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【映画ライターが分析】しなやかな感受性と表現力をもつ”芸術家”的役者・綾野剛の5つの才能

#SYO #綾野剛
2021年7月1日 by
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映画ライターのSYOと申します。日本のドラマ・映画界に欠かせない俳優さんの「5つの魅力」を分析する本企画。これまで、横浜流星さん、佐藤健さん、田中圭さん、中村倫也さん、高橋一生さん、窪田正孝さんについて書かせていただきました。

第7回目は、唯一無二の世界観を有する“芸術家”、綾野剛さんについて書かせていただきます。

綾野剛さんは、1982年生まれの38歳。小栗旬さんや、藤原竜也さん、永山瑛太さん、向井理さんと同い年です(すごい面子……)。岐阜県で生まれ育ち、高校卒業後、音楽の道を目指してヒッチハイクで上京したそうです。その後、2003年に「仮面ライダー555」で俳優デビュー。といってもライダーではなく、怪人役でした。

トーク番組やインタビューなどで、当時はまだまだ役者としての気構えが足りていなかったと語っている綾野さんですが、この現場で「プロのあり方」を学んだといいます。

その後、過酷な下積み時代も経験し、しなやかな感受性と表現力を身に着けた綾野剛さん。一記事では語りつくせぬ彼の魅力の一端を、楽しんでいただければ幸いです。

引用:Amazon

1 永遠の勉強家――「演技とは」を探求し続ける

引用:Amazon

綾野剛さんという役者のイメージは、どんなものが思い浮かぶでしょう? 恐らく、「仕事にひたむき」や「世界観が独特」、或いは「芸術肌」なのではないでしょうか。ストイックとは少し違う。インタビュー時や、撮影現場のメイキング映像などで垣間見える彼の“まなざし”は、貪欲であり謙虚。常に「勉強したい、吸収したい」という渇望が透けて見える気がします。

演技未経験の状態から「仮面ライダー555」を経て、役者としての武者修行に乗り出した綾野剛さんは、「ギャラは弁当」の状態でとにかく現場の経験を積みまくったとか。真面目な役も不良も、ホラーもラブストーリーも、作品の大小にも関わらず出演をつづけ、2012年に連続テレビ小説「カーネーション」でブレイク。「仮面ライダー555」から、約9年の月日が経っていました。

今でこそ、様々な役を演じ分けられる「実力派」としての地位を確立した綾野剛さんですが、並大抵ではない努力を重ねられてきたのでしょう。映画「64 ロクヨン」シリーズで演じた思慮深いキャラクターや、ドラマ「空飛ぶ広報室」で演じた、挫折した自衛官は、綾野剛さん自身の経験が活きた役柄なのかもしれません。

2 天然の「オーラ」で包み込む、儚げなキャラクター

綾野剛さんならではの「役」といえば、個人的“推し”は、繊細で儚げなキャラクター。薄い寂しさや悲しみのベールに包まれた登場人物は、「そこにいるだけで幽玄な雰囲気がある」彼にぴったりの役です。作ったものではなく、天然でそのオーラが漂っているのが綾野剛さんの恐るべきところでもありますね。

真っ先に脳裏に浮かぶのは、映画「怒り」で演じた、ミステリアスなゲイの青年。妻夫木聡さん演じる陽気なサラリーマンに“拾われ”、同棲生活を送るようになるキャラクターです。いつ消えてしまうかもわからない弱々しさがありながらも、ただ寄り添い、穏やかな愛を届け続ける。涙なしでは観られない傑作です。

余談ですが、綾野剛さんは「怒り」の原作者、吉田修一さんの映画化作品の常連俳優。映画「横道世之介」では、主人公(演じるのは高良健吾さん)にカミングアウトできないゲイの大学生、映画「楽園」では、誘拐事件の容疑者と疑われ、村八分にされる気弱な青年を演じています。前者はいじらしく、後者は痛々しく――。綾野剛さんと原作の相性の良さを感じさせます。

直近の作品では、映画「るろうに剣心」の大友啓史監督と再び組んだ「影裏」での細やかな名演も忘れられません。人には言えないある過去を抱え、地方都市で静かに暮らす男性。松田龍平さんや中村倫也さんとの静かな演技のキャッチボールは、観ているだけで切なさを掻き立てられます。いつまでも心に残る、感性豊かな良作です。

そのほか代表的なものでは、ドラマ「最高の離婚」やドラマ「コウノドリ」でしょうか。前者は様々なことに無頓着すぎて、女性が絶えない“天然たらし”(どうしようもないのに非常にキュート。たまりません)、後者は命に向き合い続ける、実直な産婦人科医(困ったような笑顔が沁みます)と、役柄はまるで真逆ですが、胸の内に大きな喪失感や孤独を抱えているという点では、不思議と近しく思えたりもします。

3 “底”も“先”も見えない、突き抜けた「狂気」

綾野剛さんについて考えるとき、非常に興味深いのが、彼にはもう1つ得意とする役のジャンルがあること。しかもそれは、②に挙げたタイプとは180度違うのです。「狂気」が肉体を持ったような、野蛮なキャラクター。儚げなキャラクターもどちらも綾野剛さんだと認識しているのに、両者が全くつながらない……。これぞ「綾野マジック」でしょうか。

映画「日本で一番悪い奴ら」で演じた、正義感が強すぎるが故に暴走し、道を踏み外していく狂的な警察官は、綾野剛さんの真骨頂。彼のキャリアの中でも、非常に重要なキャラクターです。観ているこっちがぶっ飛ばされるほどの、ほとばしるエネルギー。純粋すぎて、どこまでも堕ちていく哀しさ。口角泡を飛ばし、もがきまくる綾野剛さんの熱演には、圧倒されることでしょう。本作の神がかり的な“憑依演技”は、本当に「すごい」「ヤバい」としか言いようがありません。

ここから毒を抜いたキャラクターが、映画「新宿スワン」シリーズで演じた、まっすぐすぎて狂気すら感じさせるスカウトマンかもしれません。映画「白ゆき姫殺人事件」で扮した、倫理観が曖昧な映像ディレクターも、危険性が高いキャラクターですね。

そして、狂気の温度を低く低く、冷たくしたキャラクターが、大ブレイクする以前の綾野剛さんの名演を収めた、2010年のドラマ「Mother」。芦田愛菜ちゃんの天才子役ぶりが大いに話題になった作品ですが、綾野剛さんは本作で、児童虐待を平気で行う強烈な人物を演じています。

4 「ヤバいキャラ」+「アクション」の合わせ技

中高では陸上競技に打ち込んでいたこともあり、綾野剛さんの運動神経はかなりのもの。③とも共通するのですが、「ヤバいキャラ」+「アクション」の合わせ技をできるのも、綾野剛さんの大きな強みです。

映画「クローズ ZERO II」では、暴力衝動のリミッターが外れたクレイジーなキャラクターを怪演。周囲に止められるまでケンカ相手を蹴り続ける、危ない役で強いインパクトを残しました。

映画「るろうに剣心」では、佐藤健さん演じる剣心と激戦を繰り広げる暗殺者を熱演。2人は、映画「亜人」でも敵役として対決します。こちらは、笑顔が心底恐ろしいテロリストを圧巻の存在感で体現。声色まで完璧に変えており、渾身のギャグ演技(衝撃的です)を見せてくれます。

映画「天空の蜂」でも、日本を未曾有の危機に陥れようとするテロリスト役に挑戦。こちらでは、アパートの2階から飛び降りたり、捜査員役の俳優と格闘したり、野獣のような荒々しいアクションを見せてくれます(メイキング映像などを観ると、アクションシーンの後に倒れてしまった共演者をすぐに起こしたり、「大丈夫?」と気遣う仲間想いな姿も収められています)

「コウノドリ」でも共演した星野源さんとバディを組む新ドラマ「MIU404」では、考えるより行動してしまう警察官を演じます。こちらでは、アクロバティックなカーアクションも見せてくれそう。ちなみに、本作の脚本は「アンナチュラル」の野木亜紀子さんです。新型コロナウイルスの影響で放送延期となってしまっていますが、早く観たいところですね。

ちなみに、真面目系アクションでは、向井理さんと共演したドラマ「S 最後の警官」があります。こちらでは、クールなスナイパーを演じていますよ。

5 音も、言葉も、役も“紡ぐ”。非凡な「芸術センス」

名残惜しいですが、これが最後の項目です。ここでは、綾野剛さんの「芸術性」について少しご紹介しましょう。

元々音楽を志していた綾野剛さんは、2019年に山田孝之さん・内田朝陽さんとバンド「THE XXXXXX」を結成。「チート」という曲のミュージックビデオはYouTubeでも公開されていますが、曲調といい映像といいかなりぶっ飛んでいます。ご興味ある方は、ぜひ検索してみてください。綾野剛さんと山田孝之さんは非常に仲が良く、ドラマ・映画「闇金ウシジマくん」やドラマ「山田孝之の東京都北区赤羽」、山田孝之さんのドキュメンタリー「No Pain,No Gain」などでもイチャイチャしています。

そして、ライターとしては、綾野剛さんの紡ぐ「言葉」が非常に独創的かつアーティスティックで、大いに刺激を受けます。映画「怒り」のDVDに収録されているコメンタリーでは、独創的なコメントに周囲がうならされる場面も。映画「そこのみにて光輝く」の初日舞台あいさつでは、「みんなが『心を張って』やった作品」と語っていました。

ほっこりする話だと「恋はつづくよどこまでも」を観た綾野剛さんは、上白石萌音さんのInstagramに「めちゃくちゃ萌えました 超幕の内弁当、お腹パンパンです」とお洒落なコメントを寄せたそう。こういった言葉選びも、素敵ですよね。

 

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。これだけ書いても、綾野剛さんという役者の深い森のような魅力は、まだ数メートルしか表現できていない気がします。

役の振れ幅もそうですが、綾野剛さんの演技は、ロジカルな「技術」先行というよりも、本人の「熱」によって生まれいずるものなのでしょう。緻密に取材を重ね、役の背景をどんどん自分の中に流し込んで、自分自身がその人になっていくようなアプローチ――。

つまり、綾野剛さんは、自分の中にあるストックを使って、演じ「分ける」ということをしない。その人物と自分が重なるまで、1本1本の糸を手繰り寄せ、ただただ織り続ける。だからこそ彼の演技は常にまっさらで、どんな役も別人に思えるのでしょう。

綾野剛 歴代出演ドラマを星評価

TVログでは、綾野剛さんが出演している歴代ドラマに星評価をつけることができます!よかったら評価をお願いします。

※ページの情報は2021年7月1日時点のものです。最新の配信状況は各サイトにてご確認ください。

SYO (映画ライター)

1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイトの勤務を経て映画ライターに。「CINEMORE」「装苑」「CREA」等に寄稿。劇場公開映画の脚本・編集協力や映画祭の審査員等も務める。

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