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期待を超える最高のクオリティ「THE FIRST SLAM DUNK」がファン必見の理由

2022年12月10日 by
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TVマガをご覧の皆様、こんにちは。俳優さんを中心に、ドラマやアニメの魅力を語る本連載、今回は「THE FIRST SLAM DUNK」について書かせていただきます。そう、言わずと知れた“スラダン”の新作映画です。原作者の井上雄彦先生が自ら監督・脚本を手掛け、12月に公開されると土日2日間で12億9600万円の大ヒットを記録。初登場1位を飾り、このままの勢いを維持できれば100億円超えもある?と期待が寄せられています。

引用:https://twitter.com/movie_slamdunk

桜木花道の指回しテクに憧れた少年時代

ちなみに2022年公開作(21年末~22年末)で興収100億突破作品は「ONE PIECE FILM RED」「劇場版 呪術廻戦 0」「トップガン マーヴェリック」の3本。11月11日公開の「すずめの戸締まり」が76億円(12月6日時点)、「名探偵コナン ハロウィンの花嫁」が97.4億円でした。「THE FIRST SLAM DUNK」はコンテンツ力的に超強力ですし、ここからどこまで数字を伸ばせていけるのか期待が高まります。

本題に入る前に自分と「SLAM DUNK」について少し書かせていただくと、僕はアニメのリアタイ世代(より少し下?)でした。東映まんがまつりで「ドラゴンボールZ」と一緒に映画を観ていた記憶や、TVアニメのオープニングで主人公・桜木花道がハルコさんと一緒に歩いている際のバスケボールを人差し指で回す技に憧れた覚えがあります(同級生の多くが真似して指を傷めるという……)。ただ、小学校低学年くらいだったので物語はほぼ覚えておらず、ちゃんとインプットした(そしてハマった)のは大学生のとき。「THE FIRST SLAM DUNK」に際して完全版コミックを全巻揃えて読み返してから臨むくらいにはワクワクしていました。つまり……大好きです。今度は嘘じゃないっす。ちなみに推しは宮城リョータです。

封切りまで詳細は謎…予告やポスターで高まる妄想

さて……そんな自分が「THE FIRST SLAM DUNK」をどう観たのか。ここからは「連載だから許して!」ということで個人的な観賞記をつづっていきます。ちなみに、作品の性質上「多少のネタバレを含む」仕様になっておりますので、お読みいただける際にはご了承ください。

というのも本作、公開されるまで内容の詳細が明かされず(マスコミ向けの試写もあったのか?という感じで)、ポスターや予告から「こういう内容になるんじゃないか」と考察・妄想するしかない状況だったのです。僕自身も予告を何度となく再生して「ついにリョータの過去編が描かれるのか⁉(『ピアス』という幻の短編がありまして)」「花道のバッシュが赤黒ということは全国大会か⁉ アニメはその前で終わってたし……」とワクワクしていました。そのため、レビューと称して「何が描かれるのか」作品の中身について書くこと自体がもう、ある種のネタバレをはらんでしまうのです……。

いきなり“過去編”דあの試合”! ガチ勢向けの内容

作品を観賞した第一印象は「ありがとう泣」でした。僕は観賞中、さめざめと泣いていました。「こうだったらいいな」「こうじゃないかな」と思っていた予想が的中した(多分これは予告編を観たファンの方の多くが想起した内容かと思いますが)ことに加えて、「それ以上」が描かれていたからです。冒頭からラストシーンまで、ビッグなサプライズが多数仕掛けてありました。

その部分については、大枠については書かざるを得ないのでお伝えしてしまうと、「宮城リョータ目線での山王戦」が展開します。そこにリョータを中心とした過去エピソードが挿入されるというつくりで、試合中にリョータがゲームを組み立てるかのごとく様々な人物にパスが渡り、原作では描かれなかったバックストーリーが次々明かされていきます。まさに、原作者の井上先生だから描けたストーリーといえるでしょう。

逆に言えば、本作はスラダンファンであることが大前提。リョータの回想シーンを経たのち、いきなり山王戦が始まります(しかもめっちゃスピード感ある展開!)。ビギナーは「!?」となる可能性が高いため、メインの登場人物の知識はもちろん、山王戦が何なのか含めて、原作をしっかり読み込んでおくとスムーズに入り込める&感動が倍増するため、安心です。

しかし個人的には、予想はしていたものの本当にここまでガチ勢向けの内容にしたのか!と驚きました。ある意味誰もに門戸が開かれた内容ではない、玄人向けのクローズドな内容でも(興行的に)成立するのはやはり、世代関係なく人気を誇る「SLAM DUNK」ならではのアプローチでしょう。そしてそれほどまでに、山王戦は日本漫画史に残るといっても過言ではないほどの名エピソードなのだと再認識しました。

感動を増幅させる、登場人物の掘り下げ

上記のように書いたのは、「人物描写の掘り下げ」が本作の大きな核であるから――ということも大きいです。山王戦については、「常勝軍団に全国大会初出場のチームが挑む」というくらいの理解でもノることができるでしょうし、「絶体絶命のピンチを一つずつ克服して勝利にしがみつく」展開はライト/ガチにかかわらず燃えたぎるもの。

ただ……やはり言いたくなってしまうのは「その“先”があるんだぜ」ということです。リョータを中心とした湘北メンバーたちの過去により踏み込むことで、原作で描かれていたセリフ一つひとつの重みや印象がまるで変わってきますし、「あの期間にあんなことしてたの⁉」「あの名ゼリフにはそんなバックボーンがあったの⁉」「あのキャラのあんな姿/表情まで描いてくれるの⁉」と5分に1回以上のレベルで感動が訪れます。しかも、ガチファンからすると「次にあの名場面が来るぞ」と心の準備ができているため、そのシーンに行く前に過去編を挿入する演出に対する感動が、未読者の比ではないのです。

そしてまた、臨場感あふれるカメラワークやCGをふんだんに盛り込んだ映像、試合中のホイッスルやシューズの音、観客の声援といった音響演出の数々が「ゴリラダンク」「ハエたたき」「すっぽんディフェンス」「リバウンド王」や「アリウープ」「3ポイントシュート」といった技の数々の“スゴさ”を観る者に体感させてくれます(桜木の安西先生へのタプタプ攻撃も!)。沢北や河田がどれだけ優れた選手なのかが、肌感覚としてよりわかりますし、リョータがドリブルで切り裂いていくシーンの爽快感もグッと増していました。

まとめ

劇場パンフレットを参照すると(買ってしまいました……)、井上先生が制作にGOを出したのはなんと2014年のこと。オファー自体はその前から来ていたと考えると、下手すると約10年の歳月をかけて完成したプロジェクトといえるかもしれません。それだけの“祭り”は人生にそうそうあるものでもないかと思いますし、ぜひ冬休みなどに原作をおさらいした後で劇場に足を運んでいただければと思います。

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※ページの情報は2022年12月10日時点のものです。最新の配信状況は各サイトにてご確認ください。

SYO (映画ライター)

1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイトの勤務を経て映画ライターに。「CINEMORE」「装苑」「CREA」等に寄稿。劇場公開映画の脚本・編集協力や映画祭の審査員等も務める。

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