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中村倫也、新フェーズへ。近作に見る進化点【映画ライターが分析】

#中村倫也
2024年1月23日 by
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TVマガをご覧の皆さん、こんにちは。SYOと申します。毎回、人気俳優&作品について書かせていただいてきた本連載、今回は主演ドラマ「石子と羽男 そんなコトで訴えます?」が絶好調の中村倫也さんについて、直近の活躍ぶりを見ていきたいと思います。

本連載で最初に中村倫也さんについて触れたのは、2020年の3月のこと(記事はこちら)。あれから2年半の月日が流れ、ますます活躍の場を広げられた印象です。自分自身もこの時期に中村倫也さんとお仕事でご一緒できたことで人生が激変したため、ここまでの自分の道のりを振り返ると非常に感慨深い……。本稿ではそんな個人的な想いを織り交ぜつつ、最旬の中村倫也さんの魅力を深掘りしていきます。

引用:Amazon

パブリックイメージとは一味違う役柄への挑戦

引用: Hulu

「カメレオン俳優→ミミックオクトパス俳優」と称されるように、濃いも薄いも多種多様な役柄を演じてきた中村倫也さん。そんななか、近年はあるひとつの傾向として御曹司的な役どころが増えてきたように感じます。ドラマ「美食探偵 明智五郎」はまさにそうで、映画「サイレント・トーキョー」「騙し絵の牙」、ドラマ「この恋あたためますか」では社長ポジション、ドラマ「不協和音 炎の刑事 VS 氷の検事」や映画「ファーストラヴ」では検事と弁護士(どちらもクール系)でした。

どの作品でも異なる存在感を発揮していましたが、ひとつのパブリックイメージとして「中村倫也ゾーン」的なものが固まりつつあったのではないでしょうか。俳優として活躍すればするほど、これまでに演じた役が観る側のイメージとして積み重なっていくもの。それを武器に変える役者もいますが、時として役柄が限定される危険性もあります。そんななか、直近の中村倫也さんの出演作を拝見すると、新たな潮流を感じずにはいられません。

これまでとは一味違う中村倫也さんの新たなる魅力――。一言で表すなら、「愛されヒーロー」とでもいいましょうか。直近の中村倫也さんの出演作には、誰かに愛され、支えられることでヒーローになるといったような特徴があり、そのことがより役に深みや人間味をもたらしています。

「愛されヒーロー」という新ジャンル

石子と羽男―そんなコトで訴えます?―,動画

引用: Paravi

たとえば映画「水曜日が消えた」の吉野耕平監督と再び組んだ映画「ハケンアニメ!」では天才アニメーション監督を演じましたが、これまでのように周囲と壁を作るタイプの孤高の存在ではありません。いいものを生み出すために七転八倒する泥臭いキャラクターでありながら、それを周囲には隠してクールぶる……のだけど、隠しきることができない(カッコつけているところがバレちゃう)という、何とも愛すべき人物でした。

逆に言えば、カッコ悪いところがあるからこそカッコいいところがより輝くというギャップ。しかも、孤高の人間が少しずつ心を開いていくような従来のベクトルとは真逆で、最初に締まらないところを見せたうえで決めるところは決めるという「カッコ悪さから始める」ところが絶妙です。

現在放送中のドラマ「石子と羽男 そんなコトで訴えます?」でも、フォトグラフィックメモリー(見たものを映像として記憶する能力)というスキルを持ちながらアクシデントに極端に弱い弁護士を好演。そんな彼が、有村架純さん演じるパラリーガルの支えを得てヒーローになっていく流れには、自然と応援したくなる親密さがあります。

ただただカッコよく引っ張っていくのではなく、欠陥や欠落、弱点を見せていくことで人間らしさが増し、観る側がそのキャラクターに共感したり、好感を持つという“業(わざ)”が効いたアプローチ。しかも初っ端にカッコ悪さを先に見せる方法論を取れたのは、恐らく「カッコいいクールキャラ」を演じてきた時期を経ているから。そう考えると、過去に演じた役であったり固まりつつあったパブリックイメージを逆手にとった“上手さ”に、なおのこと驚かされます。

プロデューサーや監督がそこまで考えて仕掛けている向きもあるでしょうが、その青写真は実際の中村倫也さんの豊かな表現力があってこそ実現するもの。カッコ悪ささえ武器にしてしまった中村倫也さんは、どこまで行ってしまうのでしょうか。

今後の出演作も新味の予感

引用:Amazon

「愛されヒーロー」という柱をもう少し拡大解釈して「欠点を魅力に変える」と考えていくと、映画「ウェディング・ハイ」で演じた流されやすい新郎や、舞台「狐晴明九尾狩」での出世コースから外れた陰陽師など、直近の様々なキャラクターがより腑に落ちてきます。「コントが始まる」のマネージャーも、やる気がないように見えて実は情に厚いキャラクターでした。

ではこの先、中村倫也さんはどこに向かうのか? 現時点で発表されているのは、ミュージカル「ルードヴィヒ ~Beethoven The Piano~」とAmazon作品「仮面ライダーBLACK SUN」。どちらも概要を聞くだけでワクワクさせられます。ちなみに後者では「孤狼の血」の白石和彌監督と再タッグ。特報を見るに、かなりダークかつシリアスな作品になりそうで、「孤狼の血」やドラマ「珈琲いかがでしょう」で垣間見せた狂気が暴走する“こわさ”がまた顕現するのではないかと期待が高まります。

しかし改めて、いまの中村倫也さんにはこれまで以上に“ブレられる強さ”を感じます。できない役がないし、できない表現もない。どこにも、どこまでも振り切れてこそ役者は万物を演じられる存在になっていく――。そんな、体系づけられない未知のゾーンにまで向かっていくような中村倫也さんを、この先も「ついていきます!」精神で追いかけてゆきたいと思います。

※ページの情報は2024年1月23日時点のものです。最新の配信状況は各サイトにてご確認ください。

SYO (映画ライター)

1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイトの勤務を経て映画ライターに。「CINEMORE」「装苑」「CREA」等に寄稿。劇場公開映画の脚本・編集協力や映画祭の審査員等も務める。

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