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林遣都

【映画ライターが分析】林遣都・綾野剛・清原果耶…心を揺さぶる「泣きの演技」がすごい役者

#林遣都 #綾野剛
2021年7月1日 by
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映画ライターのSYOと申します。毎回、テーマに合わせて素敵な役者さんをご紹介する本連載、4回目に突入です。「流し目」「声の演技」「振り幅」に続き、今回は「泣きの演技」で書かせていただきます。

泣きの演技……。皆さんの脳裏に、パッとそれぞれの“推し”の泣き顔が浮かんだのではないでしょうか。「泣く」は、ダイレクトかつビビッドに役者の技量を示せる機会。キャラクターの感情が最も高ぶるところであり、往々にして物語が一番盛り上がるポイントでもあるため、強く印象に残りやすいものです。

それがゆえに、各々の趣味嗜好がはっきり出てしまうテーマでもありますが、それを前もって断らせていただき……。「泣きの演技がすごい」素敵な役者陣をお三方、ピックアップしてご紹介します。

(なお、「流し目」で佐藤健さん・横浜流星さん・松坂桃李さん、「声の演技」で中村倫也さん・成田凌さん、「振り幅」で窪田正孝さん・吉沢亮さん・山田孝之さんをご紹介したため、今回は残念ながら選外とさせていただきました。言うまでもなく、皆さんの泣きの演技も半端ないです。彼らについてもいつか、いや今すぐにでも書きたいです)

引用:Amazon

零れる涙すら、生きている――役に命を与える職人・林遣都

林遣都

引用:Amazon

はじめにこのお題をいただいたとき、脳内にリプレイされた作品があります。Netflixのオリジナルドラマ「火花」。お笑いコンビ「ピース」の又吉直樹さんの芥川賞受賞作を映像化した、お笑い芸人の切ない奮闘記です。

このドラマの中で、身体中の水分がなくなってしまうほど泣きはらしている役者がいます。その名は、林遣都。若手演技派の筆頭である彼ですが、「火花」で見せる「泣きの演技」は、まさに名優クラス。一度観たら、ずっと忘れられない一世一代の芝居が、そこにあります。

お笑い芸人として成功を夢見る主人公はエッジーな先輩に憧れて上京し、相方と切磋琢磨するなかで少しずつ目標に近づいていくのですが……。3割の栄光、7割の挫折。夢追い人の苦闘や心情を、林遣都さんは生々しいまでに見事に体現。主人公が最終話、ある悲壮な想いを胸に舞台に立つとき、抑えていた涙がほろほろとこぼれ出します。

「思っていることの反対を言う」と切り出し、相方と観客を罵倒し続ける主人公。目が真っ赤に充血し、声が震え、息が途切れ、約10分にわたり泣きながら林遣都さんが叫び続ける姿は、圧巻です。

他にも、堕ちていく先輩を前に泣きながら説得するシーン、公園で独り絶望感で泣き崩れるシーン等々、正真正銘の「役を生きる」を実践する林遣都さんだからこそ成しえた、多彩な「泣きの演技」がぎゅっと詰まった作品です。

「火花」を筆頭に、林遣都さんの「泣きの演技」に心をつかまれる作品は、まだまだあります。例えば、逃亡犯を演じた映画「しゃぼん玉」。山村に逃げ込んだ彼は、お人よしの老婆と出会い、初めて人の優しさに触れるのです。ボロボロになりながら、人生をやり直そうともがき、己が犯した罪を悔い……。涙をぽたぽたと落とし、「ここに戻ってきたいんだ」と絞り出す姿に、感涙しない方が難しい。

そして、最新主演ドラマ「世界は3で出来ている」では、新型コロナウイルスによって人生が激変してしまった3つ子を、たった1人で熱演。こちらでも後半、無念さに胸をかきむしるようにして泣き出すシーンが用意されており、観ているこちらも感情を引きずり出されます。この3作品の「泣きの演技」を比較しただけでも、すべて違って見えるのは、やはり林遣都さんの実力がずば抜けているからなのでしょう。

「泣く」行為にも生命力をもたらす、林遣都さん。この先、あと何度僕たちをもらい泣きさせるのでしょうか。

泣かずに、「泣く」を表現する――魂を纏う芸術家・綾野剛

引用:Amazon

林遣都さんとはまた違ったアプローチで、役を生きる天才・綾野剛さん。エキセントリックなキャラクターからナイーブな役どころまで、幅広く演じ分けています。

彼の演技の印象は、「空気感が変わる」ということ。纏う空気・醸し出す雰囲気から、その役がわかる――。そんな独特の演じ方が、綾野剛さんの大きな魅力かと思います。そして、彼の「泣きの演技」のすごさは、「泣いていないのに泣いている」境地にまで達していること。

通常、映画やドラマにおける「泣く」という行為は、「涙をためる」「涙を流す」などのように、目から涙が出ることかと思います。ただ現実は、必ずしも涙があふれることだけが、泣いているわけではありませんよね。涙は出ないけれど、心根では泣いている――そんな経験は、日々を生きていると度々あるものです。

そうした涙が流れない「泣く」を、文豪・芥川龍之介は著作「手巾」の中で「全身で泣く」と表現していますが、綾野剛さんが演じる幽玄なキャラクターは、このイメージが非常に近い。素性がわからないゲイの青年を繊細に演じた映画「怒り」、セリフではなく眼差しで語る映画「影裏」、誘拐事件の容疑者にされる青年に扮した映画「楽園」……。涙をはらはらと流すわけではないのに、観る者には綾野剛さんが演じるキャラクターが「泣いている」と、痛いほどに伝わってくる。

彼の目や、表情、オーラ……微細な気持ちの“揺れ”がそういった所々に伝播していくことで、全身に涙の感情が流れ込んでいく。こうやって言葉にしてみると、改めて綾野剛さんの途方もない表現力に感嘆させられます。

もちろん、ストレートに涙を見せる演技もお手の物。現在放送中のドラマ「MIU404」では、変わってしまった恩師を前にして顔をくしゃくしゃにして泣き続け、「いつなら止められた?」「どうすればよかった?」と必死に訴える姿が、視聴者をウルっとさせました。役によって「涙を流す/流さない」を使い分けられる綾野剛さん、依然として底が見えません。

先日特報が公開された最新主演映画「ヤクザと家族 The Family」でも、綾野剛さんの渾身の「泣きの演技」が観られることでしょう。公開は来年ですが、今から期待が止まりません。

真摯に「泣く」と向き合い、抗う――感情の申し子・清原果耶

 

 

そしてもう1人。このテーマでどうしても紹介したい、新進気鋭の役者さんがいます。弱冠18歳ながら、その立ち姿には風格すら漂う、清原果耶さん。

ドラマ「透明なゆりかご」で注目され、2021年のNHK連続テレビ小説「おかえりモネ」のヒロインも決定済み。公開待機中の映画は、なんと5本。名実ともに、今最も勢いのある十代の役者さんの1人といえるでしょう。

演技力の高さは折り紙付きの清原果耶さんですが、中でも絶賛されているのが「泣きの演技」なのです。実は彼女、出演作の多くで泣く演技を披露しているのですが、そのクオリティが半端じゃない。オーディションを勝ち抜いて出演が決まった映画「3月のライオン」では、いじめの標的にされる女子中学生を熱演。友達をかばった結果いじめられ、怒りと悔しさ、そして悲しみ、すべてを放出して泣く彼女の演技は、「泣く」という現象の本質を思い起こさせてくれます。

先ほど、綾野剛さんをご紹介した際に「必ずしも、涙を流すのが『泣く』ではない」とお伝えしましたが、もう1つ。我々はいつ何時でも、泣きたくて泣くわけではない。感動して泣くこともあれば、悲しくて泣くこともある。そして、許せなくて、キャパ超えして泣くこともある。特に最後の場合、僕たちの中にある感情は「泣きたい」よりもむしろ「泣きたくない」ではないでしょうか。

泣きたくなんかないのに、涙が次々あふれてくる――。そんなアンビバレントな状態を見事に表現するのが、清原果耶さんの「泣きの演技」の豊かさなのです。映画「3月のライオン」はもちろん、児童養護施設に暮らす孤児を演じた映画「デイアンドナイト」、兄が殺人事件の容疑者になってしまった妹に扮した映画「望み」等々、彼女が出演作で見せる涙には、いつも役が現実に対して抱いている「なんで?」という反発が潜んでいる。

どうにもならない現実に理不尽さを感じながらも、どうにもできない自分が悔しくて、涙が流れてしまう――。9月4日に公開を迎える主演映画「宇宙でいちばんあかるい屋根」でも、親との関係や、自分を取り巻く世界に対する無力さで泣いてしまうシーンが入っており、観ているこちらの心をぎゅっとつかみます。もちろんそれだけではなく、嬉しくて暖かくて泣く部分もあり、やはり彼女が流す涙には、噓がないのだなと思わされます。

まとめ

最後までお読みいただき、ありがとうございました。改めて、「泣く」ことの奥深さを考えさせられた回でした。

役者というのは、僕たちが自然に表出させている表情を、作為的に生み出すプロフェッショナル。「なぜ泣くのか?」、もっといえば「泣くとは何なのか?」、突き詰めて突き詰めて考え抜く彼らの優れたパフォーマンスを観ることで、僕たちは自分たちの感情や動作、行為の根本を再発見できているのかもしれません。

これからも、役者の皆さんに「感情とは何ぞや?」を教えていただきながら、追いかけていきたいと思います。

 

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※ページの情報は2021年7月1日時点のものです。最新の配信状況は各サイトにてご確認ください。

SYO (映画ライター)

1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイトの勤務を経て映画ライターに。「CINEMORE」「装苑」「CREA」等に寄稿。劇場公開映画の脚本・編集協力や映画祭の審査員等も務める。

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