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”深化”し続ける役者・横浜流星の軌跡に迫る【映画ライターが分析】

#横浜流星
2023年12月19日 by
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TVマガをご覧の皆さん、こんにちは。SYOと申します。毎回、素敵な俳優さんの魅力をコラムで紹介させていただく本企画、スタートから早2年が経ちました。第1回目に紹介させていただいたのは、横浜流星さん。ちょうどドラマ「シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。」の放送タイミングでした。

横浜流星さんのおかげで、この企画が連載化できたといっても過言ではありません。そこで今回は、感謝を込めて! 彼の近作から、進化する魅力を改めてつづっていきたいと思います。前回の記事「横浜流星の”伸びしろ”しかない5つの才能&シロクロでみせる危うい色気」と合わせてお楽しみいただければ幸いです。

引用:Amazon

求道者としての気概がより明確に

引用:Amazon

元々素晴らしい俳優さんでしたが、この2年でさらなる熱狂的な人気を獲得し、若手俳優のトップオブザトップまで上り詰めた感のある横浜流星さん。多くのファンを獲得している理由は無数にあるかと思いますが、個人的にはこれからもっと面白くなる気がしています。というのも、より役柄と作品に“深度”が増してきたから。

端的に言えば、観る側がある種の“覚悟”を要するヘビーな演技を、段階を踏んで提示してくれているのです。トレーニング中にウェイトを一つずつ増やし、負荷をかけていくようなこの感じ……。「次はどこまで踏み込んでくれるんだろう?」とゾクゾクさせられます。

乱暴な意見にはなりますが、国内の俳優のキャリアの積み上げ方として「20代は綺麗めな作品を中心に、30代に入ったら作家性の強い作品やチャレンジングな役柄を入れていく」という方法論があります。

これはある種スタンダードなものとして確立しており、多くの俳優がこの道を歩んできました。ただ横浜流星さんにおいては、そういった闘い方とはちょっと異なるように感じています。早い段階から泥臭いキャラクターやシリアスな社会的テーマをはらんだ作品に意欲的に挑戦し、ここに来てそのギアをより上げてきた感……。求道者としての気概と信念を感じずにはいられません。

盟友・藤井道人監督と組んだ野心作2本

では具体的に、どういう部分が近作でより“強化”されたのか? ひとつの試金石といえるのは、Netflixシリーズ「新聞記者」でしょう。国家ぐるみの公文書改ざん事件を描く社会派エンターテインメントで、相当踏み込んだ内容に驚かされます。ともすれば出演することにリスクを感じる役者もいるかもしれませんが、横浜流星さんは果敢に攻め込みます。

米倉涼子さん・綾野剛さん・吉岡秀隆さん・寺島しのぶさんらと共演した本作で横浜流星さんが演じたのは、政治に関心のない大学生。日本の根底を揺るがす事件と、彼がどう関わっていくのか……。「未来」という作品のテーマを象徴する存在でもあり、市井の人々の代表といってもいい超重要なキャラクターを任された横浜流星さん。ごく普通の青年が何を見て、何を思い、どう変わっていくのか――その行程を説得力のある演技で演じきり、表現力の高さを見せつけました。

また、12人の監督が短編を制作した「DIVOC-12」の1本「名もなき一篇・アンナ」では、コロナ禍で疲弊した人々を体現するような喪失感漂う男を演じました。無精ひげを生やし、憔悴したさまをしっかりと見せており、着飾った美しさとは一味違う、人間としての目の離せなさを強く感じさせます。本作ではロン・モンロウさんと共演し、お互いに異なる言語でコミュニケーションを図るというチャレンジも行いました。

この2本を共に作り上げたのが、映画「青の帰り道」でがっつり組んで以来の盟友・藤井道人監督。彼とのコラボレーションの中で、より横浜流星さん独自の“色”が強まってきた印象があります。

彼の道を決定づける最新作「流浪の月」

キャラ演技で魅せる「噓喰い」や、身体能力の高さを見せつける「DCU」等といった作品に挑戦し、幅を広げてきた横浜流星さん。そして、今年「俳優・横浜流星」のイメージが一変するのではないか、というくらいの勝負作が公開されます。その名は「流浪の月」(5月13日劇場公開)。

「怒り」「悪人」の李相日監督が、広瀬すずさんと松坂桃李さんを迎えて撮り上げた本作。誘拐事件の容疑者と、被害者。ふたりが15年ぶりに再会して……というお話ですが、世間や他者のイメージと本人たちが知っている真実・実情がいかに異なるかを突きつける重厚な一本でもあります。

李監督の作品はこれまでも、俳優が死力を尽くしてようやく到達できる“むき出しの姿”を画面に焼き付けてきました。本作も広瀬さん・松坂さんの「全身全霊」という言葉が軽く感じられるレベルの演技が収められていますが、横浜流星さんにおいても衝撃的な「かつてない」姿を目の当たりにすることでしょう。

彼が本作で演じたのは、広瀬すずさん演じる主人公の恋人。ちょっと束縛が強かったり強引なところもあるけど無邪気な爽やかくん……という第一印象から、どんどん仮面が剥がれ落ちていきます。横浜さんご自身が原作にほれ込み、熱望していたという役どころであり、彼のキャリアのターニングポイントになるのは必定といえます。

凄まじい演技を刻み付け、観た者の間で語り草になる日はすぐそこ。ただそれは突発的なものではなく、横浜流星さんがキャリアの初期から少しずつ広げてきたものであったり、変わらずにある彼の芯がついに前面に押し出されたということなのだと思います。つまり、横浜流星さんは「新聞記者」「流浪の月」でもって完全に俳優としての生き方を僕たちに提示するということ。その先には、いよいよアクセル全開で突き進む彼の姿があるはずです。作品選びも含めた「横浜流星」が一つのジャンルとして定着する“すぐそこにある未来”、楽しみに追いかけていきたいと思います。

※ページの情報は2023年12月19日時点のものです。最新の配信状況は各サイトにてご確認ください。

SYO (映画ライター)

1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイトの勤務を経て映画ライターに。「CINEMORE」「装苑」「CREA」等に寄稿。劇場公開映画の脚本・編集協力や映画祭の審査員等も務める。

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