福田雄一監督と相思相愛のムロツヨシ。運命的な出会いから主役級俳優へ!
#ムロツヨシ #福田雄一ドラマ『Iターン』の主演をはじめ、ドラマに映画に舞台にバラエティに引っ張りだこのムロツヨシさん。しかし、そのブレイクまでの道のりは長いものでした。
デビューからギャラがもらえる仕事を得るまでに8年。初出演になった本広克行監督の『サマータイムマシン・ブルース』(2005年)も、舞台の打ち上げで本広克行監督に「ムロツヨシを使ってください」と何度もアピールしたからなのだとか。
引用: ネットもテレ東
「勇者ヨシヒコと魔王の城」メレブ役でつかんだチャンス
その後、ムロツヨシさんは山田孝之さん主演『勇者ヨシヒコと魔王の城』(2011年、テレビ東京系)のインチキ(?)魔法使い・メレブ役で、独特の間と奇妙な喋り方を活かし強烈なインパクトを残します。
そして翌年『平清盛』でNHK大河ドラマ初出演。また2017年には『おんな城主 直虎』で大河ドラマ初レギュラーを獲得。また戸田恵梨香さん主演のラブストーリー『大恋愛~僕を忘れる君と』(2018年、TBS系)では、これまでのコミカルなイメージを一新。その演技力が認められ、ついに、将来が希望できる俳優に贈られるエランドール新人賞を、42歳にして獲得しました。
福田雄一監督との出会いでムロツヨシの人生が変わる
引用: Hulu
そんなムロツヨシさんを語る上で、外せないのが人気監督・脚本家の福田雄一の存在。ムロツヨシさん自身、2015年の『はまれぽ.com』のインタビューで、「ドラマ『勇者ヨシヒコと魔王の城』で、これまで試行錯誤してきたことを自由にやっていいと言ってくれる福田雄一監督が現れたんです。そこでみなさんにムロツヨシを知ってもらえ、そのあたりから(自分の芝居と作品との)歯車が合い始めた」と語っています。
また2018年にエランドール新人賞を獲ったときのスピーチでも「いちばん感謝しなければいけない人間がいます。私がテレビカメラの前で何もできなかった30代の頃、福田雄一という男が初めて“好きなようにやっていいよ、ムロくん”と。あの日からみなさんの見てくれる目が変わって、“なんだこいつは”と。それで少しずつムロツヨシという名前を覚えて頂けたような気がします」と感謝を述べています。
役者を“覚醒”させる名匠・福田雄一監督の功績
引用: Hulu
そんな福田監督の演出はどのようなものなのでしょうか?『今日から俺は!!』(日本テレビ系、2019年)で主演の三橋役を務めた賀来賢人さんは、現在WOWOWで放送中の主演作『アフロ田中』での囲みインタビューの際、「福田監督の演出は独特で、(面白いと思うことを)足せば足すほど面白くなる。それを福田監督が料理してくれる」と分析。賀来が『今日から俺は!!』で一般層に一躍知名度を広げたことを思うと、やはりムロツヨシさんの躍進も福田監督の功績が大きいといえます。
福田マジックで佐藤二朗、柳楽優弥、鈴木亮平も”覚醒”
このほかにも福田監督は『33分探偵』『勇者ヨシヒコ』シリーズで、佐藤二朗さんの“挙動不審キャラ”をそのままお芝居に取り入れる変則的な演出をし、佐藤二朗さんを人気俳優へ。
また『アオイホノオ』(2014年、テレビ東京系)では、“カンヌの呪縛”といわれ低迷を続けていた柳楽優弥さんの新たな狂気的&コミカルな魅力を引き出した。
このほか映画『HK変態仮面』(2013年)では、肉体から改造&ふざけたことを思い切り真面目にやらせる芝居を鈴木亮平さんにさせ、鈴木亮平さんは『花子とアン』(2014年、NHK総合)、『西郷どん』(2018年、同)など役と活躍の幅を広げていきます。
これらを総合すると、福田監督の持つ力とは、役者を“覚醒”させること。ですがそれには役者に実力があることは必須で、“覚醒”させ注目された後、これまであまり気に留められてなかったその役者の本領が発揮されていくというのが福田イズムの影響を受けた役者たちのパターンなのです。
ムロツヨシさんが『大恋愛~』でシリアスな芝居を見せてエランドール賞新人賞を獲得したのも、そもそもムロツヨシの演技力が優秀であったといえるでしょう。
芸能界の気配り王はドッキリを仕掛けられても神対応
ムロツヨシさんは“個性派”“演技派”として世間に認知されましたが、「芸能界の気配り王」としても有名です。それが一般に知れたのが『~モニタリング』の2018年冬SPでのゲスト出演時。
このときムロツヨシさんは「もしも取材中に記者が失礼なことをしたら…」とのドッキリを仕掛けられました。たとえ名前を「ムツゴロウ」と間違えられようと、インタビューの回答に記者が延々と「からの?」「からの?」とあおられようと、ドラマと関係ない小泉孝太郎(ムロの親友)の話を深掘りされようと、怒らず冗談を交えながらしっかりと回答。これにSNSでは「ムロさんが神すぎる」「神対応、本当にいい人なんだろうな」などの声があふれました。
壮絶な幼少期がムロツヨシの明るさの源泉
2018年10月7日発売の『日刊スポーツ』で、ムロツヨシさんは「子どものころはお調子者でした。親戚に育てられたので、それが生きる術だったんです。それに家庭内で不幸じゃないとアピールしなきゃならなかった。預かってくれているわけですから。だから小学校に行っても、みんなが笑ってくれたほうが安心しましたし、人が笑ってくれていれば、僕の存在意義はあるんだって」と告白。
そんなムロツヨシさんの周りには多くの人が集まってくるのも。シリアスなお芝居が人の心に染みるのも、こうしたバックボーンがあることを知ると、当然なことに思えてきます。
福田監督が死んだら生きていけない
実際、役者として人間として、福田雄一監督からのムロツヨシさんへの信頼は厚いようです。エランドール新人賞のスピーチには福田監督が登壇。福田監督は「僕は弱音はムロくんにしか吐かないと決めている」と明かし、「僕が落ち込んで死にたくなったとき、それをムロくんに伝えたら、ムロくんが“福田監督が死んだら僕も生きていけない。だから早めに知らせてほしい”と言ってくれた」と照れながら話し、この話にムロツヨシさんは感無量の涙を見せていました。
ムロツヨシさんの実力を開眼させた福田監督、そして福田監督の心の支えになっているムロツヨシさん。この二人のコンビが今後も楽しい作品を送り出してくることは間違いないでしょう。
衣輪晋一
メディア研究家・コラムニスト・コピーライター。サブカルライターを経てインドネシアでボランティア。帰国後は文芸批評と民俗学の「フィールドワーク」をメディア研究に取り入れエンタメ記事を作成。「TVガイド」などの雑誌、新聞、Web、ドラマ公式HPなどで執筆。
※ページの情報は2023年12月25日時点のものです。最新の配信状況は各サイトにてご確認ください。