【映画ライターが分析】窪田正孝・吉沢亮・山田孝之…表現力が無限大!演技の振り幅がすごい俳優
#山田孝之 #窪田正孝 #吉沢亮映画ライターのSYOと申します。毎回、テーマに合わせて素敵な役者さんをご紹介する本連載、3回目を迎えました。「流し目」「声の演技」に続くお題は……「演技の振り幅」!
振り幅というのは、言い換えれば役と役のギャップでもあります。善人から悪人まで演じ分けるカバー力だったり、はたまたアッパーからダウナーまで演技の出力を自在に使い分けるスキルだったり……。いわゆる「演技派」と呼ばれる方々は皆、この能力を備えています。
今回は、その中でも振り切れ具合が半端じゃない役者陣をお三方、ピックアップしてご紹介。正統派二枚目からぶっ飛んだキャラクターまで演じ分ける表現力に、驚かされるばかりです。
(なお、「流し目」で佐藤健さん・横浜流星さん・松坂桃李さん、「声の演技」で中村倫也さん・成田凌さんをご紹介したため、それ以外で選出させていただきました)
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目次
その“圧”はどこから来るのか――演技の求道者・窪田正孝
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「演技の振り幅」と聞いて、やはりこの人は欠かせません。“憑依演技”の使い手、窪田正孝さん。
若き演技派俳優として、近年ますます影響力と表現力が増すばかり。新型コロナウイルスの影響で断続的な放送ではありますが、NHK連続テレビ小説『エール』で主演を務め、“朝の顔”として活躍されています。こちらでは、思い悩みながらも作曲家の夢に向かって一歩ずつ進んでいく実直な主人公を、人情味たっぷりに演じています。
窪田正孝さんの演技は、レイヤー分け出来るほどに多彩。同じ「ちょっと頼りない、心優しい青年」の属性でも、『エール』とドラマ『ラジエーションハウス 放射線科の診断レポート』ではまったく別物。善人を演じるにあたっても、作品によってこんなに多彩に演じ分けられるのか、とうならされます。
彼は「陰がある青年」も非常にハマるのですが、ドラマ『Nのために』『アンナチュラル』、映画『予告犯』『64 ロクヨン』と、キャラクターの心情に寄り添ったリアルな演技に腐心しつつ、観る側が「前に演じた役と似てる・演技がかぶる」と思うことがない。
映画『ふがいない僕は空を見た』では、壮絶な家庭環境で生きる高校生を、“痛み”と共に見事に演じました。観終えた後も、ふとした拍子に「あの子、どうしてるかな」と思わせてしまうほど、役に命を吹き込むセンスに長けている。これも、窪田正孝さんの才能といえるでしょう。
このように、1つひとつの役に丁寧に向き合うイメージのある窪田正孝さんですが、先ほど書いたように、“憑依演技”がずば抜けている。これまでに挙げてきた、“日常”がベースにあるリアルな人物から、アクションも度肝を抜かれる『HiGH&LOW』シリーズ、ごく普通の青年が異形の存在に変異していく姿を熱演した映画『東京喰種トーキョーグール』、危うい精神状態の殺し屋に扮した映画『Diner ダイナー』、なり切り具合がすごすぎて放送時にバズったドラマ『デスノート』等々……。
フィクショナルな役どころであっても、生の「身体性」と「感情」を乗せることで、観客の心をわしづかみにするのだから、観ていて興味が尽きません。圧倒的な演技の熱量と圧、そしてクオリティ――。全く異なったベクトルのキャラクターに見えても、同一線上に置けてしまう、高い表現力に裏打ちされた振り幅の広さ。
この先、窪田正孝さんはどんどん絶対的な存在になっていくことでしょう。
異質な作品選びがクセになる――難役の数奇者・吉沢亮
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世紀の美男子・吉沢亮さんですが、実は作品選びが滅茶苦茶ロック。ついつい「美しい……」と言語崩壊してしまいそうになるのですが、出演作を細かく見ていくと、彼の演技の振り幅の広さに気づかされます。
ドラマ『ぼくは麻理のなか』→女子高生の姿になってしまった引きこもりの大学生
ドラマ『GIVER 復讐の贈与者』→感情が欠落した復讐代行人
映画『斉木楠雄のΨ難』→中2病をこじらせた高校生
映画『リバーズ・エッジ』→死体を愛する同性愛者の少年。
映画『レオン』→自販機と話せる(!?)超お人よしの会社員
映画『猫は抱くもの』→擬人化した猫
映画『一度死んでみた』→存在感がなさすぎる秘書
これらは一例ですが、演じるキャラがとにかく濃い。映画『キングダム』や映画『ママレード・ボーイ』、現在であればドラマ『半沢直樹』などが多く話題に上るかと思うのですが、例えば『リバーズ・エッジ』はR15+の過激描写満載の青春劇ですし、『猫は抱くもの』はまるで舞台のミュージカルのような風変わりな構造の作品。エッジーな作品に好んで出演する印象です。
最新主演作の映画『青くて痛くて脆い』にしても、演じているのは他人嫌いの大学生。しかもこちら、トリッキーな構成の復讐劇になっており、「さすが吉沢亮さんだぜ……」とニヤッとさせられる内容。後半になると、主人公が逆上するシーンも用意されていて、吉沢亮さんの演技力を堪能できます。
作品選びがトガっているということは、すなわち毎作品ごとに自身の演技に負荷をかけているということでもあります。「似たような役はやりたくない」とは役者につきものの信条ですが、それにしたって振り幅が激しい。「何でもできる」を超えた前人未到のフィールドに向かおうとしている吉沢亮さん、全力で推せます。
ちなみに、先日詳細が発表された新作映画『AWAKE』では、「棋士になる夢をあきらめた青年が、AI将棋のプログラマーになる」という斬新な物語。本人も「個人的に今まで出演した作品の中で一番好きです」と語っており、期待が膨らみます。
誰も追いつけない領域をひた走る――規格外の男・山田孝之
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最後は、山田孝之さん。キャリアの中で、ここまでイメージが変わっていく俳優も珍しい……。まさに、このテーマにはぴったりの方かと思います。
キャリアの初期には、2001年のドラマ『恋がしたい恋がしたい恋がしたい』では複雑な家庭に育ったナイーブな高校生、2002年のドラマ『ランチの女王』では生真面目なコック見習い、その後ドラマ版『WATER BOYS』やドラマ版『世界の中心で、愛をさけぶ』と、繊細な役柄を多く演じてきました。『WATER BOYS』は緊張するとお腹が痛くなる高校生役で、主人公らしからぬキャラクターが印象的でした。
しかし今や、山田孝之さんに対しては「怪演」や「力演」を想起する方が多いかと思います。大きな転機といえる2007年の映画『クローズZERO』で、ワイルドな魅力が爆発。そこからは、いわゆる“善人”とは一線を画した人物を、怒涛の勢いで演じていくように。
特に、2012年に公開された映画『悪の教典』と『その夜の侍』での“悪役”は強烈で、トラウマになった観客も多かったのではないかと思います。その後、映画『凶悪』で仕事に没頭するあまり狂気に染まっていく記者を見事に演じ切り、作品の絶対的な評価とともに、山田孝之さんの表現力はますます知れ渡っていきました。
シリーズ作品の主演を務めることも多く、観る者を絶句させるほどの体当たり演技を披露したドラマ『全裸監督』、冷徹な闇金会社の社長を演じ、彼の代表作の1つになったドラマ&映画『闇金ウシジマくん』シリーズ、カルト的な人気を博したドラマ『勇者ヨシヒコ』シリーズ等々……。口角泡を飛ばすエネルギッシュなキャラクターから、「汗をかかない」人間離れした役どころまでこなし、しかもそのどれもで視聴者に強烈な印象を残すのだから、「彼の演技の引き出しはどうなってるんだ!?」と毎回、感嘆させられてしまいます。
しかも、ただ「役を演じる」にとどまらず、衝撃のドキュメンタリー『山田孝之の東京都北区赤羽』や、企画段階で異彩を放っているテレビ番組『植物に学ぶ生存戦略 話す人・山田孝之』など、もはや山田孝之さんが作り出す世界観は、1つの言葉では形容できません。
そんな山田孝之さんの振り幅の広さが凝縮された映画が、2012年の『ミロクローゼ』。本作ではなんと3役を演じているのですが、オレンジ髪のおかっぱボーイ、サムライ化する男、雰囲気がヤバい恋愛アドバイザーと、全部ぶっ飛んでいます。ご興味がある方は、ぜひご覧ください(最新主演映画の『ステップ』では、“普通”の会社員を繊細に演じていて泣かされます。こちらもオススメ)。
まとめ
「演技の振り幅がすごい」というのは演技力の高さとイコールのため、往々にして役者論の一環として語られるもの。つまり、ドラマや映画を愛する方それぞれの中で、「この人は、演技の振り幅がハンパない」の人選は、異なるかと思います。
今回は、20~30代の男優さんに絞りましたが、それでも大変でした(例えば中村倫也さんも松坂桃李さんも、180度異なるキャラクターを見事に演じ分けていますし)。だからこそ、折に触れて考えていきたいテーマでもあります。
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※ページの情報は2021年7月1日時点のものです。最新の配信状況は各サイトにてご確認ください。