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【映画ライターが分析】観る者がひれ伏す美しい圧を持つ役者・中村倫也の5つの才能&飄々とした愛らしさ

#凪のお暇 #中村倫也 #SYO
2021年7月1日 by
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映画ライターのSYOと申します。人気俳優の「5つの魅力」を分析していく連載企画、第4回目となる今回は、今がまさに絶頂期!愛され演技派・中村倫也さんについて書かせていただきます。最初に断っておきますが、めっちゃ好きです。

中村倫也さんは、1986年生まれの33歳。小池徹平さんや柄本佑さんと同い年ですね。高校1年生のときにスカウトされ、2005年にデビュー。初出演ドラマは「H2〜君といた日々」(懐かしい……)、初出演映画は「七人の弔」だそうです。

ちなみに自分が初めて「おっ」と思ったのは、2005年のオムニバス映画「乱歩地獄」。中村倫也さんはその内の「鏡地獄」に小林少年役で出演しています。

耽美と怪奇が混ざり合った鮮烈な映画で、綺麗な少年がいるなぁ、と思ったことを憶えています。そのときはまだ中村倫也さんと認識してはいませんでしたが、今思うとあれがファーストコンタクトだったのでしょう。

ここからは恒例の「5つの魅力」を書いていきます。中村倫也さんの演技力が突き抜けているのは誰もが知るところなので、細分化した少々ニッチな目線で見ていきたいと思います。宜しければお付き合いくださいませ。

引用:Amazon

 

1 心、呑み込まれる――厭世的かつ文学的な「狂気」

中村倫也さんには多くの“顔”がありますが、個人的に最も打ちのめされたのがこの部分。スクリーンに映る彼の佇まいには、観る者をひれ伏させるというか傅(かしず)かせるような、美しい「圧」があります。人の上に立つことを宿命づけられたような、カリスマ性ですね。そしてそこに、そこはかとなく高貴な文学のにおいが漂うのが彼らしい。

そのことを裏付ける、2つの映画があります。「孤狼の血」と「愚行録」です。映画「孤狼の血」で中村倫也さんは血気盛んなヤクザを演じているのですが、もし未見の方はご注意ください……めちゃくちゃカッコいいです。

髪を振り乱し、目を血走らせ、暴力に突き進んでいく危険な色気。役所広司さん・松坂桃李さん・江口洋介さんら錚々たる俳優陣の中でも、演技の攻撃性という意味ではトップクラス。しかし、どの瞬間を切り取っても美しいのです。厭世的で退廃的、そしてどこか刹那的でもある。

一瞬の“生”を駆け抜ける男のピカレスクロマンというか……思えば、映画「乱歩地獄」も文学を過激に映像化した作品。中村さんには、書物のにおいがよく似合います。

そして映画「愚行録」。一家惨殺事件の真相を追う週刊誌の記者(演じるのは妻夫木聡さん)を主人公にしたミステリーです。この作品は後半に衝撃的な展開が待ち受けていて、映画としても大変に面白いのですが、1つのテーマは「人間の表と裏」。本作で中村倫也さんは、証言者の1人としてとびきり悪い“二面性”を見せてくれます。

爽やかな青年に見せかけて、時折漏れ出てきてしまうどうしようもないほどの邪気――彼の演技力を存分に堪能できるとともに、冷徹な役をやらせたときの怖さを感じられることでしょう(ただし、本作でも美しいんだなぁ)。

この2作で中村倫也さんが発揮しているのは、動と静の2つの「狂気」。そう、中村倫也さんは狂的な役を演じるのがとても上手い。しかも、ただ喚いたり叫んだりするのではなく、身体の芯から“そういう人”になりきっているのです。

一般的な役者さんは、「役を纏う」ことが多い。自分を媒介に、服を着替えるように役を替えていくのです。ただ中村倫也さんの場合は、軸である「自分」すらも変えてしまう。引き出しが多いとかいう次元ではありません。別人なのです。だからこそ、最新主演映画「水曜日が消えた」では7役を演じるという離れ業をやってのけることができたのでしょう。

2 美しさの奥にあった鍛錬の日々。愚直な「努力家」

中村倫也さんの狂的な役はまだまだあります。ドラマ「闇金ウシジマくん Season3」で演じた強烈なキャラクターをご覧になった方はいらっしゃるでしょうか? 彼は本作で人を洗脳する男を演じているのですが、他人を懐柔させつつ高圧的に支配し、関わる者たちの人生を狂わせていくさまが非常に恐ろしい……。

ちなみに、本作で演じたナルシストなキャラが“闇”属性だとしたら、王子的なものへと変化した“光”属性がTikTokのCMなのではないかと思っています。気になる方はぜひ見比べてみてください(どちらも美しい)。

ただ、恐るべきはこの狂的な魅力が「生来のもの」ではないこと。ここまでの圧倒的な存在感を発揮できたのは、ひとえに中村倫也さんの努力のたまものでしょう。

冒頭で「中村倫也さんは高1でスカウトされて芸能界入り」と書きましたが、彼の役者人生は決して順風満帆なものではありませんでした。18歳のデビューからブレイクしたとされているドラマ「半分、青い。」まで、ざっと13年かかっています。

彼が所属する芸能事務所トップコートの渡辺万由美社長は、中村倫也さんの才能を信じて15年間契約を更新し続けたそうです(いい話……)。中村倫也さんご本人も、なかなか役者の仕事がなかった20歳ごろ、引っ越しバイトで明け暮れる生活を「自分は役者だから」と辞め、役者1本に専念したとか(八嶋智人さんをはじめ、役者の先輩たちにご飯をおごってもらっていたそう。これまたいい話)。

過去のインタビューなどで「腐っていた時期もあった」と語っていますが、ひたすら自分を磨き続けた中村倫也さんの努力は、「実力」となって彼の大きな武器となりました。多くの人に支えられ、そして何より自分を信じ続け、諦めなかったからこその現在。人気がついてきた今、彼の地位は崩れることはないでしょう。

3 かわいい役も得意!ずっと観ていたくなる「愛らしさ」

個人的な趣味全開で狂的な中村倫也さんを多く紹介してきましたが、小動物のような愛らしいキャラクターも彼の得意とするところ。近作であればドラマ「凪のお暇」で演じたヒッピー風の青年は、そんな魅力が大爆発した役でしょう。

誰にでも優しい(しかも素で!)ため、関わる女性が皆メンヘラ化するというこれも一種の狂的な役どころですが、実は原作コミックを読むと全く風貌が違うのです。しかし、両方見比べても一切違和感がありません。っていうか、この中村倫也さん、めっちゃいいねかわいい……ということで原作ファンだった僕も一瞬で沼に落ちたのでした。

どこか抜けてる天然系男子を演じた映画「美人が婚活してみたら」も、捨てがたい。優しく穏やかでいい人だけど、服のセンスがおやおや?だったりエスコートが苦手……というような部分で、劇中では田中圭さん演じる遊び人の医者と比較されていましたが、なんてぜいたくな悩みなんでしょうね。けしからん。

ちなみに、田中圭さんとはドラマスペシャル「不協和音 炎の刑事VS氷の検事」で21年ぶりに再会した兄弟を演じます。こちらではクールな検事役。お2人の演技対決が楽しみですね。

「不協和音」もそうですが、「出来る男」を楽しみたいなら、映画「先生!、、、好きになってもいいですか?」の人気教師、映画「オズランド 笑顔の魔法おしえます。」のエリートサラリーマン辺りでしょうか。ちなみに「オズランド」では、中村倫也さんがずぶ濡れになるというサービスショットがあります(ありがとうございます)。

それに加えて個人的な“推し”を挙げると、神木隆之介さん扮する主人公(映画「屍人荘の殺人」で再共演)を見守る陽気な先輩を演じた実写映画「3月のライオン」。こちらでは、マッシュルームヘアにお洒落眼鏡といういでたちで原作を完璧にトレースしています(余談ですが、マッシュルームヘアといえばSimejiのCMを思い出しますね)。

そして、究極的に美しい役なら同じ大友啓史監督の映画「影裏」をぜひ。ネタバレに抵触するため多くは語れないのですが、とても切ない役で物語にそっと哀しみを添えてくれます。ご本人も「とてもとても難しかった。繊細に演じました」と語っていますね。

白石和彌監督作の映画「日本で一番悪い奴ら」と「孤狼の血」で全く違う役を演じたように、同じ監督の作品でも別の色を出せるのが中村倫也さんの大きな魅力ですね。ちなみに、「影裏」では「日本で一番悪い奴ら」の綾野剛さんと180度違う役で再共演しています。

4「アラジン」でいかんなく発揮された「美声×歌唱力」

申し訳ございません、ここまで飛ばしすぎました……。想定以上の長文になってしまったため、残り2つはコンパクトにいきましょう。ここまで演技面を語ってきましたが、中村倫也さんは歌もお上手。これまで多くの舞台に立っているためさもありなん、ですが実写映画「アラジン」の吹き替え声優でその歌唱力が絶賛されました。

本作ではオーディションを勝ち抜き主人公のアラジンを演じていますが、中でも圧巻なのは誰もが知る「ホール・ニュー・ワールド」を完璧に自分のものにしていること。中村倫也さんのアダルトでやや硬質な美声が非常にハマっており、ヘビロテは確定なのですが、やはりディズニー作品の感情が高ぶる→歌へと突入の流れを忠実に演じるためには、演技力が必要不可欠。そのあたりも流麗さも、流石としか言いようがありません。

5「ヒョウモンダコ俳優」と呼ばれたい?絶妙な「言葉選び」

 さてさて最後の項目です。中村倫也さんは話も面白い。トーク番組での言葉のセンスもそうですし、Twitterでのちょっとした投稿もほっこりさせてくれます。自分の写真をUPして「くりんくりん。」とかね。かわいいかよ。

インタビューなどでも、女性の好印象ポイントを聞かれると「服を脱がす前?」と返したり、「徹子の部屋」では飼っているハムスターについて熱く語ったりと全く飽きさせることがありません。

どんな役にも変身できる役者を「カメレオン俳優」と呼びますが、本人はより擬態能力の高い「ミミックオクトパス俳優」や「ヒョウモンダコ俳優」と呼ばれたい、と志願しているのは有名なエピソード。やっぱり中村倫也さんは最高ですね。

皆様、ここまで読んでいただきありがとうございました。長かったよね……ごめんなさい。中村倫也さんの魅力は尽きることがないのです。

そんな彼の最新主演ドラマは、「美食探偵 明智五郎」。「海月姫」「東京タラレバ娘」など実写化作品も数多い漫画家・東村アキコさんの人気作になります。原作がたいそう面白く、「実写化したら誰が演じるのかな」と楽しみにしていたら中村倫也さん!ぴったりです。とにかくグルメなお坊ちゃんの探偵というキャラクターを、楽しく演じてくれることは間違いありません。映画「水曜日が消えた」とともに、ぜひチェックしてみてください。

※ページの情報は2021年7月1日時点のものです。最新の配信状況は各サイトにてご確認ください。

SYO (映画ライター)

1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイトの勤務を経て映画ライターに。「CINEMORE」「装苑」「CREA」等に寄稿。劇場公開映画の脚本・編集協力や映画祭の審査員等も務める。

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