クリエイターとしても孤高。独自の存在感を放つ役者オダギリジョーの5つの魅力【映画ライターが分析】
#SYO映画ライターのSYOと申します。日本のドラマ・映画界に欠かせない俳優さんの「5つの魅力」を分析する本企画、今月はドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』も記憶に新しい、オダギリジョーさんの魅力を書かせていただきます。
ゼロ年代の日本映画を牽引していた俳優のひとりであるオダギリジョーさんは、自分にとってはヒーロー的存在。先日、幸運にもインタビューさせていただいたのですが、前日は緊張と興奮で眠れませんでした……。職業柄様々な方にお会いしますが、普段はそんなことは全くないので、やはり特別な存在なのだと痛感しました。
今回は、そんなオダギリジョーさんの魅力を、5つのパートに分けて考えていきます。
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目次
1 名監督とのコラボレーションが続々! 卓越した作品選び
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自分が人生において最も影響を受けた俳優さんは、実はオダギリジョーさんです。ファッション(服装や髪型)や話し方など、挙げればきりがありません。そして……ここが最も大きいのですが、日本映画にハマったのは彼のおかげなのです。
初主演映画『アカルイミライ』で黒沢清監督と組み、『夢の中へ』『HAZARD ハザード』で園子温監督、『メゾン・ド・ヒミコ』で犬童一心監督×脚本・渡辺あやさん、『スクラップ・ヘブン』で李相日監督、『ゆれる』で西川美和監督、『サッド ヴァケイション』で青山真治監督……。オダギリさんの出演作品を追いかけていくだけで、様々な監督たちを知ることができました。中高生のときに「めっちゃカッコいい!」と憧れて作品を観るようにした結果、日本映画の魅力を知り、今では映画ライターになったわけですから、非常に感慨深いものがあります。
これは何も僕に限った話ではなく、同世代の役者さんとインタビューなどで話をしていても、オダギリジョーさんの名前が出てくることが多い。業界内にも、彼に影響を受けてものづくりを志した人間は数多くいるのです。
2 アート・ファッション・カルチャーの申し子
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先ほどもちらりと述べたとおり、オダギリジョーさんは自分にとってファッション・アイコンでもありました。『アカルイミライ』のアッシュ風のヘアカラー、『スクラップ・ヘブン』のツーブロック×アシンメトリー、『HAZARD ハザード』のソフトモヒカン、『ゆれる』のマッシュ×赤メッシュ……。どれもこれも最高にカッコよく、なんとかこうなれないかと考えあぐねたものです。
オダギリジョーさんは永瀬正敏さんや浅野忠信さんなど、カッコいい先輩たちの影響を受けていると話していましたが、彼から下の世代はオダギリジョーさんの「何をしても様になり、アーティスティックである」スタイルの虜になってきた人が大勢います。たとえば日本アカデミー賞の授賞式に登場するときも、オダギリジョーさんは必ず何かを仕掛けてくれた。
当時はインターネットもここまで生活に結びついていないですし、最新のオシャレはテレビから学んでいたので、僕はオダギリジョーさんの遊び心たっぷりな“魅せ方”に、毎回「すげぇなぁ……」と思っていたものです(もちろん、いまも! 服装など、めちゃくちゃ影響を受けています)。
3 気負いゼロ、だが油断は禁物!な手練れ演技
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演技においても、オダギリジョーさんのスタイルは独特。その大きなものが、「超・自然体」なするりと物語に溶け込む演技です。細かい部分を言うと、表情の作り方や発声の仕方において、彼の演技は「作って待ち構える」ことがほとんどない。
最近だと、ドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』が好例です。オダギリジョーさんの演技は、頭に少し間(ま)があり、「うーん」と考えてからその人物が言葉を発したり返したり、表情が生まれたりする。その過程をちゃんと見せてくれるから、彼の演技は常にナチュラルで観やすい。それを逆手にとって、『大豆田とわ子と三人の元夫』ではまるで別人かと思うほどに“キャラ変”する怖さを描いていましたね。優しいラジオ体操仲間が、仕事上では罵倒してくる……といった具合に。これも、「オダギリジョーさんの自然体の演技」が確立されているからこそ、あえて真逆をつくことでギャップを生み出すことが可能になったわけです。
映画『ゆれる』でも、都会的に振舞おうとしていた主人公が、次第に感情をさらけ出していく姿を見事に演じていましたし、映画『スクラップ・ヘブン』はエキセントリックで何を考えているかつかめないキャラクターが時折見せる壮絶な孤独が、効いていました。石井裕也監督とタッグを組んだ映画『舟を編む』や公開されたばかりの映画『アジアの天使』では、飄々とした人物を柔らかく演じながら、真理を突いた「人生の格言」を放ったりもする。この辺りの塩梅は、オダギリジョーさんにしか出せないように思います。
4 デビュー当時からずっと変わらず、ブレない“継続力”
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様々な面でカッコいい、オダギリジョーさん。そして、その姿勢が2021年のいまになっても変わっていないのが凄いですよね。映画やファッション、カルチャーを愛し、ずっとものづくりを続けている。そして、憧れの存在であり続けている。
『アカルイミライ』は2003年の映画ですが、20年弱の年月を経ても、いまだにスタイリッシュであり、カッコよさに満ちています。『仮面ライダークウガ』や『新選組!』も経験しており、様々な表情を見せてきたオダギリジョーさんですが、ファッション然り、存在感がブレない。
今年最初のヒット映画といっていい『花束みたいな恋をした』では、有村架純さん扮するヒロインが務める会社の社長を演じていますが、気を抜くと絡め取られそうな大人の色気に満ちていますし、主人公の忘れられない元恋人に扮した『南瓜とマヨネーズ』では、割と自分勝手なのに許される女たらしを絶妙に演じています(仲野太賀さんとの対比も良い!)。かと思えば、ダメ夫をコミカルに演じた映画『湯を沸かすほどの熱い愛』では、カッコ悪いのがカッコ良いという高等テクニックを見せつけています。
5 「演じる」を越えた、クリエイターとしての才覚
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オダギリジョーさんは元々映画監督を目指していたというエピソードからわかるように、いち役者としての立ち位置にとどまらない活躍を続けています。役者として海外作品にも多く出演されているほか、ドラマ『時効警察』シリーズではエピソード監督・脚本も担当。2019年には、初長編映画『ある船頭の話』を制作。音楽活動も行っており(大学生のときにアルバムを入手して聴いていましたが、前衛的でトガッていました)、表現者として、多方面に活躍し続けています。
そして……今年の秋には、脚本・演出を務めたドラマ『オリバーな犬、 (Gosh!!) このヤロウ』が放送予定(NHK総合・9月17日、24日、10月1日の全3回に分けて放送)。主演を務める池松壮亮さんに加え、永瀬正敏さんに麻生久美子さん、本田翼さん、佐藤浩市さん等々……。オダギリジョーさんだからこそ集まった豪華すぎる面々と、彼のオリジナル脚本とのコラボレーションに、期待が膨らみます。
まとめ
演技が上手い俳優さんや、オーラにあふれた方はいますが、オダギリジョーさんのすごさは「定義を作ってしまった」ところにあるように感じています。いち役者とか、いち作り手としての影響力を凌駕し、オダギリジョーさんそのものが、替えのきかない存在になっているということ。「オダギリジョー」という言葉が持つイメージは、他の誰も塗り替えることができません。きっとこの先も、多くの若人を魅了していくことでしょう。
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※ページの情報は2021年7月9日時点のものです。最新の配信状況は各サイトにてご確認ください。