊髄液減少症

脳脊髄液減少症とは、交通事故の衝撃によって脳内の髄液圧が急に上昇してしまい、髄液がくも膜下から漏れてしまう(くも膜下出血)ケースです。

軽いものから重いものまで症状はいろいろありますが、初期には頭痛が起こることが多いです。
雨の日には痛みが発生しやすいこともあり、慢性的なだるさが起こることもあります。

代表的な症状:頭痛、耳鳴り、めまい、だるさ(倦怠感)など

(5)バレーリュー症状型(自律神経損傷型)

バレーリュー症状型は、自律神経が損傷を受けるケースで、「後部交感神経症候群」とも呼ばれています。
頭痛やめまい、耳鳴りや吐き気などの症状が出ます。

代表的な症状:頭痛・めまい・吐き気・耳鳴り・難聴

むちうちというと、首や肩、上肢の痛みやしびれが起こるイメージが強いですが、実際にはこのように多彩な症状があります。
交通事故後、上記にあてはまる症状が出ている場合には、頸椎捻挫になっている可能性があります。

3.頸椎捻挫になった場合の慰謝料

交通事故によって頸椎捻挫になった場合、相手に対して慰謝料を請求することができます。
頸椎捻挫で請求できる慰謝料の種類は、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料の2種類です。

(1)入通院慰謝料

入通院慰謝料とは、交通事故で受傷したこと(入通院したこと)による精神的損害を賠償してもらうための慰謝料です。
入通院日数に応じて金額が大きくなっていきます。
入通院慰謝料は、医師が症状固定したと判断するときまでの通院分について請求することができます。
よって、頸椎捻挫で通院する場合には、途中で通院をやめずに医師の指導に従って最後まで通院を続けることが入通院慰謝料のアップにつながります。

(2)後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料とは、交通事故で受傷した場合に症状が完治せずに後遺症が残った場合、その後遺障害の内容と程度に応じて請求できる慰謝料のことです。

後遺障害には1級から14級までの等級があり、1級が最も重度で慰謝料の金額も高額になり、14級が最も軽度で慰謝料の金額も最も低額になります。
後遺障害慰謝料を請求するには、まずは後遺障害が残ったことを明らかにするために、後遺障害等級認定を受ける必要があります。

4.頸椎捻挫の後遺障害等級

頸椎捻挫になった場合に後遺障害の等級認定を受ける場合、その等級が何級になるのかという問題があります。
頸椎捻挫の後遺障害等級は、14級となることが多く、症状が重い場合には12級に認定されることもあります。

具体的には、12級13号の「局部に頑固な神経症状を残すもの」または14級9号の「局部に神経症状を残すもの」です。
12級13号に該当するケースは、画像所見や神経学的検査結果によって、頸椎捻挫の症状を医学的に証明できる場合(他覚所見がある場合)です。

14級9号に該当するケースは、画像所見などから明確な他覚所見は認められなくても、受傷時から症状固定時までの症状や治療経過に連続性と一貫性が認められて、症状が説明出来る場合です。

被害者が単に誇張して症状を主張しているわけではないことが医学的に推定される必要があります。

5.頸椎捻挫の後遺障害慰謝料の相場

頸椎捻挫になった場合の後遺障害慰謝料は、どの基準を用いて慰謝料を計算するかによって異なります。
自賠責基準を用いた場合の相場は以下のとおりです。

自賠責保険基準の後遺障害慰謝料・後遺障害等級・慰謝料額

12級:93万円

14級:32万円

任意保険基準を用いた場合の相場は以下の通りです。 

任意保険基準の後遺障害慰謝料(推定)・後遺障害等級・慰謝料額

12級:100万円

14級:40万円

弁護士・裁判基準を用いた場合の相場は以下の通りです。

弁護士・裁判基準を用いると、後遺障害慰謝料の金額がもっとも高額になります。

弁護士基準・後遺障害等級・慰謝料額

12級:290万円

14級:110万円

以上のように、後遺障害慰謝料の金額は、弁護士・裁判基準で計算すると大幅に増額されます。

よって、交通事故後、なるべく多くの慰謝料支払いを受けたい場合には、弁護士・裁判基準を使って請求することが重要です。

6.後遺障害等級認定(14級)を受けるためのポイント

頸椎捻挫によって後遺障害等級認定を受けるためには、いくつかのポイントがあります。
以下のポイントをクリアすれば、だいたい14級の等級認定を受けることができます。

(1)交通事故との因果関係を証明する

まずは、症状と交通事故との因果関係を示すことが重要です。
どんなに重篤な症状が出ていても、事故と関係がないとみなされてしまっては何の意味もありません。
交通事故と症状の因果関係を示すには、その交通事故が症状を引き起こす程度のものであること、交通事故直後からすぐに通院を開始していること、その後症状が継続していることなどが必要になります。

このようなことを証明するためには、病院のカルテや医師の診断書の記載が重要になります。

(2)症状の継続性と一貫性を示す

頸椎捻挫で後遺障害を認めてもらうためには、症状に継続性と一貫性があることが必要です。

交通事故後一貫して同じような症状が出てそれが継続していることが重要だということです。
たとえば、交通事故直後は左側の肩が痛いと言っていたのに、3ヶ月くらい経ってから急に右の腕がしびれているなどと言い出した場合には、症状に一貫性が認められないとして後遺障害が認定されない可能性が高いです。

また、事故後いったんは痛みが消えたと言っていたのに、数ヶ月くらい経ってから急にまた痛みが再発したなどと言い出した場合にも、症状に継続性がないとして後遺障害が認定されない可能性があります。
頸椎捻挫で後遺障害認定を受けたい場合には、一貫した訴えを連続して示すことが重要です。

(3)症状の程度が一定以上で常時性がある

後遺障害等級認定を受けるためには、一定以上の症状である必要があります。
たとえば単に肩がこったり、だるい感じがしたりするというだけでは後遺障害とまでは認定されない可能性が高いです。

また、後遺障害と認定されるためには、症状に常時性があることも必要です。
たとえば、たまに雨の日などにしびれを感じる、ということでは症状の常時性が認められず、後遺障害等級認定は受けられない可能性が高いです。

(4)画像所見がない場合は神経学的検査をする

頸椎捻挫で後遺障害等級認定を受ける際には、明確な画像所見が見られないことが多いです。
その場合には、神経学的検査をすることにより、頸椎捻挫の症状を証明することができるケースがあります。
神経学的検査とは、筋力検査や知覚検査、反射の検査をすることによって、神経症状を確認する方法です。

頸椎捻挫の場合には、以下のような神経学的検査を利用する事ができます。

①ジャクソンテスト

座ったまま頭を後ろにそらせる姿勢をとり、上から前頭部を押して反応を見ます。
神経根に異常があると反応が起こります。
このことによって、頸部に痛みがあるかどうかや腕のしびれなどを調べます。

②スパークリングテスト

座ったまま首を後ろにそらせる姿勢をとり、頭を後ろや側方へ曲げさせて、頭頂部を下へ圧迫するテストです。
神経根に異常があると、痛みやしびれを感じます。

③腱反射テスト

打鍵器で神経を刺激することにより、反射に異常が発生していないかどうかを調べるテストです。
神経根症状がある場合には腱反射が低下したり喪失したりしますし、脊髄症状の場合には、腱反射は過剰反応します。

④筋電図検査

電気刺激をすることによって神経異常を調べる検査です。
感覚障害や運動障害がある場合に効果的な検査方法です。
以上のような各要件を満たせば、頸椎捻挫で14級の等級認定を受けられる可能性が高くなります。

14級の等級認定を争う場合には、明確な画像所見などがないので、上記の方法で自覚症状をどこまで客観的に推認させるかがポイントになってきます。

7.12級の認定を受ける方法

次に、頸椎捻挫の場合でも比較的症状の重い12級に該当するケースで後遺障害等級認定を受ける方法を解説します。
後遺障害12級の等級認定を受けるには、医学的に明確にその症状を「証明」できることが必要になります。

14級の場合には「推認」で足りたので、これと比べると要件が厳しくなっていることがわかります。
具体的には、以下の要件が必要です。

(1)画像によって、神経圧排所見が明確に捉えられること 

MRI画像によって、症状の原因となる異常(ヘルニア等を原因とする脊髄や神経根の圧排)が明確に確認できることが必要になります。
そのためには、MRI画像撮影機器の精度も重要になります。制度の低い機器を利用すると、異常部分がうまく映らないことがあるからです。
画像診断を行う場合には、どのような検査機器を使うかということにまで注意を払うことが重要です。

(2)症状と一致する他覚的所見がいくつかあって、それらが互いに合致していること

12級の等級認定を受けるためには、画像診断によって症状の原因となる異常が確認できていて、しかも主要な神経学的検査結果でも陽性となっていることが必要です。
さらに、これらの複数の検査結果が相互に合致していて症状につながるものであることも必要です。

つまり、画像診断と神経学的検査の双方において異常な結果が出ていて、それらが相互に矛盾せず症状の説明につながるものであることが必要だと言うことです。

(3)病変・症状が外傷性である

頸部や腰部の症状は、加齢を原因とすることがあります。
よって、頸椎捻挫によって後遺障害等級認定を受けたい場合には、その病変や症状が加齢などの他の原因ではなく交通事故による外傷にもとづくものであることを証明する必要があります。

そのためには、交通事故の態様がある程度強度なものであり、頸部や腰部に強い衝撃が加わったと認められる必要があります。

交通事故の程度が軽微でそのような事故では病変が発生しないだろうと考えられるケースでは、後遺障害の認定を受けることができません。

病変が外傷性のものかどうかは、MRI画像によって確認できる水分の量や周辺の組織に異常が発生しているかということや、他の変性部位との比較をすることなどによって確認できることがあります。

場合によっては、病変が外傷性かどうか、明確にならなくても、程度によって後遺障害12級の等級認定を受けることができることもあります。

8.後遺障害等級認定を確実にする方法

後遺障害等級認定のための要件は上記の通りですが、要件を満たしているとしても、上手に認定請求をしないときちんと認定を受けられない可能性があります。
そこで、以下では後遺障害等級認定を確実にするためのポイントをご紹介します。

(1)後遺障害診断書の内容に注意する

後遺障害の等級認定請求をする場合には、後遺障害診断書の内容に注意する必要があります。
後遺障害診断書とは、症状固定した際に、担当医師に書いてもらう後遺障害についての診断書のことです。

後遺障害診断書を書いてもらう場合には、上記で紹介した後遺障害等級認定のための要件を満たすよう、わかりやすく記載してもらうことが必要です。
たとえば、交通事故と後遺障害の因果関係が認められる内容になっているかどうかや、症状が一定以上で常時性があるように記載されているかどうか、症状に一貫性があるように書かれているかどうかなどに注意しましょう。
間違っても「完治した」などと記載してもらってはいけません。完治した場合には後遺障害は認められないからです。
医師がよくわからないまま、完治したと読める記載をしてしまったために後遺障害等級認定が受けられなくなったケースなどもあります。

このような問題が起こらないようにするため、後遺障害診断書を記載してもらう際には、医師に対してどのように記載してほしいのかなどをきちんと説明することが大切です。

(2)被害者請求をする

後遺障害の等級認定請求をする場合、被害者請求をする方が等級認定を受けやすいです。
後遺障害の等級認定請求手続の方法は、加害者請求と被害者請求があります。
加害者請求とは、相手方任意保険会社が自賠責保険会社に対し、被害者の後遺障害の等級認定手続きを申請して行う方法です。

これに対し、被害者請求とは、被害者本人が直接相手方の自賠責保険に後遺障害の等級認定請求を行う方法です。
被害者請求では、相手方の任意保険会社を介することはありません。
加害者請求は、後遺障害の等級認定によって多額の保険金を支払わなければならなくなる任意保険会社自身が等級認定手続きを行う方法です。

任意保険会社としては、できるだけ支払う保険金の金額を減らした方が得になるので、本来であればできるだけ後遺障害認定を受けてほしくないと考えているはずです。
そのような任意保険会社に被害者の等級認定請求の手続をしてもらったら、実際にはどのような手続がとられているかが全くわからず不安です。

そこで、後遺障害等級認定請求をする場合には、被害者請求をしましょう。
被害者請求をする場合には、相手方自賠責保険会社から保険金請求用紙を取り寄せて、必要書類を取り寄せて相手方自賠責保険会社に送付します。
そうすると、自賠責保険会社から損害保険料率算定機構に後遺障害の等級認定のための調査依頼が行われ、その調査結果に応じて後遺障害の等級認定が行われます。
被害者請求によって後遺障害の等級認定手続きを行った場合、その結果は被害者本人宛に送付されてきます。

12級や14級に該当するケースもありますが、非該当となるケースもあります。
非該当になった場合や認定等級に不満がある場合には、結果に対して異議申し立てをすることも可能です。

9.慰謝料の金額をアップさせるには弁護士に示談交渉を依頼する

後遺障害等級認定を受けた場合には、その等級に応じて後遺障害慰謝料を請求することができますが、交通事故の示談交渉を弁護士に依頼すると、請求出来る後遺障害慰謝料の金額を上げることができます。その理由を以下で解説します。

(1)弁護士・裁判基準で計算できる

後遺障害慰謝料や入通院慰謝料などの損害賠償金の計算方法については、自賠責基準と任意保険基準、弁護士・裁判基準がありますが、この中でも弁護士・裁判基準による計算結果が最も高額になります。

弁護士・裁判基準は弁護士が示談交渉をする際や裁判所で損害賠償金額を認定する際に利用する基準です。

よって、弁護士・裁判基準によって慰謝料を計算するためには、示談交渉を弁護士に依頼する方法が最も効果的です。
このことにより、同じ交通事故によるむちうちの慰謝料請求でも、金額に百万円以上の開きが出ることも普通です。

(2)後遺障害認定等級が上がる

交通事故事件に強い弁護士に後遺障害等級認定手続きを依頼すると、適切に対処して等級認定が受けられるように手続をすすめてくれるので、自分で手続きしたら等級非該当となってしまうケースでも14級の等級認定が受けられる可能性がありますし、自分で等級認定請求をしたら14級の等級認定しか受けられなかったケースでも12級に等級が上がる可能性があります。
このことによっても、大幅に後遺障害慰謝料の金額が上がります。

以上のような理由により、交通事故の頸椎捻挫の慰謝料をアップさせるためには、交通事故に強い弁護士に示談交渉を依頼することが効果的です。

まとめ

今回は、交通事故で頸椎捻挫になった場合の慰謝料とその請求方法、請求額をアップさせるポイントなどを解説しました。
交通事故で頸椎捻挫(いわゆるむち打ち症)になると、入通院慰謝料や後遺障害慰謝料を請求することができます。
頸椎捻挫によって認定を受けられる後遺障害の等級は14級か12級です。

後遺障害等級認定を受けるためには、画像所見が認められることや神経学的検査で異常が認められること、症状に継続性や一貫性があること、症状が一定以上で常時性が認められることなどが必要です。
後遺障害慰謝料を増額させるには、交通事故に強い弁護士に示談交渉や後遺障害等級認定請求手続を依頼することが効果的です。

交通事故で頸椎捻挫になったら、今回の記事を参考にして上手に慰謝料請求をしましょう。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

Twitter・RSSでもご購読できます。