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役柄に深みを与え、巧みに演じ分ける役者・生田斗真の5つの才能【映画ライターが分析】

#生田斗真
2021年7月1日 by
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映画ライターのSYOと申します。日本のドラマ・映画界に欠かせない俳優さんの「5つの魅力」を分析する本企画、第16回は生田斗真さんをご紹介します。

ジャニーズ事務所に所属しつつ、現在は俳優をメインに活動する生田斗真さん。2020年には、ドラマ『ウロボロス〜この愛こそ、正義。』で共演した清野菜名さんとの結婚を発表。また、2021年1月クールのドラマ『書けないッ!?〜脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活〜』で主演を務めることも発表され、ますますの活躍が期待されています。

演技派なのはもちろん、やはりとても華があり、スター性は増すばかり。今回は、そんな生田斗真さんの俳優としての魅力を、映画を中心に、5つのパートで分析します。

1 トガッた役は彼に集まる? 作品選びの面白さ

2020年は、生田斗真さんの映画デビューからちょうど10年。2010年の映画『人間失格』から今日まで、彼のフィルモグラフィを見てみると、見事に濃い作品ばかり。もちろん、王道のラブストーリーもあるのですが、中身を観てみるとひねった構造になっていたり、著名な監督の作品だったり、必ず“何か”特長が潜んでいます。

象徴的なのは、2013年の映画『脳男』。本作で生田斗真さんが演じたのは、人間らしい感情を奪われた殺人マシーンです。爆弾魔に猟奇殺人鬼など、サイコパスがわらわらと出てくる過激なアクションサスペンスで、かなり挑戦的な一本。生田斗真さんは役づくりのために半年間にわたって肉体改造を行い、さらに引きこもり生活を続け、何時間もソファから動かないこともあったとか。役と完全に同化した狂気の姿には、いま観ても戦慄させられます。

こうしたエピソードからも彼の役者魂を感じますが、『脳男』に限らず、他の作品でも意識的に攻めた内容のものや、自分に負荷をかけるような役どころを重点的に選んでいる生田斗真さん。そのため、彼の新作が発表されるたび「次は何を仕掛けてくれるのか?」とワクワクしてしまいます。

2 己の美しさを“利用”し、役に深みを与える

映画『脳男』では、「美しさ」と「残虐性」、「無感情」のギャップが、独特の怖さを生み出していました。ということは、生田斗真さんの美しさが、前提にあるということ。彼が常人離れした美しさを画面にもたらすほど、役の奥行きが増すのです。

『るろうに剣心』シリーズの大友啓史監督と組んだ映画『秘密 THE TOP SECRET』でも、すごく印象的なシーンがあります。本作で生田斗真さんは「死者の脳に残った記憶を映像化し、迷宮入りした事件を解決に導く」捜査官を演じているのですが、ソファに横たわり眠っていた彼が目を開ける、ただそれだけのシーンが衝撃的なまでに美しい。初見時、「絵画!?」とおののいたことを覚えています。ちなみに本作では、松坂桃李さんや岡田将生さんとの演技対決も楽しめます。洗練された衣装の着こなしも素敵。

考えてみればそもそも、生田斗真さんは映画『人間失格』でとにかく女性を魅了してしまう主人公(それでいて厭世的)を違和感なく演じ切り、映画『源氏物語 千年の謎』では、あの“絶世の美男子”光源氏に扮しました。映画『僕等がいた』では、吉高由里子さん扮するヒロインが生田斗真さん演じる人気者の男子に見とれるシーンがありますが、それも納得です。

3 弱さや、不安定さに身を浸した「陰の演技」

ただ、生田斗真さんは何も、モテモテのイケメンばかりを演じているわけではありません。むしろその逆で、社会からはじき出されてしまう人物や、どこか欠落した“弱者”も的確に体現できるからこそ、彼は「演技派」と呼ばれるのだと思います。

映画『予告犯』では、動画配信サイトで犯罪予告の動画を流す謎の男役に挑戦。新聞紙で作ったお面をかぶるという鮮烈なビジュアルながら、生田斗真さんのシリアスな声の演技が引き立ち、大きな武器といえる「顔」が見えなくても問題ない、むしろ実力が際立つのだ、ということを証明。また、主人公が抱える壮絶な過去が浮かび上がってくるのに従い、哀しみが観客に広がっていくような“仕掛け”を、見事に成立させています。現代社会を痛烈に風刺するセンセーショナルなストーリーでありつつ、涙を誘う切ないドラマもありますので、未見の方はぜひチェックしてみてください(窪田正孝さんの演技も素晴らしいです)。

映画『友罪』では、元雑誌記者の日雇い労働者を、繊細に演じました。過去に犯してしまったある“罪”を悔い続け、それでもどうしたらいいかわからなくなり、人生を見失ってしまった男。そんな彼が知り合った同僚は、世間を震撼させた凶悪事件の犯人だった――。元少年犯を演じた永山瑛太さんの人間離れした怪演もすさまじいのですが、彼をつなぎとめようとする生田斗真さんの、人間の“弱さ”をしっかりと伝えきる妙演も出色の出来。オーラを消し去り、アイデンティティを喪失した男の苦しみを克明に表現しています。

映画『脳男』の瀧本智行監督と再び組んだ映画『グラスホッパー』では、婚約者を失い、復讐のために裏社会に潜入する元教師を熱演。ベースが一般人なのでビビりもすれば逃げもする、でも敵は討ちたい、というぐちゃぐちゃになった精神状態を生々しく見せています。本作は生田斗真さんが演じた主人公のほか、個性豊かな3人のキャラクターが織りなす群像劇の側面も持っており、浅野忠信さん扮する「自殺専門」の殺し屋、山田涼介さん演じるナイフ使い、どちらも強烈です。とくに山田涼介さんが本作で魅せるぎらついた演技は、記憶に残るのではないかと思います。

4 役を“人間”にまで昇華する表現力

生田斗真さんの俳優としての魅力をつづってきましたが、ここで個人的に彼のマスターピースだと感じている1本を紹介させてください。それは、映画『彼らが本気で編むときは、』。本作1本観るだけで、役者・生田斗真の無限の表現力を思い知る――。そんな傑作です。

生田斗真さんがこの映画で演じたのは、トランスジェンダーの介護士。これまでの出演作とは全く異なる、優しくて、暖かくて、包容力がある彼の演技に、驚かされるとともに満たされるのではないでしょうか。いや、「演技」と言うことをはばかられるほど、本作の生田斗真さんは「生きている」。生田斗真さんではなく、「リンコさん」としてしか観ることができません。そしてどんどん、好きになっていく。この人の幸せを、自然と願うようになる。「役者の存在を感じさせない」という、ある種最大の栄誉を勝ち得た作品なのではないでしょうか。

『僕等がいた』の三木孝浩監督との再タッグ作『先生!、、、好きになってもいいですか?』では、生徒のまっすぐな好意に戸惑いつつも、惹かれてしまう教師をグッと抑えた演技で魅せました。生徒として慈愛の眼差しを向けていたはずなのに、自分の中で大切な存在になってしまったと気づく――。人物の微細な“揺らぎ”や“変化”は、生田斗真さんの腕の見せどころといえるかもしれません。広瀬すずさんのイノセントな演技も必見です(ちなみに、中村倫也さんがモテモテ教師を演じています)。

5 ハジけるときはとことん! 喜劇で見せるギャグセンス

生田斗真さんは、実はコメディも大得意。金髪に染めて挑んだ映画『土竜の唄 潜入捜査官REIJI』と、その続編『土竜の唄 香港狂騒曲』では、熱血だけが取り柄の警官がヤクザに潜入捜査することになり……という奇想天外なストーリーを、ハジけまくったパワフルな演技でぐいぐいずずいと引っ張っていきます。変顔、絶叫、下ネタ、アクション……フルスロットルで駆け抜けてくれるので、観ているこっちもゲラゲラと笑ってしまいます。

映画『土竜の唄』はアッパーなギャグでしたが、ドラマ『俺の話は長い』では、ダウナーな笑いで魅了します。本作では、口だけは超・達者な出戻りニートをひょうひょうと好演。詭弁を怒涛の勢いで並べ立て「だよね?」「ん?」とドヤ顔で押し切るさまは、腹が立つけど面白い! それでいて、面倒見がよかったり、実は優しかったり……憎めない好人物というのが◎。原田美枝子さん・安田顕さん・小池栄子さん・清原果耶さんといった共演陣との丁々発止のやり取りも、ニヤニヤさせられます。

大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』の脚本家・宮藤官九郎さん、ドラマ『Mother』の演出家・水田伸生さんが、外出自粛期間という“苦境”を逆手にとって作り上げたスペシャルドラマ『JOKE〜2022パニック配信!』では、ほぼ一人芝居にチャレンジ。引きこもりの芸人(結構口が悪い。性格も……悪い)を嫌味たっぷりに演じつつ、強烈なブラックジョークを突きつけました。こういった攻めた作品に臆することなく飛び込んでいくのも、生田斗真さんの強みかもしれませんね。

まとめ

今回は映画を中心に紹介しましたが、ドラマも加えていくと生田斗真さんの演技は変幻自在。特に近年は、より「前の作品とは違うテイスト」を見せてくれる傾向が強くなったように思います。

ならばこそ、攻め続ける生田斗真さんがこの先、どんな新しい世界を開拓していくのか、楽しみでなりません。

※ページの情報は2021年7月1日時点のものです。最新の配信状況は各サイトにてご確認ください。

SYO (映画ライター)

1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイトの勤務を経て映画ライターに。「CINEMORE」「装苑」「CREA」等に寄稿。劇場公開映画の脚本・編集協力や映画祭の審査員等も務める。

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