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陰と陽、どちらも演じ分ける稀有な女優・吉高由里子の5つの魅力【映画ライターが分析】

#吉高由里子
2024年1月9日 by
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TVマガをご覧の皆様、こんにちは。映画ライターのSYOと申します。毎回素敵な俳優さんの魅力を分析していく本企画、いよいよ25回を超えました。ここまで続けさせていただけたのは、読んで下さる皆さんのおかげです。改めて、御礼申し上げます。

さて今回は、ドラマ「最愛」が大好評放送中の吉高由里子さんについて! 2006年に「紀子の食卓」で映画初出演。その後も、今日に至るまでコンスタントに話題作への出演を続けています。独創的な作品や個性的な役柄にチャレンジし、ご本人も独自の世界観を持ちながらも、新しい作品が世に出るごとにまっさらなイメージを創り出せる吉高由里子さん。個人的に好きな作品が多々ありますが、テイストが180度違うものもあって、その幅広さにはいつも驚かされます。

今回は、5つのパートに分けて、吉高由里子さんの“凄さ”を考えていきたいと思います。

引用: Amazon Prime Video

1 難役が彼女の元に集まってくる 図抜けた“表現力”

引用: Amazon Prime Video

吉高由里子さんについて考えるとき、デビュー時から近作に至るまで、難役が非常に多いことが印象的です。たとえば、初出演映画「紀子の食卓」は、“レンタル家族”や“洗脳”を題材にした、カルトなにおいが漂う怪作。「愛のむきだし」の園子温監督の作品らしく、個性が爆発した強烈度100%の内容です。

初主演映画「蛇にピアス」は、生の実感を得たいと願い、舌にピアスを開ける女性の物語(ちなみに本作で共演した高良健吾さんとは「横道世之介」、井浦新さんとは「最愛」でも共演)。死と生、性と血がのたうつような、いま見ても過激なストーリーです。

デビュー作や初期作は、その当時にしか出せない瑞々しさがある半面、技術的には拙くて当然。しかし吉高由里子さんにおいては、いきなりパンチのきいた作品が立て続き(ちなみにこの2作品の合間には、三木聡監督とドラマ「時効警察」、映画「転々」で組んでいます)、存在感を見せつけてしまったのです。

となると次は、パブリックイメージが限定されてしまい似たような役(この2作品に近い役はなかなかないとは思いますが)が続いてしまうのが懸念材料。しかし吉高由里子さんはそこも回避し、また違ったベクトルで難役に挑戦していきます。

ドラマ「美丘-君がいた日々-」は難病に侵された役どころで、映画「きみの瞳が問いかけている」では目が見えない女性を熱演。特に後者では、「目の演技」が圧巻です。相手役の横浜流星さんと向き合う際の、「見つめる」の違い(見える/見えない)は、何度観ても惚れ惚れさせられます。

2 役への没入が生み出す、吸い込まれるような“陰の演技”

引用: Amazon Prime Video

先ほど述べた“難役”にも重なりますが、吉高由里子さんには大別すると「陰と陽」どちらのキャラクターも演じられる稀有な才能があるように感じます。「最愛」はまさに、その好例ですよね。

初期段階は「紀子の食卓」「蛇にピアス」など、ダークな要素をはらんだ作品が印象的だった吉高由里子さん。その後の「重力ピエロ」では、ある秘密を抱えたキーキャラクターに扮しました。出演時間が限られるものの、重要性が高いというポジションでは、彼女の“陰の演技”の強度が不可欠だったように思います。

「カイジ」「GANTZ」といった娯楽大作シリーズを挟み、挑戦した映画「ユリゴコロ」では、複雑な内面を抱えた殺人者を熱演。人間らしい感情が欠落し、「他者と異なる」感覚で生きてきた彼女が、愛を知り、後戻りできない自分の運命に苦しんでいくという壮絶な物語です。劇中には観るのにやや覚悟を要する生々しいシーンも含まれますが、吉高由里子さんの“没入演技”は必見。没入=役に深く入り込んだ結果、全身から漂う異様な雰囲気に、鳥肌が立つことでしょう。深く沈んだ目や、色を失った表情と、愛を知ってしまった際のギャップ――この辺りの上手さも、最新作のドラマ「最愛」と通じ合う部分と言えます。

3 何度も会いたくなる、嘘のない“陽の可愛らしさ”

引用: Amazon Prime Video

ここまで、吉高由里子さんのシリアスな作品を中心に紹介してきましたが、そこで終わらないのが彼女の驚嘆すべき点。それこそ、トリスのCMなどで吉高由里子さんに天真爛漫なイメージを抱いている方も多いでしょうし、どの作品を観るかで本人に抱く印象が変わるのが、まさに役者という感じがします。

映画においては、やはり「横道世之介」と「婚前特急」は外せません。「横道世之介」では、一生懸命なお嬢様をとびきりキュートに演じ、コメディエンヌとしての魅力をほとばしらせました。高良健吾さん演じる主人公の恋人役ですが、一緒にハンバーガーを食べに行くシーンは、見ているとつい微笑んでしまうはず。さらに、カーテンにくるまって恥ずかしがる告白シーンは、最高としか言いようがありません。そしてきっと、最後まで観たらじんわり涙があふれてくるはず。作品としても傑作です。

そして「婚前特急」。こちらでは、理想の人生を送るために、5人の彼氏から結婚相手を選ぼうとする女性を演じているのですが……なんだかんだで恋に振り回されていく姿がとっても味わい深い。男をクールに手玉に取ろうとする悪女なのか?なんて先入観で観ていると、主人公がどんどん翻弄されていってカッコ悪くなっていく。「別れて」と伝えたら相手の男性に「俺たち、付き合ってたっけ?」と言われてしまって「えええ」となったり、笑いをこらえずに観るのが難しいコメディです。その際に慌てふためく吉高由里子さんの可愛らしいこと! こちらも「恋とは」というテーマがちゃんと感じられて、爽快ながらもしっかり心に残ります。

4 「人」で居続けるコト。健気さに漂う“共感性”の担保

わたし、定時で帰ります。,吉高由里子

引用: Paravi

陰も陽も演じ分けられる吉高由里子さん。それを可能にしているのはもちろん卓越した演技力なのですが、ここからはもう少し細分化して考えていきましょう。フィクショナルなキャラクターよりも、等身大の人物を演じることが多い近年のドラマ出演作を中心にみていきたいと思います。

たとえば、「最愛」のプロデューサー&脚本チームと組んだ「わたし、定時で帰ります。」。本作で吉高由里子さんが演じているのは、定時で帰ることを信条にしている会社員。といっても、周囲は放っておいて自分だけという唯我独尊スタイルではなく、いかに効率的に仕事を終了させるか(そしてちゃんと良い仕事をするか)を追求し、さらに彼女がそうなった理由にはある背景があって……という、私たちの誰もが経験する「仕事」への見方をちゃんと汲んでくれています。

そもそも、こういった題材がドラマ化してしまうこと自体が「日本の社会では定時で帰れないもの=定時で帰ろうとする人物がフィクションの主人公として成立してしまう」という社会問題をはらんでいるもの。社会派ドラマの要素をまとっているからこそ、主人公に共感できるかどうかというのは生命線でもあったように思います。つまり、吉高由里子さんの演技が「私たちの代表」と思えるようなものでなければ、視聴者はついてこられない。実生活では定時で帰りたいのに帰れない人が多いわけですし、会社が居場所である人もいるわけですから。

そういった難易度の高い状況においても、見事な演技を披露できるのは、やっぱり吉高由里子さんが「人」であろうとし続けているからなのだと思います。原作より若い設定に引き下げられた「東京タラレバ娘」でも、ミステリー要素が入った「知らなくていいコト」でも、もちろん「最愛」でも――。吉高由里子さんの演技には、日常をちゃんと生きている、地に足の着いた人としての生活が見えます。

5 画面越しに伝わってくる“葛藤”――心の機微を繊細に表現

最愛,動画

引用: Paravi

一人の“人”だと感じられるから、共感できる。陰も陽も渡り歩く吉高由里子さんの演技にはそういた理由があるように感じますが、特に「最愛」を観ていて感じるのは、そのうえで“葛藤”を見事に見せきっている部分です。

「最愛」は、不可解な殺人事件に関わっているか定かではない容疑者の女性と、刑事の攻防を描いた物語。この2人は大学時代に両想いだったのが、とある事件で離ればなれになってしまい、久々に再会して――。という「Nのために」を彷彿とさせるドラマです。ここで重要なのは、刑事目線で「15年ぶりに再会した想い人が変わってしまっていた」というものではなく、両サイドの目線で描くということ。刑事役の松下洸平さん→吉高由里子さんだけではなく、双方向で「変わってしまった」「ここは変わっていない」と確かめ合うため、吉高由里子さん演じる主人公に対して、視聴者が「怪しい」と思う以上に、親近感や共感を抱けなければならない。

演技の配分が非常に難しい役どころですが、ここで効いてくるのが吉高由里子さんが魅せる“葛藤”です。自分が知っている真実を話せば、迷惑が掛かる人がいる。自分自身の過去のトラウマも明るみに出る。しかし、そうするとかつて好意を抱いていた相手を裏切ってしまう――。心の中に渦巻く苦悩や葛藤をきめ細やかに演じてくれるから、大粒の涙を流すといったような“見せていく”演技も、もう戻れない過去に傷つくも、気取られないようにする“隠す”演技も、観る者の心に響いてくるのです。

これはNHK連続テレビ小説「花子とアン」や、映画「きみの瞳が問いかけている」でも感じとられる特長で、セリフや行動の奥底に「悩む」というプロセスをしっかりと挟み、まとわせてくれているからこそだと思います。悩み抜くことを恐れずに役と真摯に向き合い、深くつながる吉高由里子さんならではの“領域”といえるのではないでしょうか。

まとめ

吉高由里子さんの新たな代表作となりそうな「最愛」が今後どのような展開を見せていくのか、そして彼女がどんな演技を見せてくれるのか。さらには、この作品の先に、どんな場所に僕たちを連れて行ってくれるのか――。2022年以降のさらなる活躍を楽しみにしつつ、「最愛」を見届けていきたいと思います。

 

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※ページの情報は2024年1月9日時点のものです。最新の配信状況は各サイトにてご確認ください。

SYO (映画ライター)

1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイトの勤務を経て映画ライターに。「CINEMORE」「装苑」「CREA」等に寄稿。劇場公開映画の脚本・編集協力や映画祭の審査員等も務める。

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