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長ゼリフから多面性キャラまで…圧巻の演技力を誇る堺雅人の魅力

2024年1月9日 by
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TVマガをご覧の皆様、ご無沙汰しております。SYOです。2023年夏クールのドラマが続々と最終回を迎えつつある今日この頃。今クールの目玉はやはり「VIVANT」だったのではないでしょうか。「半沢直樹」の福澤克雄監督が原作・演出を務め、モンゴルでの長期ロケを敢行。相当な制作費がかかったであろうリッチな映像&民放ドラマの歴史を変える規模のスケール感が話題を集め、先読みできない物語や個性豊かなキャラクターに魅了される視聴者が続出しました。

その主演を任されたのが、堺雅人さん。本作でも特殊な主人公を見事に演じ切っています。本稿では、「VIVANT」で堪能できる堺雅人さんの魅力を、過去の出演作を交えながら紹介していきたいと思います。なお、「VIVANT」の中盤くらいまでのネタバレを含みますのでご注意ください。

引用: U-NEXT

長ゼリフの高速処理!「言い立て」の上手さ

引用: U-NEXT

堺雅人さんの芝居の特長といえば、長ゼリフをハイスピードかつ朗々とまくしたてられる「言い立て」の上手さではないでしょうか。キレッキレの唯我独尊弁護士を熱演し、一大ブームを築いたドラマ「リーガル・ハイ」や、「やられたらやり返す! 倍返しだ!」が流行語となった人気作「半沢直樹」等々、堺雅人さんの長ゼリフが見せ場として組み込まれた作品は数多くあります。

「VIVANT」は相当入り組んだ物語のため“説明ゼリフ”が必要になってきますが、ともすればダレてしまう部分が堺雅人さんの手にかかればエンタメへと変貌。米の重さの違いから不正を見抜く推理ショーや株の信用取引の説明シーン等がその好例で、「見られるどころか魅了される」というレベルにまで昇華していました。「VIVANT」や「半沢直樹」にみられるように、長ゼリフの中でボルテージを上げていく方法論も彼ならではだと思います。

映画「武士の家計簿」やNHK大河ドラマ「真田丸」といった時代劇でも当時の時代背景を反映したセリフを見事にこなし、映画「DESTINY 鎌倉ものがたり」ではスランプに陥った作家の切羽詰まった状態を体現。映画「クヒオ大佐」では、得意の話術で女性たちをだます結婚詐欺師に扮しましたが、堺雅人さんのスキルがあってこそ妙な説得力が醸し出されていました。こちらもご興味があればぜひ見てみて下さい。

温厚に見えて実は…「多面性」キャラが得意

引用: Amazon Prime Video

そして――堺雅人さんの演技力がもたらす「二面性」にも注目したいところ。「VIVANT」で演じた主人公・乃木は、幼少期に巻き込まれた事件のせいで人格が二つに分化。「F」という強気で荒っぽい性格が出現しました。いわば本作では一人二役を演じるわけですが、それだけではなく乃木も工作員としていくつもの顔を使い分けているため、「ちょっと頼りない商社マン」「国防のためには躊躇なく殺人も犯す工作員」「父親との再会を願う息子」「愛することを知りたい男」「F」といった様々な表情が入り乱れていきます。先ほど「二面性」と言いましたが、ここまで行くともう「多面性」ですね(姿勢や動作、声色等々もガラリと変わるのが凄い!)。

ここで思い出すのは、2010年のドラマ「ジョーカー 許されざる捜査官」です。昼は温厚な刑事、夜は冷徹な正義の執行人という2つの顔を持った主人公を演じ切りました。衝撃回だった「VIVANT」第4話の「お前を排除する」に、「ジョーカー 許されざる捜査官」の決めゼリフ「お前に明日は来ない」を重ねた方もいらっしゃるのではないでしょうか。或いは、切ないヒール(悪役)を熱演した「新選組!」も……。

こうしたダーク/シリアスな堺雅人さんの極致といえるのが、映画「その夜の侍」です。ひき逃げ事件で妻を失い、狂ってしまった男の狂気と悲哀を鬼気迫る演技で体現しました。標的となるひき逃げ犯に扮した山田孝之さんとの演技対決も見ものです。

ちなみに、「演じ分け」というテーマでは、殺し屋のふりをすることになる劇団員に扮した映画「鍵泥棒のメソッド」も挙げられます。こちらはコミカルな堺雅人さんを堪能できますよ。

ギャップを引き立たせる「いい人」の説得力

南極料理人,動画

引用: TSUTAYA DISCAS

上記の「変貌」を引き立たせているのが、堺雅人さんならではの「可愛らしさ」ではないでしょうか。「VIVANT」も、当初こそいい人だけどおっちょこちょいな乃木が実はエリート工作員集団「別班」のメンバーと判明した瞬間に度肝を抜かれた方が多かったかと思います。そうしたギャップを作れるのも、堺雅人さんの大いなる魅力でしょう。

例えば、彼の代表作のひとつである映画「南極料理人」は、クセ強なメンバーに振り回されるお人よし料理人が絶妙にハマっていました。首相暗殺の濡れ衣を着せられた一般人に扮した映画「ゴールデンスランバー」も、堺雅人さんの“パンピー感”が絶妙で、先読みできないスリルを創出していました。「残された武器は人を信頼することだけ」というセリフも、実に説得力を帯びていたと感じます。

そしてまた、「VIVANT」では乃木は3段階変化します。お人よしの商社マン→冷徹な工作員→親の愛を渇望する息子といったように。後半では別班に反旗を翻し、父親につく姿が描かれるわけですが、そうした揺らぐ心情であったり“弱さ”を持った主人公というのも、本作の特徴かと思います(だからこそ、我々視聴者もダマされるという……。作劇にも一役買っているのは流石!)。

堺雅人さん×繊細さという切り口では、映画「ツレがうつになりまして。」がオススメ。宮崎あおいさん扮する漫画家の夫で、結婚5年目にして鬱を発症してしまった生真面目なサラリーマンを細やかに演じています。心が追いつめられ、「僕なんかいなくても誰も困らない」と号泣するシーンや、少しずつ前に進もうと懸命に努力する姿が涙を誘います。

まとめ

VIVANT,動画

引用: U-NEXT

こうして振り返ってみると、「VIVANT」は堺雅人さんの特性をすべて集約した作品であり、役どころでもあるということを再認識させられます。だからこそ、これだけの現象化を巻き起こしているのでしょう。衝撃展開が畳みかけた「VIVANT」最終話でも、堺雅人さんの安定感ある芝居に乗せられた人々は多かったのではないでしょうか(役所広司さん・二宮和也さんとの3ショットの泣きの芝居も感動的でした)。続編も大いに期待したい「VIVANT」の今後の同行と共に、堺雅人さんを引き続き追いかけていきたいと思います。

※ページの情報は2024年1月9日時点のものです。最新の配信状況は各サイトにてご確認ください。

SYO (映画ライター)

1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイトの勤務を経て映画ライターに。「CINEMORE」「装苑」「CREA」等に寄稿。劇場公開映画の脚本・編集協力や映画祭の審査員等も務める。

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