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絶対的な存在感を放つ男も惚れる役者 長瀬智也。歴代ドラマを振り返る【よしもと芸人が分析】

#長瀬智也
2021年5月13日 by

こんにちは!芸人であり、放送作家であり、脚本家であり、ライターでもある宮地ケンスケ(ニブンノゴ!)です。

TVマガでジャニーズの俳優を語る連載「Jアクター研究部」の第3回目。今回、深堀りしたい人物は3月いっぱいでジャニーズを退所した長瀬智也さん。

最後のドラマ「俺の家の話」は、「こんなに有終の美という言葉がぴったりなことってある?」というほど素晴らしい内容でした。

野生的で、本能のまま動く人間を演じさせたらジャニーズでは、長瀬さんの右に出る人はいないでしょう。豪快なんだけど、芝居はとても繊細でロジカル。「豪快」と「理論」この対照的なものを芝居に共有することが長瀬さんにはできたんです。特に少年マンガの主役のような男らしさに同性からの支持も高かった。

そりゃ、みんなから引退を惜しまれますよ!それくらいすごい役者なのですから。

矢沢永吉!最初で最期の主演ドラマ「アリよさらば」に出演。存在感を放つ

私が、初めて見た長瀬さんのドラマは1994年放送の「アリよさらば」でした。このドラマ、ミュージシャン・矢沢永吉さんの最初で最後の主演ドラマ。DVD化などはなく、映像がほとんど残ってない伝説のドラマと言われています。

矢沢永吉さんが先生役。生徒役もとにかくスゴい人ばかり。井ノ原快彦さん、小島聖さん、小沢真珠さん、岡田義徳さんなど……あとは、Wikipediaを見てください(笑)。30年くらい前のドラマですが出演者のほとんどが俳優として今も現役なんです。

長瀬さん演じる小杉護は、せっせと貯めたお金で彼女にプレゼントを買うも、彼女がプレゼントを質屋で金に換えてしまうといったエピソードを持つ冴えない生徒。初めて見たときに感じたのは「え?こんな顔が整った美少年が貢がされるの?」ということ。とにかく美少年でした。この時代にこんな美少年見たことないっていうくらいのレベル。もう、発しているオーラが神々しかったです。

アイドルとは思えない演技を見せつけた「白線流し」

そこから数年後の1996年ドラマ「白線流し」で長瀬さんの魅力が大爆発します。「白線流し」は卒業を控えた高校生とその高校の定時制生徒の交流を描くストーリー。

長瀬さんが演じるのは定時制生徒・大河内渉。母は家を飛び出し、父は病で亡くなり中学を卒業して働きながら夜に定時制に通う、影のある若者を熱演。この時代の中では極めて地味なドラマでしたが、長瀬さんの求心力が強烈でした。

大河内渉は、誰も頼らず、人に心を許さないまま生きてきた男。特に、自分とは世界が違う普通科の生徒に話しかけるときの渉の言葉に警戒心が見え隠れしていたのが伝わってきました。長瀬さんは、脚本に書かれたセリフを発するだけでなく、自分の中にしっかり大河内渉をインストールし、言葉に命を宿していたんです。

このシーンのほかにも、アイドルとは思えない“生きたセリフ”を放っていたのが印象的です。

私が「白線流し」で心に残っているのは、机の星座のシーン。酒井美紀さん演じる園子の机に描かれていた謎の点、これは夜間授業の時に渉がつけたものですが、園子がこの点を繋いでいくと星座になることに気づくシーンです!これを真似して机に彫刻刀で星を彫って先生に怒られてた奴、少なく見積もっても5人いました(笑)

長瀬さんの役者としてのスイッチは「白線流し」で入ったのではないかと僕は思います。

「白線流し」の勢いを持ったまま2000年を迎え……あの大ヒットドラマ「池袋ウエストゲートパーク」で主演を果たします。このドラマがいかにすごいか、文字数制限がなければ8万文字くらいで書きたいくらい。本当にすごかった。

長瀬智也にしか演じられない真島誠役「池袋ウエストゲートパーク」

「池袋ウエストゲートパーク」(以下 IWGPと表記)は、日本のドラマを変えた傑作といっても過言ではありません。今まで見たことないセンセーショナルなもので、このドラマを観たときの感動や興奮を超えるものにはまだ出会ってないと断言できます。

「めんどくせぇ」の口癖で、池袋で起きる事件を“マコト流”に解決していく真島誠に多くの視聴者が鼻息荒くして熱狂した。全身から溢れるワイルド感になんとも言えない色気。男臭さと清潔感が共存していた。この真島誠の魅力は長瀬さんしか出せなかったと思います。

全話が神回ですが、やはり最終回のBエンジェルズとGボーイズの全面抗争。そこに誠が現れ「自分の両手が地面についたら喧嘩再開してもいいが、それまで黙って見てろ!」と言うと、Gボーイズリーダーのタカシが殴りかかるシーン。

このシーンが最高すぎる。長州力さんの言葉を借りると「飛ぶよ」状態です。ここで長瀬さんは“絶対手をつかない信念”を声に出さず、体の隅々まで使って演じきったのです。

IWGPは間違いなく長瀬さんにとってターニングポイントになったドラマ。

IWGPで宮藤官九郎さんと出会い、その後「タイガー&ドラゴン」「うぬぼれ刑事」に出演。映画では「真夜中の弥次さん喜多さん」「TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ」でタッグを組みます。

宮藤さんのダイナミックでどこか漫画のような世界観を誰よりもモノにしてしまうのが長瀬智也さんという人だったのです。

長瀬智也の芝居には、迷いやブレが一切ない

そんな長瀬さんが最後の作品に選んだのが宮藤さん脚本の「俺の家の話」。最後を飾る作品は恋愛ものではなく派手なアクションものでもなく「介護」をテーマにした家族ドラマ。

この観山寿一がどことなく、今までの長瀬さんが演じてきた役(IWGPの真島誠、タイガー&ドラゴンの虎児、うぬぼれ刑事の小暮)のフュージョンに感じてならなかったです。

長瀬さんのキャラクターそのままに自然体で演じ、気がつけば最終回だった印象。結末も芸能界との決別を意味しているようで淋しくもありました。

超人的なパワーを持ちながら、でも誰よりも人間味はあって、誰にもマネできないスキルがあり、そしてまだまだやれる体力がありながらコート(芸能界)を去っていく。長瀬さんはジャニーズが生んだマイケル・ジョーダンのような役者だったと思います。

私は長瀬さんの演技を見せてもらって学ぶことがありました。それは「自分を持つこと」。

人って他人の意見や流行に流されがちだけど、長瀬さんは自分がこうと決めたことをとことん突き詰め、絶対流されない信念を持っていたと思います。デビューから引退するまで、芝居に迷いやブレが一切なかった。

だから、今回のジャニーズ退所も長瀬さんらしい決断に思えて仕方ないのです。

長瀬さん、本当にありがとうございました。少し休まれて、ふとした時に「俺の家の話」の中で長州力さんが言っていた言葉を思い出してください。

『引退してもまた戻ってくればいい』

ニブンノゴ! 宮地ケンスケ(みやじけんすけ)

芸人・構成作家。1976年生まれ、高知県出身。趣味はドラマ鑑賞、ジャニーズのチェック、体を鍛えること。

写真:岡村大輔

※ページの情報は2021年5月13日時点のものです。最新の配信状況は各サイトにてご確認ください。


宮地ケンスケ(ニブンノゴ!)

芸人・構成作家。1976年生まれ、高知県出身。 趣味はドラマ鑑賞、ジャニーズのチェック、体を鍛えること。

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