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物静かなカリスマ性を放つ役者・松田龍平の歴代出演映画5選【映画ライターが分析】

#松田龍平
2021年6月8日 by

映画ライターのSYOと申します。普段は日本のドラマ・映画界に欠かせない俳優さんの「5つの魅力」を分析していますが、今回はちょっと趣向を変えて「俳優さんの好きな出演映画5本」を語っていきたいなと思います。

このたび取り上げさせていただくのは、松田龍平さん。ただいまドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」が放送中。「カルテット」から約4年ぶりの坂元裕二さん脚本作品ですが、今回も飾らない、柔和な魅力を振りまいていますね。肩ひじを張らずにふわりとそこにいるんだけど、自然体のカッコよさが流れている。流石だなと思いながら観賞しています。

「カルテット」と「大豆田とわ子と三人の元夫」で松田龍平さんが演じたキャラクターをざっくり比較すると、人の懐に入り込むうまさが違うのかなと感じます。前者は人とのコミュニケーションが苦手で、後者はナチュラルに人と接することができる。ただ、どちらも愛嬌たっぷりに演じられるのが恐ろしい。松田さんはセリフが多い饒舌な役はあまり演じないイメージがありますが、そのぶん雰囲気で役の人柄を醸す術に長けているように思います。そしてその雰囲気が、他の役者さんには出せない“色”をしているため、みんなが魅了されてしまう。この2作で、松田龍平さんの沼にドボンしてしまった方も多いかと思います。

そんな方々に、こんな松田龍平さんも良いですよ……とご紹介できればなというのが今回の企画です。とはいえ、20年以上のキャリアを誇る彼の出演作から5本をセレクトするのは至難の業。今回は、あくまで一例だと思っていただければ幸いです。

引用: U-NEXT

1「青い春」

引用: U-NEXT

松田龍平さんを語る上で、避けては通れない作品が2本あるかと思います。それはデビュー作の映画「御法度」と、この映画「青い春」。松本大洋さんの漫画を実写化した作品で、ゼロ年代の不良青春映画の傑作として、多くのクリエイターに影響を与えた作品でもあります。

度胸試しの「幸せなら手をたたこう」というゲームが流行っている高校。それは、校舎の屋上で柵から手を放し、何回叩けるかという危険な内容でした。最も多く手をたたける人間が番長になれるルールの中、松田龍平さん演じる主人公は最も多い回数をたたき、番長になるのですが……。この作品の中で彼が漂わせる雰囲気は、神がかっています。

生に対する執着を感じさせないものの、逆らえない暴力性や威圧感もあって、物静かなのにカリスマ性があふれている。今なお続く松田龍平さん独自の“存在感”が、早くも感じ取られます。「御法度」の時点で抜きんでたオーラを放っていましたが、現代劇においてもなお増すばかり。特技のサッカーを披露するシーンもありますよ。

「御法度」「青い春」のほか、映画「46億年の恋」「乱歩地獄」など、初期の松田龍平さんの作品は妖しい色香漂う作品が多いのが一つの特徴です。

2「まほろ駅前多田便利軒」

引用: U-NEXT

松田龍平さんの代表シリーズのひとつ。映画→ドラマ→映画と展開していく人気作となりました。人気作家・三浦しをんさんの同名シリーズを、瑛太(永山瑛太)さんとの共演で映像化。それぞれに切ない過去を背負った男2人が、便利屋稼業を営むなかで少しずつ絆を深めていくバディ×人情ものです。

松田龍平さん演じる行天はつかみどころのない人間で、何を考えているのかわからない。どこか狂気すら感じさせる「わからなさ」は、元殺人犯を演じた映画「羊の木」、地球外生命体に乗っ取られた男に扮した映画「散歩する侵略者」にも通じるところがあり、松田龍平さんの得意なゾーン。ただ、怖さにとどまらない孤独感までもまとっており、多田(瑛太さん)との不器用な付き合いの中で少しずつ、心を開いていく姿が心に沁みます。

映画版第1作だと「星の子」の大森立嗣監督の抑えた演出が光りますが、ドラマ版「まほろ駅前番外地」だと「モテキ。」の大根仁監督らしいはっちゃけたテイストに。松田龍平さんの演技もコミカルなものに変化していくので、その違いも楽しめます。

3「舟を編む」

引用: U-NEXT

こちらも三浦しをんさんの人気小説を映画化。多数の映画賞を受賞しており、松田龍平さんの代表作のひとつとして認知されている向きもあるかと思います。真面目さだけが取り柄の編集者(松田龍平さん)が、辞書作りに没頭していく姿をハートフルに見つめた人間ドラマ。

宮﨑あおいさん演じる板前の見習いに恋心を抱くも、うまく想いを伝えられないほほ笑ましさ、猫と戯れる姿、「大豆田とわ子と三人の元夫」にも出演しているオダギリジョーさん扮する先輩とのほっこりするやり取り……。本作で見せたかわいらしさは、「カルテット」のキャラクターにつながっているかもしれません。いわば、いまの松田龍平さんの“人気ゾーン”を構築した作品ともいえるでしょう。余談ですが、松田龍平さん×メガネは「あまちゃん」や「獣になれない私たち」「カルテット」「探偵はBARにいる」など、非常に多いキラーコンテンツですね。

内容的にも、地道であってもただただ真摯に、仕事に取り組む人々の美しさを讃えるものになっており、観るとグッと勇気づけられる快作です。サラリーマンが棋士を目指す実話映画「泣き虫しょったんの奇跡」と合わせて観るのもよさそう。同作の豊田利晃監督とは、「青い春」「ナイン・ソウルズ」「I’M FLASH!」など、多数の映画を一緒に作り上げてきました。

4「モヒカン故郷に帰る」

引用: U-NEXT

個人的に、松田龍平さんの出演作の中で1、2を争う大好きな作品。故郷に帰ったデスメタルバンドのボーカリスト(松田龍平さん)が親孝行に励む、心温まるコメディです。タイトル通り、松田龍平さんは本作でモヒカン姿に挑戦。劇中ではライブシーンもあり、デスメタルをシャウトする珍しい演技も披露。ただ基本はおとなしい(そしてだらしない)性格であり、そのギャップにクスクスさせられます。

恋人役の前田敦子さん、父親役の柄本明さん、母親役のもたいまさこさん、弟役の千葉雄大さんとの掛け合いも絶妙で、映画「南極料理人」の沖田修一監督らしい優しく温かい(それでいてちょっぴり切ない)世界観の虜になってしまうことでしょう。

後半になると、松田龍平さんの渾身の“泣きの演技”のシーンも用意されており、これまた胸をギュッとつかまれます(演出も気が利いており、良い!)。観終えた後に「いい映画だったねぇ……」としみじみ思える傑作です。

本作を観た後によさげなのが、映画「ぼくのおじさん」。とにかくやる気がなくてぐうたらしている30歳の大学講師の役なのですが、ダメダメなのに愛おしく、もっと観ていたいと思わされます。

5「影裏」

引用: U-NEXT

「ハゲタカ」でも組んだ大友啓史監督と創り上げた、美しくも物悲しい文学的な映画。盛岡を舞台に、いなくなってしまった友人であり同僚の足取りを追う会社員(綾野剛さん)の姿が描かれます。

本作の松田龍平さんは、先に述べた「わからなさ」を究極にまで高めた演技を披露。かれのつかみどころのなさが、綾野剛さん演じる主人公の不安にもつながっていくのです。失踪するという物語の性質上、画面に映らないシーンも多いのですが、出演シーンのミステリアスな存在感が半端ではないため、どこかにずっと彼の気配を感じつつ物語を見ていくという、「いないのに存在感が消えない」神業を堪能できます。

作品自体も多く語ることなく、観る者は画面に映る印象的なカットや、風や川、果実、蛇、苔といったような要素から意味を感じ取ってゆくという、豊かな観賞体験ができるものになっています。大友監督は「るろうに剣心」でも有名ですが、エモーショナルな演出は流石の域。

まとめ

直近だと、盟友の山田孝之さんが監督(竹中直人さん・斎藤工さんと共に)を務めた映画「ゾッキ」に出演している松田龍平さん。制作風景を追ったドキュメンタリー映画「裏ゾッキ」では、オフショットも垣間見ることができます。

「大豆田とわ子と三人の元夫」でも感じられるように、年齢を重ねてより肩の力を抜いた、それでいて惹きつけられる演技を見せてくれるようになった松田龍平さん。本作以降は、どんな作品に出演するのか。気になるところです。

※ページの情報は2021年6月8日時点のものです。最新の配信状況は各サイトにてご確認ください。


SYO (映画ライター)

1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイトの勤務を経て映画ライターに。「CINEMORE」「FRIDAYデジタル」「Fan's Voice」「映画.com」「新R25」「DVD&動画配信でーた」等に寄稿。Twitter「syocinema」

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