なにわ男子・道枝駿佑、なぜ俳優として10年に1人の逸材なのか?【よしもと芸人が分析】
#道枝駿佑こんにちは!芸人であり、放送作家であり、脚本家であり、ライターでもある宮地ケンスケ(ニブンノゴ!)です。
TVマガのジャニーズの俳優を語る連載「Jアクター研究部」。今回私が研究したジャニーズ俳優はなにわ男子・道枝駿佑くん。
昨年は「俺の家の話」、SnowMan・目黒蓮くんとのW主演「消えた初恋」など、役者として大活躍な一年でした。
目次
透明感あふれる美少年の挫折と成長
道枝くんの魅力は、漫画から飛び出してきたのかと思うくらいまぶしいほどの美しさ。ジャニーズの中でもここまでの透明感のある方はいそうでいなかったように感じます。
こういう美少年タイプは演じる役に制限が出てしまうものですが、道枝くんにはその制限を一切感じない。道枝くんの演技に理屈じゃ語れない重力のような魅力を感じてしまうのです。
なぜ、ここまでの重力をかけることができたのか?
道枝くんにしか味わえなかった挫折や成長があったように感じるのです。
道枝くんのドラマデビューは2017年放送のドラマ「母になる」でした。幼い頃に誘拐され9年ぶりに家族の元に戻る柏崎広を演じます。
以前この連載でも書きましたが若手ジャニーズのドラマデビューはだいたい学園もので、不良役と相場が決まっていますが、道枝くんはデビュー作がいきなり社会派ドラマだったのです。おまけに共演者は沢尻エリカさんや小池栄子さんなど演技派の役者ばかり。
右も左も演技派って…例えるのなら小学校一年生で因数分解の問題を出されるようなもの!
道枝くんは熱演しますが、演技は賛否両論を生みました。
ジャニーズタレントで役者として成功する人ってどこか「ジャニーズっぽくない人」が多いのですが、道枝くんは誰がどう見ても美少年、いうならば典型的な「ジャニーズの顔」。
そうなると、世間が一段と度の強い色眼鏡で見てしまうだろうと私は思ったのです。
ですがこのドラマでの賛否の声が、間違いなく「役者・道枝」の成長へのアクセルを踏むことになります。
当時15歳。この年頃は勉強にしてもスポーツにしても吸収力がハンパない。道枝くんは世間の声を「ネットでなんか好き勝手言ってるよ」ではなく、叱咤激励として受け入れたのではないでしょうか?
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「俺のスカート、どこ行った?」で放った存在感と成長ぶり
2年後の2019年放送のドラマ「俺のスカート、どこ行った?」で生意気な今どきの高校生・東条を演じます。
このドラマも女装家が教師を務めるという一見コメディに見えてダイバーシティ(多様性)を描いた社会派ドラマ。「母になる」の時の不安がよぎりましたが、その不安は一瞬にして消え去りました。別人のような道枝くんがそこにいたのです。
連ドラ2作目にして、ただ演じるのではなく、東条という人間をしっかりインストールしていたのです。演者としての成長のスピードにただただ驚かされました。前作「母になる」で学んだことを取り入れてきたのです。
このドラマで特に印象的だったのは4話。かつていじめていたクラスメイトに「本当に悪いと思ってる。許してもらえないのは仕方ないけど、ごめん」と謝罪するシーン。
この謝罪をするまで、東条はクラスで1、2を争うヤンチャな生徒でした。古田新太さん演じる女装家の教師・原田のぶおと向き合うことで改心していくのですが、心境の変化をすごくロジカルに表現していたのです。
ファンを喜ばすシーンなどもしっかり取り入れていてすごくバランスの良い良作だったと私は感じました。
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演技の緩急の「緩」を披露した「461個のおべんとう」
映画では「461個のおべんとう」に出演。シングルファザーであるお父さん(井ノ原快彦)が息子の高校時代にとにかくべんとうを作るという、「母になる」「俺のスカート、どこ行った?」のような社会派ドラマとは対照的な内容。
本来、ストーリーにアンジュレーション(波)がないと非常に演技が難しいのですが、道枝くんにはキャラクターがピタッとハマっていました。
461個目、すなわち高校生活最後のおべんとうが物語のゴール。「100日後に死ぬワニ」に近い現象があって「最後ってどういう演出でくるんだろ?」とハードルが上がってしまっていたはずなのに、最後の461個目のお弁当食べる時も力まず、限りなくナチュラル。普段通りに食べ、自然に涙を流すという誰もが納得する演技を披露しました。
この映画では、道枝くんの緩急の「緩」のスキルの高さを見せてもらえました。
木村拓哉と共演した「BG~身辺警護人~」、長瀬智也と共演した「俺の家の話」
先輩である木村拓哉さんとの「BG~身辺警護人~」での共演も非常に大きかったのではないかと思います。
出番こそ多くありませんでしたが、同じ事務所のトップと一緒の現場に入ることで、演技やカメラの回る前の立ち振る舞いなどを勉強できたはず。それを側で見れた道枝くんは、超ウルトラハイパーミラクルラッキーボーイなわけです。
実際に「BG~身辺警護人~」を終えたあとの道枝くんは、何か堂々としたものを私は感じました。
そんな道枝くんに舞い込んできたのは長瀬智也さんの芸能界引退作「俺の家の話」。脚本は宮藤官九郎さん。これまたトップアクター、そしてトップ脚本家の作品に参加することができたのです。
現場の空気を吸うだけで成長できるんじゃないのか?と思うほど最高の現場だったはず。実際にドラマの完成度は期待以上でギャラクシー賞も受賞しました。
デビュー作「母になる」で酷評を受けたことが間違いなく良薬になったと私は考えます。素直で実直な道枝くんは、それをきっかけにアップデートを重ね、今があるのではないでしょうか?
ジャニーズでは難しいと言われたBL作品で熱演
ジャニーズタレントでBL作品は難しいと言われていましたが、そんな批判も木っ端微塵に消してしまうほどの熱演を見せたのが「消えた初恋」。回を増すごとに井田(目黒蓮)に惹かれていく感じもすごく上手。
特に印象的だったのは6話の体育館でのシーン。井田が他校のバレー部マネージャーに取られないかと心配で偵察する場面。心配でどうにかなりそうな男の子の心理を、まるでラブコメ漫画のような表現をしていたのです。
世間では2.5次元なんて言いますが、この時の道枝くんは間違いなく2.2次元でした。ほぼ漫画でした。数多く出回ってるBLドラマの中でも天性のものだけに頼らず、アイデアや努力で上書きしたことでさらに良質なラブコメに昇華させたのです。
そのため、ドラマの中のセリフも流れず、グッと視聴者の心に落ちる。
6話の名言「俺もいつかお前から本気で付き合おうって言われたらいいなって思ってる」は放送が終了して半年以上経ちますが、今だに心に残ってるくらいです。
30年以上ジャニーズアクトを研究している私が言えること、道枝くんは10年に1人の逸材です。この春からスタートする「金田一少年の事件簿」5代目金田一一役も楽しみで仕方ありません。
グループも絶好調、今後ますます注目される道枝くん。10代でたくさん手にした経験を武器に今後も飛躍してください。
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ニブンノゴ! 宮地ケンスケ(みやじけんすけ)
芸人・構成作家。1976年生まれ、高知県出身。趣味はドラマ鑑賞、ジャニーズのチェック、体を鍛えること。
写真:岡村大輔
※ページの情報は2022年3月25日時点のものです。最新の配信状況は各サイトにてご確認ください。